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コンセプトを形に〜ランチ編〜(第6話)

【前回の記事】

前回に続く…

【理念を落とし込む】

今日の記事は、では実際にはどのようなお店にしていったかを具体的に書いていきたい。

前回の記事で経営理念をこのように書いた。「役割をもって仕事をしている人のための安息の地を作る」だ。

では役割をもって仕事をしている人とは…。仕事をしている以上、役割を待っていない人はいないのだが、私が指し示したい人は生活の中で仕事の比重が高い人のことだ。仕事へのスタンスは人それぞれ、使命感をどれだけ感じているかも人それぞれだと思う。その中で、プライベートを犠牲にして頑張ってる人や挑戦的な仕事をしている人をターゲットにしたかった。私は2年の間、最低限の休息以外を働いて、だからこそ知った痛みがあった。同じ痛みを持つ人が沢山いる場所をまずは探さなければ。

・立地を考える。

テナントを探す時にはコンセプトと照らし合わせて、立地との相性を考える必要がある。

私がやりたいお店のターゲットは仕事をしている人なのでビジネス街を条件に探した。ご縁あって選んだ場所は神保町、正しくは神田小川町だ。靖国通りを一本入った裏通り、元電気大学があった辺りと言って分かった方がいたらとても嬉しい!

ビジネス街(年中人の多い超繁華街は除く)という土地の特徴だが、平日は朝から夜の終電間際まで沢山の人がいる。しかし深夜と週末は閑散とする。私がお店を作った辺りの昼と夜の人口比は10:1だと言われていた(夜の人口とは住人の数)。盆正月はもっと人が居なくなる。ドーナツ化現象の内側、それもそのど真ん中の話だ。当然、この辺りは土曜休みのお店が多い。日祝休みの店は更に多い!ここに作った時点で休店日は土日祝日にする事が自ずと決まる。

【お店のサービス内容を考える】

次に前回の記事で企業理念として書いた「明日も戦える心と身体を養うサポートをする。」という点だが、それはどう言うことか。

まずなんと言っても食だ、健康的な食事を提供することで負けない身体作りに貢献したい。では健康的な食事とは?それこそ日本食である!日本の食文化は最強だ。

この頃ちょうど和食がユネスコの無形文化遺産に登録された。フランス料理や地中海料理などもそれに指定されていた。そして、日本食が追加された理由は沢山の素材を使った健康的なお料理であり、旬を大事にしている点でだった。飲食マンとしてとても嬉しいニュースだったのを覚えている。

・日本型食生活

ところで、日本型食生活という言葉をご存知だろうか?

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昭和50年代頃に農林水産省が提案した考え方で、ご飯を主食にお野菜、お肉、乳製品、果物など色んな物をバランス良く食べましょう。取るべき配分はちょうど駒のようになっていますよ。形の良い駒を作って回しましょう!という意味の図だ。

これにはなるほどなと思った。昭和50年とは今の働き盛りの方が育ち盛りだった頃、今の元気なお爺さんお婆さんが働き盛りだった頃だ。またこの頃から日本の平均年齢はグングン伸びていった。これには説得力があるなと思い、私は日本食の栄養バランスに関して資料を集めた。

私は昭和59年生まれなのだが、生まれるちょっと前の日本を考えると…戦争が終わり約40年が経ち、景気は登り調子。(バブルは昭和60年から始まったとされる。)日本円の価値が高くなり海外から沢山の文化が入ってきた。食文化も然り、古典的な日本食の欠点を埋め栄養バランスがとても良くなっていった。(古典的な日本食はご飯が多く、肉も食べなかったので質素すぎた。)

ちなみに現代の日本の食事は西洋寄りになり過ぎていて高カロリーになりがち。またパスタだけ、ピザだけという献立も望ましくない。

この日本型食生活はその後にもっと具体的になって1975年型がベストだと言われている。ついでにその記事も貼り付けておく。

食文化の話になると大好きすぎて長くなってしまう。話がずれてしまったのでお店の話に戻そう。

お金を銀行から借りる為の審査には事業計画書の提出が必要なのだが、この事業計画書の中に日本型食生活という言葉を使った。詳細は忘れたが、日本型食生活をモデルにし、ランチタイムには毎日でも食べられるような献立の定食を提供するといった内容を書いたはずだ。

・〝人間の体は食べた物でできている″

極めて当たり前のことなのだが、人間の体は食べた物でできている。一度や二度の食事が体型、体質に影響することはないだろうが、習慣化された食事の癖は結果として現れてくる。食べ過ぎてしまえば生活習慣病になってしまうし、栄養の偏りは免疫力低下やイライラ、生理不順など様々な症状となって可視化される。なので習慣的な食事を整える事がとても大事だ。

・一汁三菜

日本食の色々を勉強する中でとても素敵な言葉を見つけた。「一汁三菜」なのだが、いかにも健康的な響き、おかずが沢山出てきそうな雰囲気。私がやりたい事を言い表していた。ちなみに一汁三菜とは、汁物を一つ、おかずを三品で献立をたてることを意味する。おかず三品の内訳は主菜一品と副菜二品。

・行ってらっしゃい!

もう一つ、開業時からずっと続けている事があった。ランチのお客様がお帰りの際には、ありがとうございましたではなく、行ってらっしゃ〜い!と送り出すことだ。

ありがとうございましたという挨拶はどうもこちら目線の意味合いが強くて好きではない。お客様は午前と午後の仕事の合間に来てくださっているわけだから、午後のお仕事も頑張って欲しいという気持ちを伝える為には行ってらっしゃい!の方が目指すサービスとして自然だった。

お客様に何度もいってらっしゃいが嬉しいと言われたし、久々に言ってもらった!と仰る方もいた。以前、私が肉じゃがを見て感じた事がこんな所にもあったんだとハッとした出来事だった。

【ランチ営業の総括】

最終的にランチは880円で一汁三菜の定食を提供していたのだが、この値段は毎日でも来てもらえるようにと1000円以下に設定した。メニューは4種類の定食で、主菜を肉じゃがかサバの味噌煮、生姜焼き、それか日替わり、この4つから選んでもらっていた。ご飯は白いご飯、混ぜご飯、玄米から選べる。

席数はたった11席、小さいお店ながら11時30分〜14時の営業で毎日40名以上のお客様が来てくださっていた。有り難い事に、ご飯が無くなってしまい早めに閉める日もしばしばあった。

そして、とにかく常連さんが多かった。週5日来てくださる方もいた。その方は大体、日替わりを頼まれるのだが、日替わりがお好きでない時は生姜焼きを選ばられる。時に来られない日があったが、その日は大体出張で地方に行っていたりする。この方に限らず、素晴らしい常連さんに恵まれたお店だった。

常連さんが多いと言うことは、すなわち私のお店に来る事を習慣化してくださっていたという事だ。経営理念に基づいてコンセプトを立て、それが実現できたことがとても嬉しかった。いや、むしろ自分が想像していた以上に良いお店にする事ができたと思う。ランチに関しては人気店だったと自負できるかな。(ランチに関しては!)


しかし、ディナーの営業は手応えを感じるまで長い時間が必要だった。


ここまで読んでいただきありがとうございました。次回はディナーの営業の色々を書いていきたいと思います。


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