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トーキョー夜街散歩

気温が上がり、夜も寒くないような季節が近づくと、私と友人は夜の散歩を企てる。
これまで、荒川の川辺で花火をしたり、明け方を目指して湘南の海へ歩いていったりしたこともあったけど、今回はなんとなく、皇居の周りを歩くことになった。
行くあては、いつも思いつきだ。

夜の21時ごろに集合し、銀座で腹ごしらえ(私は深夜のおやつ)をしてから、出発する。
明るい時間にも皇居をぐるりと一周したことなどなかったため、距離感もわからぬまま、ほとんど人とすれ違うこともない道を歩く。

夜の1時を過ぎても、ごくたまに走っている人に追い越されたりして、この時間でも皇居ランナーはいるのだと知った。
1周する間に信号がなくて、ノンストップで5キロ(距離はあとで調べた)走れるというわけで、この道が走りたい人たちにとくに根強い人気のある理由がわかる。
しかし夜にはほとんど人もいないので、ちんたらと歩く散歩にもちょうどよい。

地面には、都道府県の花が彫られたタイルが埋め込まれていて、それを見ながら歩くのも面白かった。
暗くて文字がよく見えなかったりして、いちいち立ち止まる。
ボソボソと喋りながら歩いたので、けっこう時間をかけた良い散歩だ。

それでも朝がくるまではけっこう時間が余り、始発の時間まで営業しているファミレスに入って、朝を待つことにした。
寝ているおじさんもいれば、朝4時とは思えないようなごくふつうのテンションで会話をしている女性2人組もいたりして、人のいろいろな生活の一瞬を見る。

気付けばしだいに明るくなって、外はすっかりまた今日が始まっている。
1日の切れ間のない、ぬるっとした久々の感覚。
夜通し遊ぶなんて大学生みたいなことをするのはもう最後かもな、と思いながら、でも私たちはいつまでもこんなことをしていそうだな、とも考えつつ、友人と解散して朝と夜の混ざる電車に乗り込んだ。

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