見出し画像

初めてみる夫の悔し涙

※2020年5月の話です。

ある夜、酔っぱらって帰宅した夫が涙を流した。

夫は中小企業を支援する立場の人間。
「コロナで困っている人がたくさんいるのに助けられない。必要な情報が届かない。どうすればいいのかわからない」という。

夫は真面目で寡黙な人間だ。
夫にとって今の仕事は天職で、多くの人の役に立てていると自負している。
仕事の話や愚痴は家でほとんど聞いたことがない。
私は働きに出ていた時はよく夫に愚痴を言っていたが、夫の"女性に対する共感力"は皆無に等しい。馬の耳に念仏、暖簾に腕押し、糠に釘、状態。
挙句の果てには「いちいち気にしなければいいんじゃない?」というアドバイス。

一度夫に「仕事で嫌なことはないのか。なぜ言わないのか」と聞いたことがある。

その返答はこうだ。
「嫌な人や嫌なことはたくさんあるけど、気にするだけ自分の時間が無駄。それに家に持ち込みたくない」

正論すぎるが、私はそこまで達観できない。
家に持ち込みたくないと考えてくれているのは感謝しかないが、私が愚痴を言ってストレス発散したい人間だったので、当時はそれでモヤモヤしたこともある。
まぁ、今ではそういう人だと割り切っているので問題はない。
愚痴を言いたい時は、その時同じような環境にいる女性か自分の母親にすることにしている。

これまで私は夫が家族のこと(主に子ども)以外で泣いたところを見たことがなかった。
そんな夫が、酔っているとはいえ仕事のことで涙を流しながら私に胸の内を明かすなんて余程堪えている。
(ちなみに酔って帰宅したのは、仕事の一環の経済活動であり、自粛を無視してのヤケ酒ではない)

そういえば、夫は2011年の東日本大震災当時も同じ仕事をしていたが、一度だけ夫がふさぎ込んだことがあった。
子どもはまだいなかった時の話だ。
震災発生からしばらく経った当時、先輩社員(私も少し面識があった)が会社を辞める時に揉めて、仕事を引き継いだ夫が悪質な嫌がらせ(やっかみ?)を受けていたそうだ。
その話は素面の時にされ、かなり参っている様子だった。

ある平日の朝、夫は「仕事を休む」と言った。
私は出勤予定だったが、夫の様子があまりに普通ではなく、心配になったので、「今日は私も休んで一緒にいようか?」と聞いたら「うん、そうして欲しい」と言われたので休みをとった。(自分で調整のつく仕事だった)

その日は散歩したり、外食したり、お昼寝したり、休日のように過ごして、翌日から夫はいつものように出勤していった。
特にその話題に触れなかったが、夫の中で色々整理して折り合いがついたようだった。
夫のために休みをとってよかった。

話は現在に戻る。
こんな状況では特に、まじめで責任感の強い人間ほど打ちのめされやすいかもしれない。
夫のような人間は、こんな時でも一人で抱え込みすぎて、肉体的にも精神的にも倒れてしまうかもしれないと思うと怖い。
夫が発してくれたサインを見逃さず、私がいつも以上に気をつけて家族を守らないといけない。

我が家では、少しでも中小飲食店の支援ができれば、と毎週土曜日の夜と休前日はテイクアウトのオードブルパーティーが定番になりつつある。
私も大いに賛成なのだが、どこのお店でも揚げ物比率が高いので、平日は質素な食事にセーブしつつ、いつも以上に家族の健康も守らなければならない。

時間はたくさんあるように見えて考えるべきことは山積みだ。


今回の教訓
・テイクアウトのオードブルはかなりお得感がある。
・10年に1度のペースで災害とともに夫にもピンチが訪れがち。いまは注視すべき時。

(2020年5月2日公開)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?