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植物の生存戦略 ~ヤナギ~


川べりによく生え、涼しげな木陰を提供してくれるヤナギの木。今回は、この木の増え方について面白い発見をしたので記事にしてみました。多分、よく調べれば大学の先生とかが言及していると思うんですが、ざっとネット検索してみて似たような記事は見当たらなかったので参考サイトはありません。もしご存知の方はコメント欄などでご教授いただければと思います。

さて、ヤナギと呼ばれる樹種は、大体が綿毛つきの種で繁殖します。また、多くの場合は挿し木も容易で、切り株や枝からの萌芽もしやすい、大変繁殖力が強い植物です。これらの増え方の内、「折れ枝からの繁殖についてはかなり意図的である」と考えられる観察をしました。

結論から言えば、
ヤナギの枝は「柳に雪折れ無し」「柳に風」のように柔軟さの代名詞でよくしなる
一方で、部分的に極めて弱い箇所があり、そこに力が加わると綺麗に折れる
折れた場所は傷口も綺麗で、長めに折れるため萌芽・発根できる部位をたくさん持っている
柳は折れる場所をコントロールして新たな繁殖地を広げる手段にしている

と考えています。

観察の場

観察したのは川べりの河川敷に生えていたヤナギ(多分タチヤナギ)です。

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観察したのは2021年5月3日、天気のよい日で、この木の下にはたくさんの折れ枝が落ちていました。

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前日の5月2日は大気が不安定で、各地でダウンバーストや竜巻に近い強風が吹き荒れていました。しかし、それにしてもこの折れ枝の数は異常に思えました。そもそも柳は折れにくいのが常識です。近くの川を見ると、たくさんの折れ枝が浮いており、一部は既に萌芽したか、枝の一部が上方向に伸びなおしているのがわかりました。

タチヤナギ枝(20210503_165031.jpg)

枝が上に向かって伸びている。このまま発根する気かも。

タチヤナギ20210503_165515.jpg


折れる部位と折れにくい部位がある


試しに既に落ちている、短めの柳の枝を曲げてみると、よく曲がり、やはり折れません。ところが、長い枝全体を引っ張ってみるといきなり「ポキン!」と爪楊枝を折るように小気味よく折れる部位があります。

これは爬虫類や節足動物で見られる自切のような綺麗な折れ方でした。

断面を見ると綺麗に折れており、柳の繊維はほとんど飛び出さず、枝切りバサミで切ったかのようです。

タチヤナギ断面(20210503_165419.jpg)

これでははあ、となんとなく納得しました。基本的には柳の枝は柔軟でよく曲がり、折れません。ですが、何箇所かにある継ぎ目のような部分のうち、たまにものすごくもろい場所があります。そうすると、風などで力が加わるとそこに破壊の力が集中して他の部分を傷つけずに綺麗に折れるわけです。

タチヤナギ20210503_165243.mp4_snapshot_00.22_[2021.05.05_16.10.48]


増えるのには最適なサイズなのかも

枝の折れポイントは、のび始めてから2~3年程度と見られる若い枝に多く見られるようです。これはある程度成長していて、なおかつまだ若いので挿し木には最適です。そして、大体10以上の節(芽)を含む程度の長さで折れるため、萌芽や発根も容易である長さです。通常は、挿し木はこんなに長い枝では行いません。挿し木すると根がないため一時的に水分吸収能力が下がり、葉や枝が多いと蒸散による水分喪失が多すぎて枯れてしまうのです。よって、挿し木は通常芽や節を2~3個含むようにします。

ホームベル台木(20210223_152159.jpg)

ですが、柳は川の中で発根することを想定しているため、その場合は水分に困ることはありません。むしろ、雑草に負けないよう早く成長して日照権を確保する方が大切です。それに発根が遅れれば川の増水で流されてしまいます。そのため、柳は特に春期にかなり大きな枝を落とすことで、成長においてスタートダッシュをかけ、効率的に個体数を増やそうとしているのではないかと思われます。

他の柳も同じ感じかも

さて、今回はタチヤナギだけ見ていますが、同様の傾向は他の種類の柳でも見られるかもしれません。とりあえず、シダレヤナギは枝先に大量の葉を展開し、水の流れや風で折れていくのを期待しているようにも見えます。

しだれ柳20210411_145516.jpg

残念ながら、シダレヤナギの枝を写真に取ったときは枝を引っ張ってみることはしませんでした。うちの畑に生えているものなので、いずれ試してみようと思います。

まとめ

というわけで、ヤナギの枝は意図的に折れやすい部分を作り、その部位によって繁殖を有利に行う工夫をしている可能性があります。今後の観察で新たなことがわかれば追記します。

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