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ブックツアー西日本の旅

note を始めました、と最初のエントリーをポストして、あっという間に時間が経ってしまいました。新しいプラットフォームに登録する、という行為は、知らないパーティに一人で遅れて参加する感じとちょっと似ています。最初は恐る恐るドキドキしながら入ってみると、すぐに話しかけてくれる人がいる、おしゃべりしているうちに不安が溶けて、来て良かったなと思う感じ。もりもり書こう!と思ったはいいけれど、ブックツアーの旅が始まってしまい、その間、ダウンロードしたアプリで他の人たちの使い方を研究していました。

「あなたの街に本を持っていきます2019」と名付けたブックツアーで、My Little New York Timesという新刊を持って名古屋、京都、大阪、鹿児島、沖縄と周ってきました。

よく聞かれることなので、ここに書いてしまいますが、旅費は自腹です。イベントのギャラは、集客人数をもとに計算された額をいただくこともありますし、規定のギャラをいただくこともあります。今回はエアはすべてマイルで取ることができましたが、それでも全体をならすとギリギリ黒字になるかならないかというところでしょうか。

お金を稼ぐためと思ったらできませんが、こうやって本を持ってあちこちを周るということは、自分にとっては大切なフィールドワークです。なぜなら、「広げる」という裏テーマがあるからです。私という存在や私の本を知らない人たちに自分を知ってもらう、という意味でも「広げる」という意義がありますし、あっちこっちを旅することが自分の見識を「広げる」ということにもなるからです。

以前書いたように、私には放浪癖があります。旅をしたい、という欲望は、痒いと思ったら掻くしかない痒みのようなものです。行きたい、と思ったら、飛び出さずにはいられない。けれどもっと考えてみると、旅をする究極の理由は、自分がどれだけ物を知らないかを確認する作業でもあります。

ニューヨークに暮らして10年経ったときに、アメリカ一周の旅に出ました。ニューヨーカーがよく「ニューヨークはアメリカではない」というのですが、とはいえニューヨークに10年暮らしたことは、アメリカに10年暮らしたこととイコールでもある、ということに気がついたのです。「アメリカを一周したい」という気持ちがコヨーテという雑誌の企画になって、アメリカを旅したことが、自分にとってひとつのターニング・ポイントになりました。旅をしてみて「アメリカのことをいかに知らないか」がわかったからです。同じように4年後にも、もう一度、アメリカを一周しました。そのときにもまた、まったく新たなことをたくさん学びました。こうやって「知りきった」と思うことは不可能だということがわかりました。そしてこの何年か、日本の各地を旅しながら、自分が日本人に生まれながら、あまりに日本の各地のことを知らないことを実感しています。同時に、自分が知らないことがどれだけあるのかを確認することはけっこう大切です。自分が物を知っていると思ってしまうことは恐ろしいことだと思うのです。

行ったことのない場所を訪ねることも、同じ場所に何度も行くことも、同じように大切です。今回のように駆け足で旅をしていると、行きたかった場所がおやすみだったり、時間切れになってしまうこともありますが、そのたびに「また次来ればいい」と思います。最近、実はこの「また次」と思うことが大切なのだと思うようになってきました。人生も、だんだん長くなってくると「楽しみなことがある」ことが自分の精神を支えてくれるからです。楽しみにするものがなくなってしまったら、自分のような人間はばたりと倒れてしまうのではないかと思うのです。

今は沖縄で中休みの最中で、これから熊本福岡でイベントをし、西日本のツアーはこれで一旦終了して、このあと台北とバンコクに行ってきます。この間、少しずつnoteのことを学ぼうと思っています。

今回の長い旅は、そのあと東京に戻って終了します。3月21日には、アーティストのスプツニ子さんと「アートで社会を変えたい」をテーマにトークをし(蔦屋書店銀座店)、3月22日にはnoteの加藤貞顕さんとトークをします。加藤さんには、アメリカのこと、ニューヨークのことを聞かれると思いますが、私からもnoteのことを根掘り葉掘り聞きたいと思っています。3月23日と24日はThe Tokyo Art Book Fairで、最近、発行したzineの第二号を直販します。みなさんとどこかでお会いできますように。


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