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第10話 「二瀬妹子」

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「どういう意味ですか」

 響斗は無反応で聞き返してくる。動揺は一切なく先ほどまでの明るい後輩の姿もない。ただ淡々と僕に問うている。

「さっき言ったとおりだ。響斗、お前が今回の一連の事件を起こした犯人だ」

 僕は今度こそはっきりと口にした。その答えに応えるように後輩から拍手が送られる。

「その拍手は認める、ってことでいいのか」

 最後の確認をするつもりで聞く。彼は無言のまま頷き、笑みを浮かべる。

「おめでとうございます先輩」

 そう言って歩き出し、付いてくるように促してくる。廊下を進んでいき下駄箱にまでやってくる。

「いつから僕が怪しいと思いましたか」

 立ち止まり聞いてくる響斗は答え合わせをしようとしている。

「ただの勘、と言ったらどうする」

 僕の返しに、彼は鼻で笑って答えた。そんな無駄な問答は不要なんだろう。

「決定打はお前が部長のスマホを見つけたこと。ほかにも思い返せば不自然な点はいくつもあった」

 今度の答えには納得したのか「なるほど」と小さく呟いたのが聞こえた。そのあと再び歩き始め、僕は後に続く。
 会話もなく廊下を鳴らす靴音だけが響いている。向かっている場所はわかる。この道の先にあるのは一つしか無いからだ。誰からも忘れ去られた教室、第二美術室。

「先輩は僕がなんでこんなことを起こしたのかわかりますか」

 その問いに僕は口をつぐんだ。この場所に来て知らないとは言えなかった。僕と部長、そしてもう一人。彼女がいた、のだ。

「二瀬妹子」

 僕の言葉に彼は頷き、第二美術室の扉を開ける。そこには首にロープを括られた部長の姿があった。一年前に首を吊った二瀬妹子と同じように。ただ違うのは、まだ足が椅子に乗っていることだ。

「神城くん」

 どれだけの時間をあの状態のままでいたのか。その声には力が無い。急いで外そうと駆け寄ろうとするが、それを響斗が阻む。

「そこをどけ、頼む」

 僕の願いに首を横に振り、こちらを睨みながら口を開いた。

「助けたいのなら、ボクがどうしてこんなことをしたのか当ててください」
 
 
続く

担当:志央生

次回更新は12月15日(水)予定です。
お楽しみに!

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