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今必要な少子化対策を考えてみました Vol.2

若年社会人、大学、高校生、子育て世代など層別の課題へのきめ細かい対策を

少子化対策として、すぐ思い浮かぶのは「出産の支援」です。今までに行われて来たものも、不妊治療の保険適用や、出産一時金の増額、出産子育て応援給付金、待機児童対策や男性の育休取得などがあります。
しかし、残念ながらこのような少子化対策は、現在のところほとんど効果が出ていません。
日本では、子育てや教育に親のお金がかかりすぎます。また子育て全体への社会の支援ムードが薄い。病児保育は重要ですが、子どもの体調が悪い時ぐらい、親は堂々と帰れるような職場環境がないことの裏返しでもあります。「子どもがいると職場の居心地が悪い」という非常に残念な状況です。海外では、病児保育はメジャーではないようです。
子どもをもう一人産んでもらうためには、出産や保育の支援だけではなく、子育て罰を解消するためには、「大学無償化」や「児童手当の大幅増額」など、子育てや教育に親のお金がかからないようにすることが重要です。
「親ガチャ」などという言葉が生まれる状況で、「自分はハズレの親になるのでは」という不安を抱えていては、子どもを積極的に産もうという気持ちにはなれません。


これから結婚・出産する層への支援が実は重要

さて、実際これから、誰が赤ちゃんを産んでくれるとかというと、今の大学・短大・専門学校生や若年社会人でしょう。しかし、彼ら彼女等の4割は奨学金という名の多額の借金を抱えています。
働き始めると、月数万円の返済が何年も続来ます。私が運営するキッズドアに入る若手社員も奨学金を返済していますし、アルバイトやボランティアの大学生も奨学金を利用しています。
「毎月2万円も返済しなきゃいけないので、働けたとしてもちゃんと返済でくるのか不安です。返済が終わるまではとても子どもなんて考えられません。」と言います。
バブル世代なら、月2〜3万円なんて、ちょっと残業すればどうにでもなる、と思ってしまいますが、そもそも今は働き方改革で、残業もそれほどできません。失われた30年、給料は増えるどころか減っています。

まだ、110〜120万人いるこの世代が、子どもを産むかどうかは、まさに日本の将来を左右します。大胆な施策を打ちあぐねて、5年後、10年後やっぱりやらなければといっても、その時には、子どもを産める年齢の女性はガクッと減っているのです。

私は、貸与型奨学金の返済免除は、少子化対策に非常に有効だと思います。例えば、子どもを産んだら貸与型奨学金の返済を免除する。毎月の返済が無くなるのなら、子どもを産めるかも、と思う若者も多いのではないでしょうか?
「借りたものは返さなければいけない」などという倫理観を振りかざしている間に、どんどん「産める人」が減っていくのです。
国で行うのが難しいなら、地方単位でもやってみるのはどうでしょう?代わりに市町村や都道府県が奨学金を返済する仕組みを作ればいいのです。
企業が若手社員の奨学金返済を肩代わりする制度は既にできています。

また、大学や専門学校の無償化も必須と考えます。教育費が高い=大学や専門学校の学費が高い、と捉えて良いでしょう。塾や予備校は個人の努力で「行かない」選択もできますが、高等教育を受けるためには授業料などは必ず払わなければなりません。この負担がなくなれば、「教育にお金がかかりすぎる」という少子化の壁はだいぶ減るのではないでしょうか?

高校生への支援は、目先の良質な労働力確保としても重要

日本ではいまだに高校は義務教育ではありませんが、高校進学率は99%です。親が扶養している状況は変わらないのに、なぜか月額1万円の児童手当は中学卒業時で終了します。
高所得家庭なら、特に影響はないかもしれませんが、年収300万円以下の家庭にとっては、収入の4〜5%以上の減収になります。現役世代の給与が下がり社会保障負担が増加する中で、中流家庭にとっても月額1万円が無くなるのは大きなダメージです。
お金が無くなることで、さまざまな不利益が重なります。
東京都が少子化対策として、全ての子どもの月額5000円を給付することを決定しましたが、今の子育て世帯にとっては、とてもありがたいことです。月額5000円もらえるから子どもを産もうと思う人はいないかもしれませんが、月額5000円があることで、親の安心感は変わります。「たった5000円」という人は、多くの子育て世帯の今の厳しさを知らない方なのだと思います。大学や専門学校に進学する子どもの約5割は奨学金を利用しなければ、進学できないことを忘れてはいけません。
私は、少なくとも、高校生までの月額1万円の児童手当の給付はマストだと思います。3年で36万円。貯めておけば大学の入学金にも十分です。受験料にも使えます。好きな部活に打ち込んだり、短期の海外留学も可能です。
いつかまた、コロナのような災害が来ても、月1万円あれば「食べるものがない」という状況にはなりません。

財源は消費税以外で

最後に財源についてです。異次元の少子化対策を行うために消費税増税を上げる政治家の方もいますが、単に消費税をあげるだけでは多くの子育て世帯がさらに苦しくなるだけです。毎月の生活費に20万円かかる家庭では、消費税が5%上がれば月1万円の負担増、30万円なら1万5千円も税負担が増えます。これでは生活が破綻してしまいます。
そもそも、子どもや教育への税の再分配が少ないことが少子化の大きな原因です。例えば年少扶養控除の復活や、フランスのように所得税をN分のN乗方式にして子どもがたくさんいる世帯の税負担を下げるようなことは、少子化対策として有効かと思いますが、消費税の増税はそれとは真逆です。
異次元の少子化対策のために、消費税増税で子育て世帯に痛みを与えては本末転倒です。
例えば、長寿化が進む日本では、100歳の親の遺産が70歳の子どもに相続されますが、70歳の高齢者にそれほど遺産は必要なく、結果、ずっと銀行にお金が寝てしまっています。だったら、少し相続税をあげるのはどうでしょう?企業の内部留保は516兆円もあるそうです。教育目的税として法人税に上乗せするのはどうでしょう?良い教育を受けた人材は、企業に大きな価値をもたらすはずです。

少子化対策が大義名分となって、消費税の大幅増税が行われるようなことだけはないようにしなければなりません。丁寧な財源の議論が必要だと思います。


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●「少子高齢化のトップランナー日本 40年以上少子化が続く日本で今必要な少子化対策を考えてみました!」
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