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トランプ・カントリーにて(第1日目)

ポートランド経由で1ヶ月と10日ぶりにアメリカに入国した。

成田からポートランドは9時間かからない。ポートランド空港の職員はみんな上機嫌で、ここから入国するのも悪くない、と考える。私の荷物をチェックしたTSAの職員が、ポートランド空港はTravel and Leisure のランキングで連続7年ベスト空港に選ばれているのだと教えてくれた。

市内のヴィーガンカフェで時間を潰し、空港に戻ってモンタナ州ミズーラ行きの飛行機に乗り込んだときに、乗客のほとんどが白人だと気がついた。

自分以外に白人がいない、と気がついたときの気持ちを説明するのは難しい。

昔からそういう機会がなかったわけではないが、トランプ時代が来る前は、状況を判断するひとつの材料でしかなかったが、トランプ時代になって、それがわかったときに自分の気持ちが微妙に硬直するのに気がつくようになった。この中に、人種差別主義者や白人至上主義者はいませんように、と思うのだ。

約1ヶ月半ぶりのアメリカだ。私が空けている間、私の車を管理してくれる男友達がモンタナまで来ており、長らくロードトリップをしていないのでそれもよかろうとモンタナにジョインすることに決めたはいいが、いない間にアメリカではたくさんのことが起きた。多くの事件が、人種や宗教の分断に関わることだったから、ヘッドラインにracismという言葉を見ない日はなかった。そして自分は真っ白な州に突入しようとしている。それに気がついた瞬間に、時差ボケが冷めた。

迎えに来たKが、「Things are crazy」という。Things are always crazy、と笑い飛ばそうとするが、Shit’s different nowと言われていやーな気持ちになる。山と農場だけの場所でも、スーパーなどにいけば、人々がピリピリしているのに気がつく、という。「息子には、他人と目を合わせるなよ」と伝えているという。おまけに二人は白人なのだ。

数日前にぎっくり腰をやり、湿布を買いにいかなければならないという。行く先はウォールマートだ。アメリカで最大のチェーンで、一番安い。銃や銃弾を売るスーパーである。つい先日、エルパソの白人至上主義者がラティーノを大量に殺すために選んだのはウォルマートだった。2日前には、ミズーリで白人男性が「憲法修正第二条を試すために」ライフルを持って訪れたのもウォルマートだった。駐車場で「わ、ウォールマートに入るんだ」と口にすると、彼が「ごめんな、この近くにはウォルマートしかないんだよ」と苦笑いする。モンタナのウォルマート・・・・白人のKとあまり離れないようにしている自分、他の客と目を合わせることを避けている自分に気がつく。こんなことはあまり考えたことはなかった。過去に2度(2008年と2012年)アメリカを一周したときだって、アジア人つらした女性二人組でアメリカ中をウロウロしていたのだ。今見られるようなヘイトや人種差別が存在するということは頭ではわかっていたが、今のように市民権を得て大手を振って歩ける存在ではなかった。トランプが、地下に潜っていた人種差別意識をえぐり出したのか。オバマを選出したアメリカは、夢だったのか。それとも奇跡だったのか。

もし、私が人種差別に晒されるようなことがあったら、Kは相手を怒鳴り倒すようなタイプである。そういう意味では信用できる。けれど、そんな今フロンテーションが起きる可能性を考えただけでストレスである。だから何も起こりませんようにと願うしかない。そして、それが起きた場合、ビデオを撮ることを忘れないようにと自分に言い聞かせる。ビデオがマイノリティを助ける武器になると知っているつもりでも、ピンチになったら忘れてしまうかもしれないから。

ところで、アメリカでは、特定の人種、宗教、性的指向を持つ人々に対する犯罪はヘイトクライムに定義されて、通常の罪より重い。けれど、国内テロリズムのほうがもっと重い。ところが、白人至上主義者による銃乱射は、ヘイトクライムに定義されることが多い。国内テロリズム(domestic terrorism)と定義されるためには、アメリカ政府が認定する海外の「テロ組織」とつながっている、ということが条件になるからだ。そして、今、白人至上主義者によるヘイトクライムによる殺人のほうが、テロリズムよりもよぽっど多い。

アレクサンドリア・オカシオ・コルテスが、これを議会で問題にしていた。けれど白人議員、特に共和党議員の多数は、この問題に取り組みたがらない。支持者たちの多くが白人で、白人至上主義者が含まれているからだ。はあああああ。

備忘録:ホワイト・ナショナリストによる国内テロリズムが上昇、呼び方の変更がFBIによる阻止を助ける可能性(NBC)


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