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冨樫由美子
2022年11月1日 08:37
「夏、架空の」美しい夕焼けだけを数へつつ海辺の町に夏を過ごしぬ黄昏の匂ひをまとふ手紙には虹のやうなる誤字ひとつありゆふやみが文庫の文字を浸すころ深紫の栞をはさむ潮騒を聴いて眠らな潮騒はたれのためでもない子守唄貝殻を拾つてあげる信用のできない愛や恋のかはりにここまでを会ひに来る人などゐない その安らぎと孤独と雨と雨の日は誰にともなく書きたくて帽子かむれる少女の絵葉書※