ユミイシマル

好きなもの:新鮮な野菜。猫。歌。空。宇宙。ここでは、思いつくままごちゃ混ぜに書き綴って…

ユミイシマル

好きなもの:新鮮な野菜。猫。歌。空。宇宙。ここでは、思いつくままごちゃ混ぜに書き綴っています。

最近の記事

校長先生、お元気で

お別れの日は来てしまった。 大好きだった彼に、もう会えなくなってしまう。 その”彼”は、明日には施設に入所してしまうからだ。 デイサービスに通っておられた95歳の男性。 その彼の穏やかな仕草の全てに 私たちスタッフは癒され続けた。 仕事柄、 通っておられた方とお別れをすることは よくあることで、 寂しいお別れだって珍しくはない。 でも、今回はどういうわけだか 私だけじゃなくスタッフ皆にとって特別なお別れだった。 こんなにも涙のお別れは 滅多にない、と思う。 ー・ー・

    • ひよちゃんとオレンジ

      ヨシ子さんの庭の梅の木は、 毎年花がほころぶ頃になると 半切りのオレンジがいくつも無造作に挿されていた。 玄関のすぐ左側にある薔薇のアーチをくぐると レンガの小道が車椅子の幅で整えられていて、 右手には人の背丈ほどのかわいい梅の木が植っていた。 その梅の木の奥にヨシ子さんの部屋があったから 梅の花にまじって空を見上げるオレンジは ヨシ子さんのベッドからもよく見えた。 枝えだにブスりブスりと挿されたオレンジ。 優雅なしつらえの庭のはじっこで 一見雑なようにオレンジがいくつ

      • チャイムと叔父さん

        先日のこと。 小学校の前を通りかかった時、 ちょうどキンコンカンとチャイムが鳴り、 校庭にいた児童たちに教室へ戻るようにと伝える 先生の声の放送がかぶさって響き渡った。 私たちの人生は いろんな”チャイム”で区切られていて 随分素直にそれを当たり前と思っている。 チャイムが鳴ったら 自分の個人的な思いには関係なく 何をするべきなのかを 与えられて、 そちらが最優先なのだ。 受け入れているともいないとも考える余地もないまま 人に時間を区切られることに馴染んで、 さらには

        • しみじみと、手を使う

          それは、漬物がきっかけだった。 自分が好む味の漬物をようやく探しあてて 繰り返しその漬物を買ってきては食べていた私は、 ある時 本当はぴったりの味じゃないのに ちょっと我慢している、ということに気がついた。 とても美味しいのだけれど ちょっと甘みが、違ったのだ。 そしてさらに気がついた。 裏の原材料を見る限り、 これは自分で作れると。 すなわち、自分で作れば ちょうどいい味が作れるはずだと。 1960年代終わりがけ生まれの私は、 何でも手でやっていた世代と 何で

        校長先生、お元気で

          プールの日向ぼっこ

          大寒を目前にすでに極寒の午後、 吹きすさぶ風で髪がボサボサになり、 寒さのついでに、いっそのこと遠回りでもしてやれ、と思った。 商店街からの帰り道、 寒さと、髪が荒れるに任せていた私は、 そのうちに半ばヤケクソになって、 いつも右へ折れる地点で、左へ折れた。 見慣れていない景色を眺めながら歩くのは、 それでも少し気持ちが上がる。 漫然と慣れた道を歩くよりも、目を見開くし、 目線も自然に上げるからだろう。 物珍しさ。 新たな発見。 そういうものが、寒さばかりにかかずらって

          プールの日向ぼっこ

          今年は、歌う

          2023年の、とある忘年会でカラオケを熱唱した。 歌ったのがSuperflyの『Beautiful』だったから どうしたって”熱唱”になった。 それをきっかけにして 私は「今年は歌う」と心に決めたのだ。 その日”初めまして”だった人たちから 「すごく胸を打たれた」「感動した」という感想を、 かわるがわるいただいたものだから お世辞でもなんでもそれがすごく嬉しくて、 帰ってすぐさま娘に報告をした。 そして、娘と話しているうちに 歌っている気分がすごく楽しかったし、 聴いて

          何でもない日バンザイ

          ♪なんでもない日、バンザイ♪ ディズニー映画『不思議の国のアリス』の お茶会の歌の歌詞。 今日を”生まれなかった日”と言って、 ”誕生日じゃない日”を祝うパーティーが エンドレスに開かれている。 なんともイカれている場面だけど ♪年がら年中 お祭りだ〜♪と 底抜けに陽気でイカれたあのお茶会にお呼ばれしたい時もある。 「あけましておめでとう」 が飛び交った元旦の昨日は、 誰にも共通の特別な日だった。 年の瀬という慌ただしかった特別な日々は 大晦日という特別な日を挟んで

          何でもない日バンザイ

          年の瀬の干し柿

          「クリスマスが過ぎると、急に慌ただしく感じますよね。」 歯科の受付の女性が、ゴシゴシと年の瀬の磨き方でガラスを拭きながら言った言葉に 私もまったく同感だった。 クリスマス当日を境にして、 デコレーションがしめ縄へと姿を変えたり、 話す話題もお正月料理のことになったり、 年内に、という言葉を聞いたり言ったりするようになる。 もういくつ寝るとお正月、という歌も しっくりくる。 年内最後の休日の今日、 それでは年内にしておきたいことは何かいな?と考えた。 やるべきことではなく、

          年の瀬の干し柿

          赤ちゃん

          近ごろ、私は赤ちゃんに釘づけになる。 エレベーターで、電車の中で、 お店番をしている八百屋さんで。 よその赤ちゃんをジロジロニコニコ見つめる。 ”赤ちゃんは、手の中に夢をギュッと握って生まれてくる。 その手を開いた時、握っていた夢が飛び出していく。 その夢をまたつかまえる旅が、人生。” 20年以上も前の子育て時代に、 そんな夢のある話を聞いたことを思い出す。 無垢な表情で笑う赤ちゃんは オギャアと生まれた時に握ってきた豊かな夢の中にいるのかもしれない。 そして私も、そ

          誕生日と命日

          11月18日はミッキーマウスの誕生日で、今年ミッキーは95歳らしい。 そして11月18日は私の母の命日で、今年で35年になる。 娘たちが小さい頃にディズニーのビデオをいただいたのがきっかけで、 我が家はディズニー好きの家族になった。 中でも次女のミッキーマウス好きはすごくて、 「ミッチー、ミッチー」と、まだ語彙が少ない頃にもう ミッキーマウスを呼ぶようになっていた。 そんなに好きなミッチーの誕生日を知った時、 「あらまあ」と私は思った。 母の命日と同じだったので。 私が

          同僚は外国人 その1

          夕方5時。駅への帰り道の同僚は、グローバルだ。中国人とモンゴル人、ネパール人、そして日本人の私。日本語が共通言語だけれど、みんな他に母国語を持つ人たちと仕事を終えて、最寄り駅まで一緒に歩く。 彼らは、先月から働いているデイサービスのいわば先輩スタッフ。みんな介護職で男性も女性もいるし、年代も20代から40代とバラバラ。日本に来た時期も経緯もそれぞれだ。 外国人のいる職場で働いてみたい、と以前から思っていた。娘が多国籍スタッフとともにバイトをしていた時に、「文化の違いが飛び交

          同僚は外国人 その1

          やってみるから、わかる

          将棋が面白い。最近になって偶然将棋を打つようになり、思いがけずさまざまなことに思いが及んでいる。将棋を知っていて良かった。昭和40年代に生まれた私が子供の頃、大人たちと混じって花札や将棋、ポーカーといった遊びをすることがちょくちょくあった。花札やポーカーのルールはすっかり忘れてしまったが、将棋の方はうろ覚えながら記憶にとどまっていて、それがこのたび生かされている。 最近私は、自分の父親ぐらいの年齢の男性と将棋を指している。看護師として働くデイサービスで、下手でも何でもいいか

          やってみるから、わかる

          You can!

          「She can!」 ニコニコと、友人の夫はそう言った。 友人がトライしていることに対してのコメントだった。 友人は日本人女性で、夫さんは英語圏の白人男性。 短いのに、なんというパワーワードなんだろう。 未来という見えない時間に向かっている時に、疑いのない口調でこう言われたらどんなにか心強いはずだ。 その友人がトライしているのは、自宅での和菓子教室オープン。 日本の伝統和菓子作りに外国人の人気が高まっているらしく、 和菓子作りを習っている彼女も、外国人向けの教室に挑戦するこ

          人づき合いとクレヨン

          クレヨンは他の色と完全には混じらない。 だから隣の色と重なり合う時には 色の順番や塗る力の加減をしないといけない。 幼稚園でお絵描きする幼児になったように 真剣に色を塗っていたら まるで私が色と色の間を取り持っているみたいで 面白くなってきた。 白いA4コピー用紙の4分の1サイズに 思いつくまま落書きのように色塗りをしている。 今朝手にしたのは、百円ショップで買ってきた ミッフィーのクレヨン。 一日ひと塗り。近ごろの朝の日課。 数日前に無性に色塗りがしたくなり 娘が小学

          人づき合いとクレヨン

          再生

          日本の山林のほとんどが植林だなんて、知らなかった。 『原生林』が貴重だということは 要するにそういう意味だったんだ。 屋久島や知床半島の原生林は、 だから大切に保護されているんだ。 航空写真で見る日本の山林のほとんどが 一度は丸裸になったなんてちょっと想像できない。 一度伐採された山が自然の力で再生する。 それは”元の姿ではない”、というマイナスの見方もあるけれど すごい力だと私は思う。 最近アマプラで 『ビッグ・リトル・ファーム」という ドキュメンタリー映画を観た。

          心にお裾分け

          八百屋のお店番をしていたら 若いお父さんと、2歳になりたてぐらいの男の子が 軒先に並べてあるスイカやトマトを眺めているのが見えた。 「こんにちは。触ってもいいですよ」とドアを開けて声をかけたら 「買わないんですけど、いいんですか、、、?」とお父さん。 あんなに興味津々の指先は人生の中でいつまでもあるわけじゃない。 「もちろん。中にもいっぱいあるから見せてあげてください」と 野菜のために冷房を効かせている店内へお招きした。 お散歩の途中で店先の野菜が目に留まったらしい。

          心にお裾分け