見出し画像

マリファナというブギーマン

*写真と本文は関係ありません。

「真面目にマリファナの話をしよう」(文藝春秋)の刊行に際し、8月4日から飛び石でトークを4つやった。

なにせタブーなトピック、ということになっている。相手はどうしようなどといろいろ考え、1本は、駒沢の友人の店スノーショベリングで、店主のシュウくんを相手に練習ラウンド的なものを。2本目はポッドキャスト#こんにちは未来 の公開収録に、大麻の医療利用を提唱している医師の正高佑志さんをゲストとしてお呼びして、3本目は、SPBSで大量に撮った写真を使ったスライドショーを、そして4本目は普通のトークを、ということにした。

8月8日のイベントでは、文藝春秋を通じてモーリー・ロバートソンさんにダメ元でトークの相手をお願いしてみたら快諾していただけた。そこで会場探し!となったわけだが、最初にたまたま「8月の第一週にイベントやらないか?」と友人のプロデューサーを通じて声をかけてきた会社に企画書を出したら、「コンプライアンス上難しいという結論になった」というメールが送られてきた。

ははーん。タブーのトピックについてのイベントをやろうとするとこういうことが起きるわけだな。それにしても、その時点で相手はゲラも見ていない。それなのに、「コンプライアンス上」ってなんだ。なんか釈然としない。会社の名前を書かずに、ソーシャルに書いたら、「うちはウェルカムですよ~」というメッセがたくさん届いて勇気を得た。結局、モーリーさんとのトークは、タイム・アウト・カフェでできることになった。

一連のトークが始まる直前、マリファナなんてトピックを扱いやがって怒られたりするだろうかとちょっぴり怖い気持ちになった。想定質問をあれこれ考え、そして平静な気持ちになるために瞑想した。

蓋を開けてみると、どこの会にも攻撃的な人はいなかったし、来てくれた人で会話をした人たちは、ほとんどの人が「知りたい」という知的好奇心とオープンマインドを持っていた人ばかりだった。友人が難病で苦労している、という人もいたし、薬学部の学生さんたちもいた。ヘンプについての知識の啓発の活動をしている人もいた。

そして実際、売れ行きも初動はなかなかに好調な様子である。友人や読者のみなさんがアップしてくれるソーシャルのポストと、それにつくコメントをチェックする。知りたい、読みたい、日本の法律おかしい、医療気になるというコメントがほとんどで、ごくごくたまに「いいねできない」とわざわざ書く人がいるくらいのものである。

こういう様子を見ていたら、思っているよりタブー視は薄まっているのではないかと思えてきた。誰かが大麻で逮捕される人がいるたびに大ニュースになり、けしからんと怒っている人たちの声ばかりが耳に入ってくるから、タブーなのだ、怖いことなのだと思ってしまいがちではあるけれど、きっと多くの人が海外に行って道から当たり前のように漂ってくる大麻の匂いを感知し、「どうやら日本で言われていることは違うらしいぞ」と思っているのかもしれない。そして、そういうことを口に出すと、世間様から怒られてしまうと思っているのかもしれない。真面目にマリファナのことをルポした本のイベントに会場を貸したら、コンプライアンス上問題が発生するかもしれないぞ、と思うのかもしれない。タブー視しているのは、私たち自身なのかもしれない。そう考えると、マリファナはブギーマンの一種だと言える。実際、自分だって、この本を作っている最中、「こんなタブーなトピック取り上げて大丈夫か」と何度ひよりかけたかわからないわけで、その気持ちはわかる。そして、アメリカでだって、そういう時代があったのだ。もうずっと前のことだけれど。

備忘録:


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?