見出し画像

一番大事なもののために

先ほどの投稿で、私が財政課の係長時代のつらい経験を踏まえ、課長になってから仕事のやり方を改め、長時間勤務を減らした話をご紹介しました。

仕事のやり方を変えることは大変エネルギーのいることで、いろいろと支障が生じる恐れがある中で、数々の勇気ある決断、断腸の思いを経て改革に取り組んできましたが、なぜ私が「仕事よりも命、健康、家族が優先」と心に決め、毅然とした態度でこの問題に取り組むことができたのか、前回書けなかった話を書こうと思います。

私はもともと不器用で、何か一つの物事に集中するとほかのことに手が回らなくなるタイプです。
仕事が忙しい時は仕事一辺倒になりやすく、財政課に異動するまでの職場でも、仕事が面白くて昼夜を問わず仕事に没頭するような時期もありました。
そんな私が財政課に行ったことで、当然狂ったように仕事に没頭し、今までやったことがないほどの過密労働を日常的にこなすようになりました。
予算編成の期間中は毎日午前様。
曜日を問わず1日16時間くらいは働いていたと思います。
妻と言葉を交わすのは朝ご飯のわずかな時間だけ。
そんな生活が1年ほど続いた結果、過密労働をしていた私ではなく、その生活を支えてくれていた妻が倒れてしまったのです。

入院中の妻に会えるのは夜8時まで。
とてもそんな時間には仕事が終わるはずもありません。
しかし、子供もおらず夫婦二人きりの我が家で、私が妻に面会に行かなければ入院生活のストレスを妻はどこで吐き出せばいいのでしょう。
仕事は仕事で、自分の担当業務は自分の責任で何とかしなければいけませんが、夫婦二人しかいない家族の一員として自分以外の誰かに任せることができないこととのダブルブッキングで、私は究極の選択を迫られることになりました。

私は夕方6時に必ず仕事を中断し、病院に面会に行くことにしました。
病院まで小一時間。7時前に病院に着き、8時ぎりぎりまで面会し、食事をとって9時に仕事に戻るという生活を、妻の入院期間中ずっと続けました。
財政課は折しも予算査定の真っ只中。
普通なら毎日、夜中の2時、3時まで作業をしていたところですが、夕方6時から夜9時まで3時間も休憩をとっていれば、同じ作業量をこなそうとすると朝5時、6時までかかってしまい、毎日そんな生活はできません。

そこで不思議なことが起こりました。
1年前まで、毎日2時、3時までかけてやっていた作業が、3時間の休憩を挟んでも2時、3時で終わるようになったのです。
妻の退院後も同じ要領で仕事をさばき、毎日12時くらいには仕事を終えられるようになり、これはすごいことだと思いました。
限られた時間の使い方に優先順位を付けただけで、こんなに効率的に仕事が終わるなんて、今までの残業は何だったんだろうと。

それから私は妻と過ごす時間欲しさに、残業を減らし、休日の出勤を減らし、年末年始も人並みに休むことを前提にスケジュールを組み、その通りに仕事を終わらせることができるようになりました。
一番大事なものを大切にすることは、二番目以降を失うことではありません。
優先順位を付けてメリハリをはっきりさせることで、実は無駄に過ごしていた時間を削ぎ落し、自分のキャパシティの中に落とし込むことができるのです。

私はこの件で仕事よりも家族、健康が大事だと痛感しました。
それは失いかけた時に初めてわかる選択かもしれません。
家庭を顧みず、多忙な仕事に没頭できるのは、家族みんなが健康で仲良く、顧みる必要がないから。
自分の健康に気を遣わずに仕事一辺倒の毎日が過ごせるのは、日々健康で不安がないからということでしょう。

私は、この一件以来、何の不安もなく仕事のことだけを考えていられるほどの絶対的な安定を感じたことはありません。
自分や妻の健康、妻や自分の両親の生活のこと、日々いろいろな心配事が起こります。
仕事は誰かに代わってもらえますが、家庭での役割は誰かに代わってもらうことができません。
万が一、仕事で一度健康を失えば、それから先の人生で自分が好きなことを好きなように楽しむことができなくなりますが、職場はそれを補填も補償もしてくれません。
家族との関係性もしかりです。

仕事は仕事で、一定の役職に就き、お金をもらって仕事をする以上、それなりの責任を果たす必要はありますが、究極の選択を強いられたときに自分の人生すべてを投げ打つほどの価値があるのか、そのために自分の健康や家族との関係性、プライベートの楽しい時間をすべて失ってもいいのか、を常に自分に問いかけながら、仕事以外のこととのバランスを常に考えるようになりました。
不器用だった私にしては格段の進歩です(笑)

私は、妻に感謝をしています。
忙しい私を常に支えてくれているということはもちろんですが、頑健な私と違い体が弱く常に体調万全ではない彼女が私のそばにいることで、私が仕事やほかの何かに完全に没頭してしまうことに対してブレーキをかけてくれています。
そのことで自分のワークライフバランスが保てているのだし、同じように病気やトラブルを抱え、仕事との両立に悩む人の気持ちを理解することができ、そんな環境でも安心して仕事ができる職場づくりに率先して取り組むことができるようになったという意味で、今も妻に感謝し、これからも感謝し続けていくのだと思っています。

★「自治体の“台所”事情“財政が厳しい”ってどういうこと?」について
https://shop.gyosei.jp/products/detail/9885

★日々の雑事はこちらに投稿していますので,ご興味のある方はどうぞ。
https://www.facebook.com/hiroshi.imamura.50

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?