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適切な分担と連携

「例の件は頼んだぜ。あっちの件は俺がうまくやっとくから」
「アレはどうする?どっちの件にも微妙に絡むが分担は?」
「そこはお互い『連携』していくってことだろうな」
#ジブリで学ぶ自治体財政

前回「新しいことをしたくない」の末尾に「適切な分担と連携で市民の福祉向上を図ることが自治体職員の本来の使命」と書きました。

しかし皆さんは「分担」と「連携」ってどんな風に理解していますか?
私は,ずいぶん昔になりますが,Facebookにこんな投稿をしています。

「連携」:「連絡を密に取り合って,一つの目的のために一緒に物事をすること。」
最近,仕事でもプライベートでも,いろんな分野,組織,立場の方とお会いすることが増え,そういう中で「ぜひ『連携』しましょう!」というお言葉をいただいたり,また私自身もそういう言葉を発したりしています。
が,実際に「連携」に至るか,というとなかなかそうならないことの方が多く,また「連携」に至ったつもりでも,実はただの「分担」だったりすることがあるなあ,ということを最近ひしひしと感じ,悶々したり反省したりしています。
皆さん,ちゃんと「連携」できていますか?

「連携しましょう!」という言葉を発しても,それが実際の「連携」に至らないのは,その言葉を発する時点で,「連携」の目的や対象が具体的でなく,その後も具体化に向けた動きをとろうとしないことが原因です。
まあ,そうする必要がないのであれば社交辞令として人畜無害ではありますが,どうせ実現しない空虚な言葉を吐くくらいなら,言わないでおくか,あるいは「具体的に何をどう連携しましょうか?」と投げかけることができる,あるいはそういう提案を受ける自分でありたいな,と思います。
「連携」は一つの目的のために一緒に物事をすること。
まだ訓練が足りていなくて,ただの社交辞令に終わっている皆さん,ぜひ連携の「目的」と,その実現のために一緒に行う「物事」を,具体的な連携アイデアとして共有しましょう。

「連携」のもう一つの懸念は,ただの「分担」に終わること。
最近,とある方から手厳しく指導され,反省することしきりです。
違う立場,組織の者同士で「連携」するとき,当然ながら互いの得意分野,強みを生かすべく,またそれぞれの違ったバックボーンを尊重すべく,役割や作業の「分担」を決めます。
「分担」は二人以上の個人が物事を行う上で必要な機能整理ですが,この「分担」が,ややもするとお互いの権限,責任の領域のみならず,興味関心の領域まで定義してしまい,相手方の分担する領域での出来事や課題に対して「これは向こうの分担だから」と,自分自身での関心を抑え,少し距離を置いた対応をしてしまうことってないですか?

もちろん,分担することで互いの持ち分に責任を持って対応することは必要ですが,大事なことは「一つの目的のために一緒に物事をすること。」
分担することで,それが二つの目的に分かれたり,二つの物事になってしまって,それぞれが別々に実施されたりしてしまっては,まったく「連携」の意味がありません。
「分担」によるポテンヒットや力の分散という弊害を防ぐためには,「連絡を密に取り合って」「一つの目的のために」「一緒に物事をする」という「連携」の本来の意義を常に踏まえながら行動することが大事です。

忙しくても,面倒でも,わかり合えていると思っている仲間同士でも,「連絡を密に取り合って」自分たちが目指している目的の共有,一緒になって進めている物事の現状や課題の共有を常に行い,そのうえで互いの強みや個性を生かした役割,作業分担にどう落とし込むか,を共有していくことが必要だな,と改めて感じました。
「連携」に関する考察,これまで実践できていなかった反省も含め,ここに決意表明しておきます。

以上が過去の投稿です。
特に自治体職員でありがちなのは,後半で示した「分担」による「分断」です。
この事例で数年前に私が手厳しく指導されたのは,私の所属で新たに始めた事業が量,質ともに膨れ上がり手に負えなくなったので,その新規事業の部分を担う新しい組織を作り,分担することとしたときのこと。
分担によって,私の所属は増え続ける新規事業関連業務からは解放されました。
新たな組織はそれなりに大変そうでしたが,新規事業に注力すればいいしそのためのスタッフを確保しているので業務は回っているように見えました。
しかしある日,私はある人からこう尋ねられます。
「新しい組織との連携はうまくいっていますか」
「うまく分担できています。おかげでこちらは仕事が楽になりました」
「向こうが今どんな状態か知っていますか」
「いえ,分担してからはあちらに任せていますので」
「それはただの分担であって,連携ではないのではないですか」

私はその人から,その新規事業が大きな壁にぶち当たり,にっちもさっちもいかなくなっていることを聞かされました。
その新規事業は新しい組織の所管ですがもともと私の所属の業務分野であり,その成否は私の所属の業務分野全体の成否でもありましたが,私も,私の上司,部下,同僚も,誰一人,その新規事業がそのような危機的な状況であることを知らなかったのです。
役割を分担し,自分の担当領域に注力するのは組織人なら当たり前の話ですが,分担によってその境界線の外側についての関心が薄れ,普段の情報収集や発信,交流がおぼつかなくなる,そんな意識の変化によって,もともと同じ所属でやっていた時には当たり前にできていた,連絡を密に取り合って,一つの目的のために一緒に物事をする「連携」が失われてしまっていたことを大変厳しく指導された,というのが顛末です。

「分担」は,日ごろの意思疎通を欠くことで「分断」を生みます。
分担が分断を生まないためには,「連絡を密に取り合って,一つの目的のために一緒に物事をする」という「連携」の本質を常に意識し,私のような「分断の過ち」を犯さないよう心がけるしかありません。
ここで示す例のようにもともとは同じ所属の業務であったのであれば「一つの目的のため」ということは理解しやすいですが,自治体内の多岐にわたる業務を所管する様々な所属の連携であっても同じこと。
私たち自治体職員の業務はすべて最後にはった一つの目的に収れんされるはず。
総合計画に示す私たちのまちの将来像の実現こそが究極の目的であり,すべての施策事業はその実現に紐づけられると考え,視座を一段あげた情報共有,意思疎通による組織間,職員間の対話を心がけてほしいと思います。

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