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「自分しかできないことをしないとサバイブできない」

東京都現代美術館の石岡瑛子展にいってきた。

実は私、石岡さんのことをほとんど知らなかったのだけど、作品は知っているものが多かった。パルコのCM、東急百貨店のロゴ、角川文庫のデザイン、ハリウッド映画の衣装などどこかでみたことがあるものばかり。そして作品ジャンルが幅広く、「これひとりでやったの?」と思うくらい圧巻の展示だった。

展示は3つにわかれていて、その部屋を追うごとに時代の変遷も見られるのが面白い。

1つ目の部屋、資生堂やパルコの広告など日本国内の仕事の部屋は、数十年前とは思えないほどかっこいい広告やデザインばかりだった。私は世代的には少し後だけど、本当にパルコや東急で日本の文化は育てられたんだな、、と感じた。「昨日つくったみたいに新鮮にみえる」という本人のインタビューの言葉が流れていたが、すべての作品がそのとおりだった。パルコの広告なんて、今のパルコよりもかっこいいんじゃないかと思ってしまった。

石岡瑛子さん語録をつくりたいほどの哲学があった

この部屋ではインタビュー音声が流れていた。断片的に耳に入る言葉があまりに印象的で、最終的にはこのインタビュー音声を全部きくためにこの展示室に戻ってきたほどだった。メモした中で心にのこったことをまとめると、この石岡瑛子さんという人の生き方がすごく魅力的でかっこいい。いくつかメモった言葉をなるべくそのままシェアする。

「surveyしない。大衆がなにでよろこぶかからつくらない。私が何を作りたいか。自分の中に大衆が喜ぶエッセンスを持っていると思う。」

「年取ると能力は上がっていく。年寄りが新しいものできないは嘘。」

「等身大の仕事ではなくて社会を震撼させるようなスケールの仕事をつくっていく。」

「僕にはこれしかない。これがないと生きていけないというほどの猪突猛進さ。」

「自分を植物のように育てる。いろんなものが気になって自分の仕事が見えない状況では何も掴めない。」

「危険を犯して挑戦すべき。」

「オリジナリティ。自分しかできないものをやらないとサバイブできない。人の真似は絶対したくない。流行を追わない。」

「タイムレスなデザイン。昔作ったものを見て昨日作ったみたいに新鮮に思う。」

「まわりの人を巻き込む。フレキシブルに。そうでないと、大きなシステムの中で最後にウィナーにはなれない。」

「グラフィックデザイナー、アーキテクトデザイナー、インダストリアルデザイナー。そういうボーダーをなくしたほうがいい。私は頭の中にそういうのがない。自分の職業が何なのかいつも迷う。」

「私は何の契約もないままニューヨークにきた(日本であるていど成功したあとに)。そういう地点に立たないと自分が何をやりたいか見えないと思った。」

この言葉にしびれた人は、現代美術館の展示にいってほしい。

生活はデザインでつくられているのではないか

石岡さんの作品を見ながら、デザインはアートとは違う意味で力があるのだと感じた。アートはコレクターや美術館へ行く美術好きしか観ないかもしれない。でもデザインはいつのまにか商品として使われる中で多くの人々の目に入っている。アートは美術館や額縁の中で、あくまでもアートとして存在するものだけど、デザインはいつのまにかいろいろな人の生活の中にとけこんで、気づかないうちに影響を与えている。そこが怖いし偉大なところだ。アートも好きだし素晴らしいけれど、デザインのそういう面が私は好きで、たぶん私が作りたい本もそういう生活の中にいつのまにかとけこむようなものなんじゃないかと思った。

人とかかわって大きな仕事ができる

インタビューをきいたり、2つ目や3つ目の部屋での衣装の作品をみていると、デザイナーとしての石岡さんの仕事のやり方がいかに見事かわかる。自分の才能のままに自分のやりたいことを貫く孤高の天才のような芸術家とは全く違う仕事のやり方だと思った。デザインの仕事は、映画の衣装も、オリンピックの衣装も、アーティストのCDジャケットも、クライアントがいる。クライアントを納得させながら、関係者の力を借りて、自分の実現したい世界を作っていく石岡さんのエネルギーを感じた。交渉力、人を巻き込む情熱、摩擦を恐れない心があったんじゃないかと思う。
会場には色校正の赤字もあったが、印刷所へのメッセージである赤字もすごく丁寧で、そこに対話があったのだと感じた。きっと働く人へのリスペクトがあって、そのコミュニケーションをはしょらない人だったのだろう。だからこそ大きな仕事ができたのではないか。

すべてのフォーマットが、最初は新しかった

角川文庫のポスターの説明に書かれている言葉がとても印象的だった。書斎で読む重い本ではなく、文庫本は「野外で移動しながら読み、読み終わったら捨てる」という設定でつくられたそうだ。今では当たり前のようにある文庫本というフォーマットも、最初はそういう狙いがあったということを初めてしった。この時代の角川春樹さんもきっと時代を作った人のひとりなのだろう。そしてコンテンツといえど、物体として存在する本は、いかにその形で読み手に影響を与えているかを感じた。

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誰もが個性を持っているのかもしれない

この展示を見た後、私はふと、自分には自分が思っているよりも個性があるのかもしれないと思った。自分のことを個性的というよりは平凡だから個性的な人をプロデュースする仕事がしたいと思って編集者の仕事をやってきたのでこんなことを思うのは初めてだった。誰もが個性を持っていると思っていても、それが自分にも当てはまると思うほどその言葉を実感できていなかったけれど、なぜか急にそんなことを思った。なんとなくそう思ったことを、自分の中でどういうことなのか輪郭を探していく2021年になるかもしれないと思った。

石岡瑛子さんという存在を忘れたくなくて図録を買おうと思ったらまさかのまだ制作中で1月発売予定とのこと。予約申込をして帰ったので届くのを待つ楽しみが増えた。

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