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ともす横丁Vol.12 鬼に光を

私の中に鬼がいる。それはいつもは大人しくしているけれど、時々暴れることがある。

母は自由を渇望していた。だから私に由美子と名付けたそうだ。子どもたちには自立してほしいと願う母の厳しさは、鬼のように見えた。

家庭に隷属して何もできずにいる母を見ているのがつらかった。母を助けることはできなかった。無力だった。

ある時からそんな母に「お母さんみたいになりたくない」と反発した。母はさびしそうな顔をしていたが、何も言い返すことはなかった。

母の自由に生きてほしいと願いながら、近くにいてほしいと矛盾する言動に反発しながらも、母のそばを離れることを選択できなかった。そんな自分が嫌だった。私も隷属していた。気づかなかった。

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誰かのせいにする、隷属していると感じる被害者意識は、自分の人生を生きることを放棄する。隷属を理由に自分が無力であると理由をつける。

それは、家庭だけでなくあらゆるコミュニティに対して表れる行動だ。社会に対する態度でもある。

自分の中にある被害者意識に気づいたら、そこにあった痛み・・どうしようもない寂しさ、悲しみ、奥深くにある怒りや様々な負の感情を静かにじっと見つめてみる。

これが鬼の心を生むのだ。それをただ静かにじっと見つめて、自分で自分を労わり、一生懸命生きてきた自分への愛を感じることで成仏していくように思う。

母の、そしてどこかしら隷属していた私の人生も、暗い闇をともに歩き、そこにある痛みに寄り添って労わり、少しづつ成仏を始めているように思う。

自分に棲む鬼に光をあてることで、無意識にある囚われから解放され、真に自立し、自律して生きるのだ。

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