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【一生に一度は見なきゃ損!】世界最大規模のポップな!?クラシック音楽祭、BBCプロムスとは

イギリスのロンドンにある、Royal Albert Hall(ロイヤル・アルバート・ホール)を中心に毎年夏(7月下旬から9月上旬にかけて)行われる開催される世界最大級のクラシック音楽祭・BBCプロムス

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(Royal Albert Hall(ロイヤル・アルバート・ホール)の内観)

そもそもクラシック音楽祭とは?
一定の期間に、特定の地域もしくは会場で集中的に、複数の出演者によるオペラやコンサートなどを行う一連の音楽行事のこと。大規模なものでは数日がかりで開催したり、複数の会場で同じ時間帯にコンサートを開催する場合もある。
日本ではラ・フォル・ジュルネ東京・春・音楽祭、海外だとザルツブルク音楽祭などが有名である。


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(公式サイトより)

今回取り上げるBBCプロムスのメイン会場である、Royal Albert Hall(ロイヤル・アルバート・ホール)は、ロンドンのサウス・ケンジントン近隣、シティ・オブ・ウェストミンスターに位置し、この会場を中心に、イギリス各地で80以上のイベントが行われる。

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また、音楽祭の主催でもある、イギリスの国営放送BBCによる、ラジオ・テレビでの放送もあり、世界中のファンを魅了し続けている。

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(公式サイトより)



今回は、この音楽祭の概要・歴史を始め、筆者が実際に訪れた時の様子や、毎年ファンたちの間で大いに盛り上がるBBCプロムス最終夜"The Last night of the Proms(ザ・ラストナイト・オブ・ザ・プロムス)"、番外編として昨年秋に日本で開催された"BBC Proms JAPAN 2019"について、書いていこうと思う。



BBCプロムスの概要・歴史

1895年にスタートした「プロムス(Proms)」は、「プロムナード・コンサート」が略された言葉である。この言葉は、コンサート開始当初に聴衆が "散歩やぶらぶらと歩きながら(=promenading)、コンサートを楽しんでいた"ことに由来しており、現在でも、ギャラリー席及びアリーナ席には立見区画が設けられている(チケット代は着席に比べお手頃である)。

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(写真右下のステージ前のエリアが立見区画である。)


プロムスを企画したロバート・ニューマンの考えは、

「通常はクラシック音楽のコンサートを訪れないような人々も、チケットが安く、より親しみやすい雰囲気であれば魅力を感じてくれるのではないか」

というものであり、当初は「promenading(歩き回る)」だけでなく、飲食および喫煙がすべて自由とされた。


また、第1回のプロムスから半世紀近くにわたり指揮を務めたヘンリー・ウッドは、回を重ねるごとに従ってレパートリーの拡大に貢献し、プロムスを世界中に有名にすることに貢献した。彼の功績を讃え、今日では、プロムス期間中には、メイン会場であるRoyal Albert Hall(ロイヤル・アルバート・ホール)のオルガンの前に、彼のブロンズ像が据えられる。

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(Wilipediaより)


このように120年以上の歴史あるプロムスは、

”世界中で活躍する音楽家が出演し、若者やファミリー層まで魅了する多彩で豊かな公演を提供すると共に、教育プログラムやアウトリーチ(普及啓発)の推進により、幅広いオーディエンスに極上の音楽を届けること”

が理念とされ、現在でも、クラシック音楽をメインに、ミュージカル映画音楽ジャズワールドミュージックなどの様々な音楽が、世界中の有名アーティスト・団体により演奏されている。

(2020年のハイライト、公式ツイッターより)


これは余談だが、足繁くコンサートに通う根強いファンである通称「プロマー」には、1シーズン通し、あるいは半シーズン通しのチケットを購入している人もおり、皆勤を目指す人も多い。全コンサートを聴いた記念のバッジあるいはTシャツを身に着けている人もいるそう。

そのくらい、イギリスでは、ローカルな根強いファンがたくさんおり、毎年とても注目される音楽祭なのである。


筆者が実際に訪れたBBCプロムスコンサート

2019年8月のある日、筆者は念願であったBBCプロムスのコンサートに行くことができた。日本にいる時から噂には聴いていたものの、実際に会場に訪れ、コンサートを聴けるとは思っていなかったので、喜びもひとしおであった。

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(ホールの外観。残念ながら工事中であったが、その重厚感は感じることができた。)

筆者が訪れたコンサートは、イギリスのヴィクトリア女王とアルバート王子の生誕200年を記念したもので、音楽祭中のコンサートシリーズの1つであった。


コンサートの開演時間は、夜の20時。8月のロンドンは、すでに肌寒く、秋の気配があった。ロンドンの天気は変わりやすく、この日も開演前に急な雨に降られた。

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(コンサートホールの入り口。円形の建築なので、入り口が数カ所にある。)


会場には開場時間より少し早めに到着し、軽食を済ませ、入り口近くのチケットショップ兼グッズショップに立ち寄った。

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(チケットショップの様子。背景には、ホールの内観の写真が。)


そしていよいよ開場。
ホール内には、開演時間の30分前に入ることができた。

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(こちらには、壁にホール内の絵があった。カラフルで可愛い。)


入ってすぐの長い長い廊下を抜けて行くと、

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(壁には、過去のコンサートの写真が飾られ歴史の重みを感じる。)


ホール内へ向かう階段があり、

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(とても上品で高級感のある建築。)


またさらに廊下を抜け、

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(照明がとてもおしゃれ。)



いよいよホールの中へ!

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(天井が高く、開放感のあるホール内。)


コンサートでは、ヴィクトリア女王が使用していたとされる「黄金のピアノ」を、ピアニストのStephen Hough氏が演奏した。

(公式YouTubeより、ショパン作曲「ノクターン 第2番 変ホ長調 作品9の2」)


金色に輝く美しい女王のピアノを、歴史あるコンサートホールで聴くことができ、筆者は胸がいっぱいになった。

このコンサートの他の曲目の動画は残念ながら見つけることができなかったが、公式YouTubeチャンネルには、音楽祭の他のコンサートの動画がたくさん上がっているので、ぜひ見ていただきたい。



最終夜"The Last night of the Proms(ザ・ラストナイト・オブ・ザ・プロムス)"

毎年7月下旬から9月上旬にかけて約8週間に及んで開催される、音楽祭・BBCプロムスであるが、最終夜の"The Last night of the Proms(ザ・ラストナイト・オブ・ザ・プロムス)"は、イギリス国民にとってはもちろん、世界中のプロムスファンにとって、大いに盛り上がる日のようだ。

(BBCプロムス公式ツイッターより)


主催でもある国営テレビ放送局BBCの生中継が入り、例年会場は満席チケット入手も困難だそう。最終夜のコンサートを購入するには、それ以外のコンサートのチケットを少なくとも5回購入すること(「Five-Concert Rule」と呼ばれる)が条件となっている。

(2020年の解説者の1人であった、Richard Coles氏の公式ツイッターより)


最終夜のコンサートプログラムは、伝統的に他の音楽祭期間中のコンサートに比べ軽くくつろいだ傾向の曲目で、第1部・第2部の全2部形式で構成される。

第1部は、ポピュラーなクラシックの曲目やミュージカルナンバー、

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(ホールのロビーの壁に飾られた、ジュリー・アンドリュースの写真。彼女は、映画「サウンド・オブ・ミュージック」などで知られる。)


第2部では、イギリスへの愛国心をテーマにした以下の4曲が必ず演奏されることになっている。

1.「Rule Britannia(ルール・ブリタニア)」
2.「Jerusalem(エルサレム)」
3. 日本でも有名な"威風堂々"「Land of Hope and Glory(希望と栄光の国)」
4. イギリス国歌「God Save the Queen(女王陛下万歳)」

1.「Rule Britannia(ルール・ブリタニア)」
ジェームズ・トムソン (James Thomson) の「ルール・ブリタニア」の詩に、トマス・アーンによって1740年に曲がつけられた「Rule Britannia(ルール・ブリタニア)」。

(ブリタニアとは、イギリスを擬人化した女神のことである。つまりこの曲は、イギリスが世界を支配するであろうという気宇壮大な歌である。)


2.「Jerusalem(エルサレム)」
18世紀のイギリスの詩人ウィリアム・ブレイクの詩にヒューバート・バリーが1916年に曲をつけた「Jelusaem(エルサレム)」。

(日本語では、「聖歌」とも訳されているが、実際はイギリスへの愛国心を歌った歌である。)



3.日本でも有名なエルガー作曲の威風堂々第1番「Land of Hope and Glory (希望と栄光の国 )」

日本でもCMなどで使用されたことのあるこの曲のメロディー。イギリス人エドワード・エルガーが作曲したオーケストラの行進曲集、"威風堂々"第一番の中間部に、当時の王太子アルバート・エドワード(のちのエドワード7世)が「歌詞を付けたら偉大な曲になるだろう」と、歌詞をつけるべきことをエルガーに示唆したことから生まれた曲。

(「プロマー」たちが冒頭(1:29〜)で、曲のリズムに合わせて膝を曲げて上下にを身体を動かす様子が印象的である。)

日本では、エルガーの楽曲を指して「威風堂々」と言う場合、第1番あるいはその中間部の旋律を指すことが多いが、のタイトルは行進曲集全体に与えられた題名であって、この旋律自体に付けられたものではない。したがって、第1番の中間部をして『威風堂々』と呼ぶことは誤用に近いものがある。

イギリスではこの旋律はもっぱら「Land of Hope and Glory(希望と栄光の国 )」と呼ばれている。


4.イギリス国歌「God Save the Queen(女王陛下万歳)」

(時代により王が、Queen(女性)ではなくKing(男性)である場合、曲名は「God Save the King(国王陛下万歳)」となり、歌詞も変わる。)



近年では、1945年のミュージカル「Carousel(回転木馬)」のためにリチャード・ロジャーズとオスカー・ハマースタイン2世によって製作された楽曲である、「You'll Never Walk Alone(人生ひとりではない)」も、頻繁に演奏されている。

(2020年のThe Last night of the Promsより)


また、今年は新型コロナの影響により無観客で開催されたため、観客がいない中での異例の最終夜となった。オーケストラは、通常より距離をとって配置、合唱団員も観客席にそれぞれ距離をとって配置されるなど、対策がとられた。

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(公式ツイッターより)


「プロマー」たちにとってはとても残念だったと思うが、国営放送BBCの生中継で視聴者の様子を映したり、公式SNSによるリアルタイム配信など、会場に行けなくとも臨場感が感じられた。



番外編:日本でもBBCプロムスが開催!?

2016年にはオーストラリア、2017年、2019年にはドバイでも開催されるなど、世界的な広がりをみせる英国発のBBCプロムスだが、実は、2019年10月30日〜11月4日にかけ、東京大阪の2都市で開催されたのである。

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(公式サイトより)

BBC Proms JAPAN 2019』と称し、ブリティッシュ・カウンシルと駐日英国大使館が日本で展開する事業「日英交流年 UK in Japan 2019-20 」の一環として開催された。(公式サイト: https://www.bbcproms.jp/about/)


現地で高い定評のあるBBCスコティッシュ交響楽団をはじめとする、海外からのアーティストはもちろん、日本を代表するアーティストの方々(ヴァイオリニストの葉加瀬太郎氏や三浦文彰氏、ソプラノ歌手の森麻季氏、サクソフォンの上野耕平氏など)が出演。


次世代のアーティストの紹介や照明や舞台セット、クラシックをはじめジャズなども取り上げる多様性、教育プログラムや渋谷の街中で行われる無料コンサートなど、本国『BBC Proms』の理念を踏襲した日本版『BBC Proms』なのであった。


終わりに

イギリスだけでなく、世界中に熱狂的で根強いファンを持つBBCプロムスには、現代のクラシック音楽界にとって、学ぶべきところが多いように感じる。伝統を守りながらも、YouTubeやSNSを駆使して、より多くの人々にクラシック音楽の魅力が届くに工夫する姿勢は、個人的にも大変勉強になった。歴史ある音楽祭、これからも目が離せない。

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