それってホントにうまくいく?
優先順位の話に派生して、自治体の施策事業がどんな風に選択されていくか、その過程や自治体組織内での役割分担をつらつらと書かせていただきましたが、皆さん、絶対聞きたいこと、ありますよね?
財政課は予算編成の中で個々の施策事業の優先順位付けはしない。
それはマスタープランを担当する企画部門がやる。
じゃあ、財政課は何をしてるんだ。
お前は9年も財政課にいてどんな査定をしてたんだ、というツッコミです。
それは「個別撃破」です、とさらっと書きましたが、少し具体的にお話すると、その事業が予算計上するに足るものかを一つ一つ吟味し、費用を精査するのが私たちの仕事でした。
「予算計上するに足るもの」とはまた漠たる物言いですが、一言でいうと「それってホントにうまくいく?」という問いかけに対して、現場がどれだけ確かな回答を持っているか、ということだと思います。
なけなしの金をはたいて買ったおしゃれな服、実は自分のサイズに合わなかったらどうしますか?
買った直後に流行が廃れて外へ着て行けなくなったらどうしますか?
ちょっと奮発して買った電化製品、意外にスペックが低くて思うような使い勝手でなかったらどうしますか?
せっかく使ったお金がもったいないですよね。
なぜもったいないのか。それは期待外れだからです。
お金を払って得られると思った価値が得られないからです。
なので、私たち財政課は常に予算を要求する現場に問いかけます。
「何がどうなることを期待してるの?」
その事業でどんなことを実現しようとしているのかを尋ねます。
「それって、誰が求めてるの?」
実現しようとしていることに社会のニーズがあるかを尋ねます。
ニーズがなければどんな立派なハコモノも無用の長物です。
「それって、俺たちがやらなきゃいけないの?」
ニーズがあっても、税金を使って公共がやるかどうかは別物です。
「で、それってホントにうまくいく?」
最後はこの問いになります。
「うまくいく」というのは期待通りの成果が得られるということ。
期待している成果とは何がどうなることなのか。
定義しておかないと、その変化したことを測定することができないと、うまくいったかどうかわかりません。
「うまくいく」ためには、その事業で直接的に働きかけるものが、どう社会に波及していくかその展開について論理的な筋道が必要です。
風が吹けば桶屋が儲かるというような偶然やこじつけの三段論法は通じません。
「うまくいく」ためには、関係者の理解や協力も必要です。
世の中は自分ひとりの力では決して動きません。
関係者の合意形成は見込めるか、必要なパートナーの協力の意思はどうか、必要なタイミングで本当に動いてくれそうか、期待通りのお金を出してくれそうか、しっかり見極めなければいけません。
縷々述べましたが、予算査定は「期待通りの成果が得られるかどうか」が大きな判断要素になります。
そして、ある程度の成果が得られるという見込みの元で、その成果に対して、費用をいかに抑えて効率的に実施していくかという、金額精査のステージに突入するのです。
予算要求をする側の皆さん。「うまくいく」ことを立証しましょう。
作り話ではないリアルな証拠と確実なロジック、周囲の協力など、これだったらうまくいきそうだなと財政課が信じ込む材料をたくさん集めておけば怖いものはありません。
予算査定する財政課の皆さん。
「うまくいかない」と決めつけてアラ探しをするのはやめましょう。
しっかり話を聞き「うまくいく」と信じることができない点をきちんと指摘することで、事業の内容ややり方の穴が見えてきます。
その穴をふさいであげることでうまくいくのであれば、一緒に考えて、一緒にふさいであげてください。
何よりも「うまくいく」ための絶対的な必要条件は、掲げた成果を得られるまで完遂する「やる気」です。
想定してなかった困難に遭遇しても、それを乗り越え、あるいは工夫して別の道を探り、他者の協力を得て、組織の力を結集し、期待していた成果を確実に得る。
その気概がなければ、実際にやり遂げる能力が組織に備わっていたとしても、どんな高額な予算も豚に真珠です。
彼らの「やる気」を削ぎ、他の事業にまで影響してしまうようなことがないよう、気を付けましょう。
財政課は予算を付けるところで終わりですが、ついた予算を使って市民にサービスを提供するのは現場ですから。
余談ですが、予算要求する現場の担当者の熱意にほだされて予算をつけたら、翌年度の人事異動で担当者が異動し、事業自体が骨抜きになってしまうという悲劇をよく聞きます。
私もそういう期待を裏切られたり、予算要求する立場として財政課を裏切ったりしてきましたが、そういう悲劇が起こる背景としての属人的な仕事のやり方はよくないと反省することしきりです。
★「自治体の“台所”事情“財政が厳しい”ってどういうこと?」について
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