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台湾旅行の思い出は東日本大震災だった。

 最近になって取り出したこのパールで、台湾旅行を思い出した。パールや天然石を扱う玉市があるらしい、とガイドブックで見つけ訪れたマーケット。まん丸ではなく楕円形のパールを探していたのでこの写真のパールを見つけて喜んだのも束の間、穴開けの方向がそれぞれてんでバラバラで雑なのが分かった。その辺がアジアクオリティ…。それでも何とかなるかと思い購入した。他にも夜市や衛兵交代や九份など定番の観光はしたのだが、平和な観光の記憶など、遥か彼方へ薄らいでしまっている。

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 前々から予定していた家族旅行で台湾へ飛んだのは2011年3月12日。東日本大震災の翌日だった。西日本に住む私達家族は東北で大きな地震が起きた、という程度の認識で台湾へ向かった。

 台湾人の友人に会ってレストランで食事をしていると、見知らぬ人から、箸袋の裏に漢字8文字程度を手書きしたものを渡された。正確には覚えていないが「平和日本…」のような「日本平安…」のような、そんな感じの文字だったので何かの宗教関係かモノ売りか!?と警戒すると、友人が「震災が起こったでしょ?」と。その人は日本人の私達を見て、その時の日本の状況に寄り添って祈りのメッセージをくれたのだ。疑ってしまったことを心底後悔する。私達なんかより、よっぽど被災者のことを考えてくれていた。

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 別の日にスーパーにお土産を買いに行くとレジ横に現地の新聞が売られていた。トップは東日本大震災の記事。そこに載っていた写真は手のアップを写したものだった。手首から元は土に埋もれている。その手だけで、その方が既に亡くなっていることが分かった。

 衝撃を受けた。日本の新聞では、まず目にしない写真。日本では被害を受けた現場の写真はいくらでも報道されるが、部分的であれ遺体がこんな形で報道されることはない。亡くなった方の手だけでここまで生々しく伝わるものなのかと一緒に新聞を見つけた母とは今でも話題にのぼることがある。

 台湾旅行の記憶は東日本大震災の記憶の膜で覆われて、その膜を通してしか見ることができなくなった。

magazine "foreign bijou" vol.1

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