1916年について描いた(フリーダ・カーロの日記#1)
フリーダ・カーロの日記の最初の頁は、「1916年について描いた」という表題から始まっています。中央には仰向けに横たわった成人のフリーダの白黒写真があり、それを縁どる写真フレームが描かれています。下段は花輪によるリボンがスカートのひだのように装飾され、上段の左側には白い鳩が羽根を広げています。
1916年とは、フリーダが9歳だった年です。その3年前の1913年、フリーダは6歳の時、右足に小児麻痺を患い自宅で9か月間におよぶ病床生活を余儀なくされました。回復後も足は棒のようにやせ細ったままだったので、周りから「フリーダ、パタ・デ・パロ(棒足フリーダ)」と揶揄され、辛い経験しています。このことは彼女の人格形成において大きく影響を及ぼしたに違いありません。
日記の1頁の写真を撮影したのは、写真家ローラ・アルバレス・ブラボ(1907-1993)です。ローラ・アルバレス・ブラボは、当時メキシコで唯一の女性報道写真家で、フリーダと同様に敢えてシュルレアリスムを自称したことはないにもかかわらず、シュルレアリスムの流れに位置づけられる代表的な女性の一人です。
ローラ・アルバレス・ブラボの写真集はこちらから購入可能。でも、Amazonで見ると高額です。
ほかにも、当時、フリーダとの日々を絵にした画家がいます。メキシコに亡命したシュルレアリスムに位置づけられる女流画家「アリス・ラオン」もその一人です。
2003年、渋谷にあるBunkamuraで、『フリーダ・カーロとその時代―Women Surrealists in Mexico』と題する展覧会が開催されたときに観た彼女の作品は、とても魅力的なものでした。
アリス・ラオンは、フリーダの死後に、彼女に捧げる作品『フリーダ・カーロのバラード』という絵を描いています。濃い青を基調とした背景に、ほんのりと薄暗い明りの灯る夜の街メキシコを描いた作品なのですが、二人はきっと大衆テントで笑い、プルケ酒を飲みながら歩きつづけたのでしょう。コヨアカンの街の夜の風景を、なんとも幻想的に美しく描いています。
メキシコ人作家のカルロス・フエンテスは、フリーダ・カーロの日記初版(未邦訳)の序文で、フリーダは「アカデミックな規制から解放を果たした画家たちを賞賛した」と書いています。さらに、「ブリューゲルの作品にある大衆的謝肉祭の中に描かれたもの、つまり現実性を伴う幻想、真昼の光の下にある内なる闇を愛した」とも。当時、メキシコでは大衆的なテントで様々な風刺的な寸劇が上映され、有名な喜劇役者が数多く誕生した時代でした。
フリーダをはじめ、同時代にメキシコで活躍した女性アーティストの作品を紹介する展覧会『フリーダ・カーロとその時代―Women Surrealists in Mexico』は、フリーダ・カーロをはじめ、マリア・イスキエルド、レメディオ・バロ、レオノーラ・キャリントン、アリス・ラオン、ローラ・アルバレス・ブラボ、カティ・オルナの作品が展示され、当時話題を呼びました。
(以下リンク先にある展示詳細「見どころ」より)
展示会図録は、古書で取引されているようです。
カタログ:フリーダ・カーロとその時代 Women Surrealists in Mexico 出版社:東京新聞
刊行年:2003年
https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4866001143/honnoinfo-22/
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