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『ハンチバック』世界はひとつにならない

決して後味の良い話では無いと思う。
でも、私はこれからも何度か、その物語を手に取りたいと思う気がする。

並ぶ文字はとても軽快で、
それでいて重い。
薄笑いを浮かべながら、ボディを殴り付けてくるかのような。

障害者は弱者であると、
弱者はか弱い存在であると、
そんな自身の考えが傲慢だったと知る。

背骨の曲がった私が、背骨の真っ直ぐな者より精神曲がっていないはずないだろ。
というような一文があり、ハッとした。

当たり前だが、
皆たった一人の個性を持った人間なのだ。

健常者の狂気の沙汰に憧れるほど、
"日常"を疎ましく思いながら生きる主人公。

皮肉なことに
彼女に宿る凶暴性が、
障害者と健常者の境界を曖昧にさせていく。

ラストも秀逸。精神を抉ってくる。

誰かの感想にあった、
"持たない人の苦しみを、持っている人は理解しない"
という言葉が刺さる。

誰が何を持っているだろう。
想像以上に、世界はひとつにならない。

私たちは、知らないことが多すぎる。

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