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モロッコ旅⑪ 〜アトラス山脈 絶賛横断中!〜

【前回の記事】

12月30日、フェズを出発しイフラン、ミデルトを過ぎた。今日の最終目的地のメルズーガまではあと300キロ、やっと半分来たところだ。

【壮大な景色】

ミデルトの高度はおよそ1500メートル、これからはもう少し登っていく。ミデルトでは木も草も育っていたがこの辺りからだんだんと植物が減ってきている。

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背の低い草が薄らと生えている。このアトラス山脈越えで1番高い辺りで、高度は2000メートルくらいだったと思う。

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連なる山と山の間のくねった道を徐々に登っていく。人工物が一切ない景色は本当に感動する。旅行前に日程表を見た時は移動時間の長さに嫌だなと思っていたが、実際のところ苦は一切なかった。少し肌寒いくらいの気温で、空気はどこまでも澄んでいて、体の中から浄化されていくようだ。

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見えにくいと思うが、写真の右奥あたりに車道が走っている。この辺りは穏やかな山が続いている。

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やがて高度が下がり始めると川が現れ、川沿いを走る。ゴツゴツした山肌が見え始めワイルドさが増す。川が大地を削り、長い時間と共に溝は深く深く、やがて渓谷になっていく。私は行った事がないのだが、グランドキャニオンみたいだと夫と先輩ははしゃいでいた。(数年前に2人で行ったらしい)確かに、この地形の形成の過程はグランドキャニオンと同じだろう。

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【とある商人と出会う】

アトラス山脈の峠越えをしているわけだが、この道は曲がりくねった一本道である。とくにこの辺りは町やお店はほとんどないんだが、時折、側道に車寄せのような駐車スペースがある。

ちょっとした休憩のためか、景色を見る人のためか、大きめのバスも止まっていたりして観光客が景色の写真を撮っていたりする。私たちもハッサン(ドライバーさん)にお願いして、車を止めてもらったりしていた。そうするとハッサンは決まってタバコを吸った。私たち3人はそれぞれ写真を撮ったり、男性はその辺で用を足したりする。

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この写真のように車寄せがある。私が1人で写真を撮っていると、自転車に乗った若者が声をかけてきた。それを見て、近くに居た先輩も私に寄ってきて3人で話を始めた。どこから来たの?日本人か、俺大好きだよ!そんな声掛けから始まったのだが、結局彼はお土産を売るためにここの道を走っているのだった。たわいもない会話の後、彼らが私に見せたのは人工的な加工がしてある水晶のジオードだった。

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この写真のものは無加工なのだが、この表面にギラッギラな色が付けられている。金属をイオン化して表面に吹き付けている技法で、金属蒸着などと言うような覚えがある。この方がブログに載せていたので参考までに。

 ・夫婦そろって石オタク

私たち夫婦の共通の趣味に鉱物がある。私たちが出会う前から、私はもともとパワーストーンやアクセサリー、水晶類のクラスターなんかが好きで、夫は以前から蛍光鉱物(紫外線を当てると強く発光する石)が好きだった。結婚してからはお互いの興味も共有し合い、加速して石を集めている。鉱物業界では世界的に有名なミネラルショーにわざわざ出かけ、荷物がパンパンになるほど石を買ってきたりする。10月のミュンヘンのショーでは月給に近い金額を使ってしまった…

 ・あまりにもしつこい商人

商人が私にその石を見せた時、それは初めて見た物だったので少し驚いた。あまり日本ではジオードに蒸着してあるものは売ってないし、パッと見はこういう石なのかな?と思ったからだ。だが、少し見ればこれが元々はなんの変哲もない水晶のジオードだとわかる。私は、

「綺麗だね、でもいらないよ。」

と、断るのだが、なかなか彼は引き下がらない。一つ100 ディルハム(1100円)位で決して高いものではないのだが、本当に要らない。ここまで分かりやすく着色されてるものは好きじゃない。

何回も断ってるのに、あまりにもしつこくて私は困っていた。この時、夫は少し離れた所にいた。私1人じゃ断り切れないと思い、夫を呼ぼうと声をかけた。そうすると…

「ゆみこー!!!見て〜!!見て〜!!」

手に何かを持ち、満面の笑みで走り寄ってくる夫が見えた。嫌な予感しかしない。

 ・なんで買ってんねん!

案の定…。商人の仲間から同じような石を、夫は既に買っていた。

「見てみて!めっちゃ凄くない!?こんなの見たことないよねー?!」

「……。なんで買ってんねん!」

どう見ても人工でしょ?と言うと、へっ?!っと顔をしていた。ジオード2つを100 ディルハムで買ったらしい。

夫はこの時、これが人工である事を認めていなかった。人工だ!天然だ!という主張を車の中でしあったのを覚えている。だがしかし、その後になって同じような色付きの石を各所で見ることになる。最終的に夫は、その石をドイツに持ち帰ることはしなかった。笑!

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【オアシスが出現】

少し高度が落ちてくると、突如オアシスが現れた。泉性ではなく河川を水源とするオアシスである。

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ただ河川の周りだけが生い茂っている。そしてエアーズロックのような岩がいくつもあった。

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後からGoogleマップで見直してみると、私たちはずっとN13号線を走っていた。緑がある所は川になっているが、この川の名はズィズ川。川沿いをずっと走っている。やがて大きな湖にでたのだが、その少し先がエルラシディアだ。エルラシディアは昔からサハラ砂漠へ行くための拠点となる場所で、空港もあるそうだ。といってもここはトイレ休憩にサービスエリアに寄っただけで、これといった写真はない。

【渓谷の中に街】

今日の最終目的地はアルジェリアにほど近い砂漠、メルズーガだ。砂漠に入る前にエルフードという場所で4wdの車に乗り換える必要があるそう。ちなみにエルラシディアからエルフードは1時間半かからないくらいで、エルフードからメルズーガまでは40分くらいだ。あと2時間、少しだ!

 ・ズアーラ

エルラシディアから30分程だろうか、走った所にフォトスポットがある。

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壮大な景色であった。川が削った谷間がオアシスになっている。地球が割れて中から木が生えているように見える。もしくは木の川か流れる様に見える。写真だと見えにくいのだが、実は結構な高低差があり、見下ろすようにオアシスと街が広がっていた。

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こういう景色を見ると、自然とは実に合理的だなと感じる。ロジカルというか、論理的というか…

そこに緑がある理由、草しか生えない理由、山が尖っている理由、川が曲がっている理由…今日、走った道だけでも様々な景色を見てきた。この時、私は心の底から満たされていたのを写真を見るたびに思い出す。

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