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信じて任せてくれれば

自分たちで工夫して予算よりも安く抑えたからその分は別の事業に回させてほしいって?甘いね。
それは予算要求段階の詰めが甘かったってことだろ?
その時点でわかっていたらそのお金をほかの事業に回せたわけなんだから。
当然,来年度は今回の見直し額がベースになるから,この範囲で予算要求してくれよな。
#ジブリで学ぶ自治体財政

皆さん,財政課からこんな仕打ちを受けていませんか。
最近の記事でも対してこんなコメントをいただきました。
「現場の工夫や努力により安く抑えると、来年も同じ事が出来る訳ではないにもかかわらず予算を削られてしまうのを防ぐ方法はないものでしょうか?
改善する意欲を削がれてしまいます。
苦労して浮かせた予算の一部を次年度に自由度の高い用途で活用出来ると現場のモチベーションは高まるし、良い方向に向かうと思うのですが、良い方法はないでしょうか?」

この問題については以前「予算が余るのは悪いこと?」で書きました。


予算を執行段階の工夫で節減できたことを以て次年度以降もその節減を前提とした予算計上とする「決算至上主義」が「囲い込み」や「使い切り」などの悪弊を生むことについては前述「予算が余るのは悪いこと?」で述べた通りです。
この「囲い込み」「使い切り」を排し,必要な予算を必要なだけ計上し,予算計上時でも執行時でも状況に応じて柔軟に対応できるのが「枠配分予算」です。
枠配分予算は,配分された財源の範囲内で現場の創意工夫により必要な施策事業に自ら財源を配分することができますので,予算計上時に同じ枠の中でAという事業の経費を節減しBという事業に充てることを自分たちで判断できます。
なので,同じ枠の中にあるB事業の予算を拡充したいという自分たちの意欲でもって,A事業の予算に切り込み,自分たちで主体的に事業を見直していくことが可能です。
また,枠配分予算制度は現場の裁量を認めていることから予算執行時にA事業の予算の余りをB事業に使う場合の財政課との予算流用協議についてもハードルを下げることで当年度にB事業に充当することも可能です。

また,これも「予算が余るのは悪いこと?」で書きましたが,福岡市では、予算の使い切りをやめ、決算剰余金を確保することを推奨するために「節約インセンティブ」という制度を持っています。
職員の創意工夫による支出予算の執行節減、歳入の確保などにより決算剰余金の増額に貢献した場合は、そのうち一定の額をその工夫を行った現場が次年度に自由に使える財源として予算措置するという仕組みです。
計上された予算からさらに工夫して、実際の支出を必要最小限の額に抑える努力を、現場自らが意欲的に行えるようにすることで、財政課と現場が一体となった効率的な予算の編成と執行が行えるというわけです。
この制度があれば予算執行で節減した分を次年度予算に充当することが可能ですが,機動的な対応を図るうえでは流用により当年度の別事業に充てるという選択肢が有効な場合もありますので,枠配分予算と節約インセンティブ制度の併用が望ましいと考えます。

現場での裁量による執行節減額の他の事業への充当の前提となるのが,予算査定における前年度決算額採用の禁止と予算執行時の流用の柔軟化です。
次年度の枠配分額を決めるにあたり前年度にいくら使ったかを前提にすれば,執行額が低ければ配分額が低くなるため現場では執行額を可能な限り高く保持しようとする気持ちが強くなり,結果的に予算の「使い切り」が起こります。
「使い切り」は執行額を節減しより効率的な予算執行を行おうとする現場の意欲を削いでしまいますし,そもそも市民から預かった貴重な財源を必要性,緊急性の低いものにまで充ててしまうことにつながりますので厳しい財政状況のなかでは避けなければなりません。
福岡市では,これを防ぐために枠配分額の算定の基礎は前年度予算額とし決算額は採用しないことにしています。
また,不測の事態に備え,少しずつ自分たちの予算に余裕を持たせる「囲い込み」を各課が行うことで全体として必要以上の予算が必要になってしまうという弊害を排するために,予算の編成過程で枠予算として現場の裁量を認めたものについては,その執行にあたっての流用についても財政課との合議を可能な限り簡素化し,現場に権限を委ねています。
そうすることで,予算を効率的に執行し,与えられた権限と財源の範囲で可能な限り自分たちのパフォーマンスを高めようという意欲がわいてくるのです。

上記の二つは,実は枠配分予算を採用しなくても財政課がやろうと思えばできることです。
個別の事業の積算根拠にこだわることなく,現場の創意工夫を用いれば与えた財源で最大の効果を発揮してくれると信じて任せること。
この現場への信頼に基づく権限の委譲が枠配分予算の本質です。
まずは,枠配分予算そのものを採用する前に,予算査定における決算額採用の禁止と,予算執行時の流用の柔軟化,この二点だけでも先行してやってみることで現場と財政課の信頼関係を構築することができるのではないかと思います。

いきなり枠配分予算は難しいとお考えの財政課の皆さん,せっかく現場が自分たちで事業のやり方を見直し、経費を節減しようと意欲を燃やしているのですから、そのエネルギーにうまく便乗してはいかがですか。
まさかまだ「予算が余るとはけしからん」なんて現場を叱りつけてないでしょうね?
あるいは,前年度決算額をベースに予算を査定して,現場の改革モチベーションを下げてないですか?

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