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UX企画の立て方 ~ユーザ理解からユーザ体験理解へ~

こんにちは!水上優です。修士課程まで文化人類学を勉強したあと、色々あって、今は株式会社ビービットにてフェロー兼UXコンサルタントとして活動しています。

今回は、ビービットの「UX企画の立案』に関する手法を学び、「あーそういうことか!」とガッテンしたことを皆さんに紹介できればと思い記事を執筆しました~

本記事は2021年のUX Research Advent Calendar 12月22日分です


UX企画ってなに

ここにたどり着いた皆さんならご存知かもしれないですが、UXはユーザーエクスペリエンスの略称です。

この記事では、ユーザがより良い体験をできるように、プロダクトやサービスを改善すること、そのための企画を「UX企画」と呼びたいと思います。


UX企画を立てるのって難しい

UX企画を「ユーザのより良い体験のための改善」として広く捉えると、いろいろな場面で皆さんが行っていることだと思います。

UXリサーチャー・デザイナーだけでなく、売り場でのお客様の流れを考える店員さんや、顧客への価値提供を考える経営企画の関係者なども、日々UX企画を考えていると言えます。

しかし、そうした企画を立てることへの難しさを感じている人は多いのではないでしょうか?

例えば、

  • より良い体験のため改善をしたいと考えているが、企画に結びつかない

  • ユーザ理解を深めるサーベイやリサーチを実施しているが、企画立案につながらない

  • アクセス解析ログやヒートマップを見ているが、そこからの企画が立てられない

などなど…

私も「UX企画の立案って、何から始めるか、難しいな~」と思っていました。そんな時に、ビービットの方法論を知り、「ユーザ体験」という軸で現象を捉えると、企画が立てられやすくなるかもしれない!なるほどな~と思ったのでした。

今回特に「なるほどな~」と思った2つのポイントを中心に、UX企画の立て方を考えていきたいと思います!

ポイント①:ユーザ視点からの体験理解

UX企画が思い浮かばない…

UX企画が難しい!となる場合、上の図のように「属性情報からのユーザ理解」から、すぐに「UX企画の立案」を試みようとしていることが多いのではないでしょうか?属性情報というのは、年齢・性別・居住地など性質や特徴を示すデータのことです。(マーケティングリサーチ用語集「属性とは」)

たとえば、皆さんがある日「市役所の受付における体験の改善」に取り組みはじめたとします。

あなたはまず、市役所利用者の主な属性情報を調べるかもしれません。「60代」「女性」「せっかち」の来庁者が多い、などと。

属性情報や性格などの情報を集め、一足飛びにUX企画を立てようと頭を捻っても、なかなかうまく行きません。なぜでしょうか?

なぜなら、属性情報を集めただけでは「ユーザ視点からの体験理解」に至っていないためです。属性情報から、ユーザペルソナやユーザ像は明らかにできるかもしれません。しかし、その情報だけでは、現場で何が起きているのか、何を体験しているのか、などの体験を知ることは困難です。UX企画を立てるためには、「体験」を理解することが重要なのです。

市役所の事例でいうと、「ユーザ視点からの体験理解」とはこんな調子です。

あなたは今、来庁者になりきり、市役所の玄関に立ちました。

こんな風景が広がっています。

  • 目の前にはいろんな文章が貼ってある(住民課は①、番号札をお取りください…)

  • 赤や緑、数字が書いてある矢印

  • 天井からぶら下がる看板、通路に立ちふさがる立て看板


そこまで想定できると、いろんなことが見えてきます

  • まずわたしはどうすればいいんだろう??

  • 番号札を取ればいいのかな?発券機はどこ?

  • 手前の看板には別の出張所のことが書いてあるけど意味わからないな 


属性情報とにらめっこしていただけでは見えてこなかった人々の体験が、来庁者になりきって玄関に立つと、だんだん見えてきます。市役所に訪れた人にはどんな風景がみえ、そこでどんなふうに感じるのかを想定できれば、不便な点なども発見しやすくなっていきます。

ユーザー視点からの体験(ユーザからの世界の見え方)がありありと想定できれば、不便な点や体験上の課題が自然と見えてくるのです。体験上の課題をきっかけに仮説を立て、UX企画の立案につなげていくことができます。


ポイント②:ユーザが置かれている状況・文脈の理解

体験がUX企画の立案に重要なのはわかった、ではどうやって体験を理解するんだ?という疑問が湧いてくるかもしれません。そもそも一般的には、玄関に立つことをせずに「属性情報からのユーザ理解」から企画の良し悪しを判断することが多いのかもしれません。「いまの20代男性はコト消費を重視しているから、この企画が最適だ!」のように…属性情報の膨大なデータを集め、天才的な解釈をすることでUX企画の立案ができるかもしれませんが、なかなか非効率で属人的に思えます。

そんな時に役立つのが、「ユーザが置かれている状況・文脈」への理解です。

属性や価値観を深堀りするのではなく、ユーザが置かれている状況や文脈を理解することで、どんな体験が生じているのかを明らかにしようとする方法です。

例えば、市役所に来庁した人の状況・文脈には下記のようなものがあるかもしれません。

状況:日本語がわからない・漢字が読めない
文脈:住民票を取りに来た

ここでは、年齢や性別などの属性情報はまったくありません。しかし、上記のような状況・文脈が想定できると、市役所の入り口に立ったときの体験イメージが湧いてきます。

上の状況・文脈の人は、こんな風に思っているかもしれません

  • 住民票を取るために、私ははどうすればいいんだろう??

  • 日本語ばかりで何が書いてあるかわからない。

  • 矢印に従えばいいのかもしれないが、どれなんだろう…

このように、状況と文脈から体験をイメージしていく事ができます。前述したように、体験をイメージできれば、仮説を見つけ、UX企画を立てるのが容易になります。

「ユーザ視点からの体験」をイメージ・理解するためには、国籍や性別などの「属性」はそこまで重要ではなく、その人がどんな状況下にあり、その場にどんな文脈でたどりついたのかを分析するほうが効率的なのです。


UX企画の新しいフレームワーク

UX企画の新しいフレームワーク

UX企画を立案するためには、属性情報によるユーザ理解を深めていくよりも、「ユーザが置かれている状況・文脈の理解」を進め、「ユーザ視点からの体験理解」をしていくほうが効率的なのではないか?というのが、この方法論の重要な視点です。

例えば、ファッションECサイトのUX企画を考える時にこの枠組みを使うとこんな感じになります。

ユーザが置かれている状況・文脈

  • 2週間後のデートのために新しい服を上下買いたい

  • ファッションのことは詳しくない

ユーザ視点からの体験(ECサイト上)

  • カテゴリごとに大量の服が出てきてしまう

  • どう組み合わせれば、予算内にちょうどいいコーディネートになるのかわからない

  • 難しい…

UX企画の立案

  • 予算、体型、好みのスタイルを選ぶと、数パターンのコーディネートが表示され、そのまま購入できる

このように、状況・文脈にフォーカスすることで、UX企画立案を一通り考えることができます。また、普段からユーザがどんな状況・文脈に置かれているのか?を考えながら、場を観察することで、これまでと異なる発見や仮説が得られるかもしれません。

「企画を立てるってどういうこと!?」と最初は思っていたのですが、この枠組みで整理すると、ユーザ体験を中心に企画を作っていけるんだな~なるほどな~と思った次第です。また、リサーチを企画するときにも、状況・文脈のパターンを調べるリサーチと、体験理解を深めるリサーチでは調査設計や必要なデータ変わってくるはずです。

皆さまも、ガッテンいただけましたでしょうか?(古い!)

更に詳しく知りたい方へ

ここで紹介した方法論の詳しい内容や、具体的なリサーチのやり方、UX企画立案の方法などは、ビービットが最近出版した『UXグロースモデル』に書かれていますので、どうぞご覧ください!


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