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2017年1月後半で聞いたもの

文章最後の「★」は最大4つの、アメリカの新聞方式

Kreator - Gods of Violence:トランプ当選と今のアメリカは特に世界中のロックバンドの良いネタになったもので、本国ドイツを拠点に40年以上淡々と活動を続けるこのバンドにとっても、心機一転になったのはもう、間違いない。特に序盤から中盤にかけては、よほど世界情勢に疎い人で無い限り、思わず「セイ、タンイズ、リアル!」と一緒に叫びたくなるほど、曲の勢いもメッセージも、そのまんま、だ。まあ中心人物のミレ・ペトロツァは伊集院光と同じく1967年生まれで今年いよいよ50の大台に乗るから、物事の関心も過去以上に社会に向けられるのは自然なもの。ところが中盤以降、私が特にヘビーメタルに欲しくない、中途半端にマッチョでキャッチー(それもアイリッシュ民謡調)な要素が目立ち始め、私の嫌いなManowarやIron Maidenみたいな老害にウケそうなバンドっぽくなってきたと思ったら、投げてくるメッセージもやけに同調や協和を煽るものが増えてくる。アリアナ・グランデの近年の傑作曲みたいなタイトルも出てくるし、ラス曲に至っては「さよなら現世、ようこそ転生」みたいな感じだもの。ピッチフォークの記事でも歌詞に対してあれこれ突っ込みが入っていたな。このバンドはファンを突き離すぐらい、自分たちに正直でいて、それこそ社会に対する反骨精神をもっと剥き出しにして欲しかっただけに、後半の日和見加減が残念だった。【★★】

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Sepultura - Machine Messiah:それまでの何作かの不振を一撃で吹き飛ばすほど、圧力一点集中で気合の入っていた前作と比べると、リズムは変則的だしノリ辛いし、メッセージも入り組んでいるしで、また随分と実験的な方向性に打って出ている。チュニジアのバイオリニストを引っ張ってきたり、ハモンドオルガンを用いたボーカル抜きの曲もあったりと、単調にならない一方でクセの強い楽曲だらけ。トドメにはウルトラセブンの歌も飛び出してくるし、何よりもきちんと「Urutora Sebun」とカタカナ発音している所も徹底している、ってか彼らと同郷のR.D.P.も23年前にセブンの曲をやっているしでブラジルでのこのセブン人気は何なんだと調べてみたら、彼らがまだ子供だった'70年代に現地でセブンのみテレビ放映していたとの逸話があったりもして、世の中あれこれ回っているんだなあと。この1曲というのが無いけど、アルバムの内容的には↑のクリエイターよりも、聞いていて楽しかった。ま世界観的には、南米を一人旅中に追い剥ぎに合うような感じだが。【★★1/2】

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The xx - I See Youちょっと前にサタデーナイトライブへもこの新作のPRで出演してミュージカル・パフォーマンスを行っており、ベーシストの動きのキモさが目立ってはいたが演奏そのものは悪くなかったし、知人がオンラインで勧めていたのもあって聞いてみたら、これが大当り。この手のノスタルジー煽り系男女混声ダンスポップの中では、曲の印象度や密度がずば抜けていたし、歌詞が中学生の妄想レベルであっても、さすが10年以上のキャリアを積んでいるだけあって雰囲気そのものが洗練されている。これであとはコルベアやキンメル、ファロン、エレンの番組でミュージシャンとしてゲスト出演して、ついでにトークもハズさなければ、アメリカでの人気が爆発するだろう。KROQのプレイリストに乗っかれば、西海岸も制覇確実。逆に今回のアルバムでその機会を逃したら、ここが頂点になってしまうかもね。【★★★】

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