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落選文学展

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コンテストに落選した珠玉の迷作たちを「落選文学」として公開。自画自賛展といっても過言ではない。完全なる自己満足の世界。 ・・・と言いつつ、誰かに読んでもらいたいだけという寂しがり…
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2020年9月の記事一覧

田中と

田中と

 田中は同期だった。
 その年、新卒で入社した五人は、田中をはじめとして妙に馬が合った。そのため、誰が誘うでもなく、金曜の夜、仕事終わりには自然と飲みに行くようになっていた。
 話すことは他愛のないもの。社会人になっての驚きや苦労、仕事のささやかな愚痴を偉そうに語る。とは言ってもまだ学生気分が抜けきらないせいか、「お疲れ様」と言いたいだけか、とにかく飲みたかっただけなのかもしれない。

 五人のな

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