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地域経済の自立と廃プラ循環ビジネス

以前、パラオ共和国への訪問の機会を頂いた時に一番衝撃的だったのが、「外から持ち込まれたプラスチックを処理する機能が弱く、溢れた廃棄物が廃プラスチック山を形成している」ことだ。

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2019年頃より気候危機(気候非常事態)が自分自身にも響くような広く一般に知られる言葉となった。脱炭素の進め方は様々あるが、今回はその中のプラスチックの処理についてフォーカスし、外部からの負の影響の流入を止めて地域内の資源循環を積極的に行うことで実現する循環経済への関心の高まりについてまとめる。


パラオの衝撃

防衛上重要な場所であるが故に、米国を中心とした環太平洋の諸外国から友好関係を築くための様々なオファー(公共インフラの技術及び工事費用、等)が来るパラオ。電気、上下水道、通信にいたるまで、設備に日本かオーストラリア、台湾、韓国、米国の企業か政府のマークが付いている。その工事現場で働いているのはパラオ人ではなく、フィリピン、中国、オーストラリア?からの出稼ぎ労働者で、日用品店には米国・日本・韓国・台湾の現地パッケージそのままの食料品が溢れていた。住民は自動車で通勤をするため毎朝通勤ラッシュが起きるのだが、その自動車は全て韓国製、日本製、米国製だ。

官民ともにリサイクル事業者は存在する。ただ、食料品のプラスチックパッケージ、建設資材の梱包材のプラスチック、廃自動車関連のプラスチックの処理を担う設備は不足している。

また、海流の関係で、島の収益源のジェリーフィッシュレイクに海洋プラスチックがたどり着いて困っていると現地の方に伺った。


パラオと日本の地方との共通点

米国はパラオを軍事的な重要拠点と位置づけ、パラオへの財政支援と引き換えにパラオの国防の権限を握っている。2010年9月に契約更新をし、少なくとも2025年までは米国の財政支援(=米国がパラオの国防を握る)が続くことになる。

パラオ人の大統領が財政面での自立を目指して財政赤字の削減に取り組むも、中国人観光客の激減に加え、2020年は感染症対策のためほぼ渡航禁止状態となっていたこともあり、主要産業である観光業での自立も芳しくない。

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日本の地方都市の一般財源に締める自主財源の割合は45%程度だが、人口50千人を超える自治体でも自主財源は全体の30%を切るところもある。

パラオにはカレッジまであるものの、若者の多くは米国などの総合大学に進学すると聞いた。軍事要素のある財政支援と地方交付税とは位置づけが全く異なるが、唯一の産業である観光業(または農業、水産業)に頼るも消費地の需要変動に振り回され、有望な若者が海外や東京に流出し、地域の経済活動の自立に悩む姿は日本の地方のコミュニティと類似点があるように映った。対外貿易(消費地とのやりとり)の結果発生した廃棄物等の負の影響の域内処理がコスト面及び技術面で難しいことも、類似点として加えておきたい。


カーボンニュートラル時代は静脈にフォーカス

長らく、製品を製造すること自体が本流であり、フローも「サプライ」チェーンという名の一方通行のものとして認識されてきた。一昔前に流行った3R(Reduse, Reuse, Recycle)は、排出された廃棄物を受け止める側の(=本流ではない、受け身の、消極的な)取り組みとして認知されていたのではないかと思う。

直近のカーボンニュートラルや脱炭素というキーワードはその概念に、製品・サービスの製造についてのみならず、製品・サービスが消費された後または消費されていく過程での処理についても含んでいる。プラごみ削減法案もこれまでから一歩進んだメッセージを持っている。これまで傍流として扱われていた廃棄物処理が、主体性を持ち、廃棄物処理というビジネスとして認識されている。

静脈系サプライチェーンは、①廃プラが流れ着く場所を発生させない動脈側の努力と②流れ着いた廃プラを付加価値をもたせながら低コストで循環させる消費者側の努力によって実現される。

少しでも共有できる思いがあったのであれば嬉しいです。 電気を届けるしごとに思いをはせる「白金プラチナ電設」もご贔屓に。