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【深夜のショート・ショート】ポッキーゲーム

このショート・ショートは、
トヨタ理のXにて【毎週月~金、深夜0時】に投稿している
深夜のショート・ショート群像劇「今日、きみがいい夢を見られますように。」の一編をまとめた記事です。

見出し画像:SOZAIC.com


##1

「浪川、コレ」
「おう」

 東雲しののめのポッキーを取った途端「俺も」と教室の野郎共が群がった。
 三秒後、ポッキーは消滅。

「あー……」

 いつもこうだ。
 超超超ド級の断れないお人好し。
 そこが好きなんだけどさ。

「やるよ」

 肉まんの半分をやると東雲は「あざす」と無邪気に笑った。
 カワイイ奴め。


##2

 放課後の掃除を終わらせ東雲と帰る途中、教室からウザい馬鹿騒ぎ。

 覗くとフザケて抱き合う男二人を笑う野郎集団。

 どうせ罰ゲームだよな。
 お前らはいいよ。
 俺はそんな度胸……いや待て。

 すげぇバカな考え思いついちまった。
 けどコイツならもしかしたら。

「東雲。今からウチ、来ねぇ?」


##3

「ポッキーゲームしよう」

 目の前のポッキーにポカンとなる東雲。

「負けたらアイス奢る」

 すると東雲は目をキラキラさせてポッキーを咥えた。
 マジで?
 逆にビビりながら俺も逆側を咥える。

 密室。
 二人きり。
 初キス。俺が?!

 あっ、ダメだ。

 1ミリもかじれず、俺は部屋を飛び出した。


##4

「浪川」

 土手に逃げた俺を東雲はすぐ見つけた。
 小二からのダチだしな。
 けど今日でオワリか。

「気づいたっしょ」
「何が?」

 東雲がキョトンとなる。
 マジで、気づいてない?

「それよりダッツ」

 あぁなんだ。アイス目当てか。
 ホッとしたけど何かガックリ。

「バリバリ君な」
「えぇ」


##5

 結局ダッツを奢った翌日。
 俺達は親友のまま今日も学校だ。

「浪川」
「何?」
「やる?」

 教室で冬ポッキーを咥えて言う東雲の頭をぶっ叩く。
 味占めやがったなクソが。

 俺らの距離は、短くて長い。

 齧って縮まらんけど贅沢は言わない。今は。

「次は負けねー」
「俺強いよ」
「うっせ」

(終)


ここまでお読み頂きありがとうございました。
また、これまでの作品は、こちらのマガジンにまとめています。


また、最新作は【毎週月~金、深夜0時】X(旧Twitter)にて連載中です。

ぜひ、あわせてお楽しみ下さい。


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