428 〜封鎖された渋谷で〜:映画とゲームのマリアージュ
先日配信されたニンテンドーダイレクトいかがだったでしょうか。新作から名作のリメイクまで盛り沢山だったと思います。その中で、自分が一番気になったのはこのタイトルです。
「春ゆきてレトロチカ」です。
いわゆる実写ADVと呼ばれるジャンルで、俳優さんが演技する写真がCGとして使われるアドベンチャーゲームです。ニッチなジャンルながら、名作が多く根強いファンが多く、自分も好きです。
そんな実写ADVの新作、春ゆきてレトロチカのディレクターさんが過去に参加したタイトルが「428 〜封鎖された渋谷で〜」です。声優でありゲーマーの中村悠一さんが度々推してるゲームでもあります。自分は数年前にクリアしたんですが、ニンダイで春ゆきてレトロチカを見てこのタイトルを思い出し、もう一度遊びたくなりました。
というわけで、今回は「428 〜封鎖された渋谷で〜(以下428)」の感想と実写ADVのよさについてまとめてみたいと思います。
ストーリー
428は実写”ADVゲーム”なので、重要なのはストーリーです。とにもかくにもストーリーがダメだと全部ダメになってしまいます。
そんな重要なストーリーですが、428はこれがホントにおもしろいです。というかすごい。5人の主人公それぞれにストーリーがあるんですが、これが互いに影響し合うことで大きなストーリーになっていくんですよね。
亜智編ならボーイミーツガールからの逃避行の青春モノ、加納編ならバディ刑事モノ、大沢編なら殺人ウイルスをめぐるサスペンス、御法川編ならライターの取材を通して渋谷の謎の迫る探偵モノ、タマ編はコメディとそれぞれテイストが違います。このテイストの異なる5つのストーリーをザッピングシステムで丁寧に編み込み、見事に1つのストーリーに仕上げてるのがすごいです。
クライマックスでのこれまでの登場人物が総出で、それぞれの信念に従って騒動を解決していくとこなんかはすごいシビれました。正直、実写でなくともストーリーがおもしろいADVゲームとして評価されてたと思います。
ほかにも、バッドエンドがかなり多いのもおもしろいです。その内容も主人公がストーリーから脱落してしまうものから、ちょっと?いや、かなり変なものまで取り揃えているので、ついついバッドエンドになるだろう選択肢も選んでしまいます。印象に残ってるバッドエンドは、加納が警察官を辞めて田舎で農業を始めるやつですね。そうはならんやろ→なっとるやろがい、となるバッドエンドが多かった気がします。フフッってなりました。
ただ、ボーナスシナリオ2のカナン編はいらなかったんじゃないかなと思います。悪くはないんですが、ちょっと蛇足感が強かったです。なくてもいいし、あってもそんなに嬉しくない、ちょっと微妙な感じのストーリーでした。
柳下純一でわかる実写の解像度の高さ
428ですごいのはストーリーだけではありません。それは、実写を活用したキャラクターの解像度の高さです。解像度の高さは主にタマ編で登場する柳下純一を見てもらうとわかりやすいです。
見てください、この胡散臭さ。柳下はしょうもない理由で作った借金を返すために、エセ健康ドリンクやパワーストーンを売るキャラクターです。それでは、もう一度上のスクショを見てください。
ね?まさにそうでしょう?
これが実写の表現度、解像度の高さです。イラストでこの胡散臭さは中々出せないと思います。この柳下は428で一番好きなキャラクターで、胡散臭さくてどうしようもなく情けない、でもどこか憎めないキャラクターです。演じるなすびさんの怪演?も相まって、とてつもないパンチ力があります。
柳下は胡散臭いだけじゃないのがすごいいいです。騙し騙され、人生の底を味わい続けてきたからこそのポジティブさを持ち合わせてます。ほかのキャラクターもそうなんですが、5人の主人公以外の脇役もキャラクターがすごい立っていて奥行きがあります。これも実写の解像度の高さがあればこそだと思います。
ストーリーと実写を支える細やかな調整
クオリティの高いストーリーと実写の表現が魅力的な428ですが、その2つの要素を支えるのが各所に光る細やかな調整です。
特に、BGMの入り方や消え方、テキストのスピードなんかをこだわってる気がします。ADVゲームなのに演劇や映画のような”間”がしっかりと表現されていて、没入感が高いです。ここまで細やかに調整してるゲームは中々ありません。
プレイヤーに飽きさせないような工夫も随所に盛り込まれてます。ストーリーも1時間ごとに区切ることでプレイヤーが迷子にならないよう工夫してます。1時間ごとに流れるムービーもカッコいいですしね。あと、テキスト中に挟まれてるTipsもおもしろいものが多いのもいいですね。ストーリーのヒントになるものもあり、ついつい全部確認したくなります。
ただ、ちょっと微妙だったのはスキップ機能がないとこですね。何度も同じシーンを見ることが多いのでちょっと不便です。映画的な”間”を楽しんでほしいという意図はわかりますが、ここはゲームとしての遊びやすさを優先して欲しかったです。
実写ADVは映画とゲームのマリアージュ
428は映画の表現や解像度の高さと、ゲームのインタラクティブさを兼ね備えたタイトルだと思います。まさに、映画とゲームのマリアージュ。式場は渋谷です。この2つをこのクオリティで合わせたのはある種の発明だと思います。遊んでない方はプレイしてみてはいかがでしょうか。
あと、春ゆきてレトロチカは5月12日にされる予定です。ぜひこちらも気にしてみてはいかがでしょうか。では、また。
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