フランス人を日本酒テイスティングに持ち込むには?

きのうは働くレストランのブティックで、日本酒のテイスティング会でした。
結局日本酒カードは全くもって良いアイディアが浮かばず(次回に向けて練ります!)、口頭での説明だけにしましたが、
それでもある程度のまとまった時間を使って、好きにプレゼンテーション出来るというレストランでは中々実現しない環境で、色々とトライしてみました。

まずは、どんなお客様にも第一声として「NIHONSHUのテイスティングをしませんか?」と伝えること。
SAKEという世界的な一般用語ではなく、日本で作られた醸造酒、NIHONSHUという誇るべき名前に価値を持たせるために、誰一人フランス人が知らない名前をまずは自分が率先して使うこと。
これが本来の目的ですが、この作戦は当分手放さないでしょう。きのうも莫大な効果を発揮しました。
SAKEというと蒸留酒、ウォッカみたいにクイっと飲むもの‥そんな誤った情報が根付くフランスに、小春日和の午後、「お客様、よかったらSAKEをテイスティングしませんか?」なんて言ったら、このアジア人は一体昼間からなにを言っているのか、という視線を隠すスマイルを向けながら「結構です」という言葉を放たれるだけです。(8年かけて経験済みです笑)

先入観というのは手強いもので、挽回の余地を作ることすら難しいのが現実。
それが、最初の入り口がNIHONSHUという得体の知れない名前だと、
好奇心が私たちの100倍は強いだろうフランス人たちは、「え?何て言った?」「それは飲み物か?食べ物か?」と聞き返してくれます。
会話が続くのです。会話が続けばこっちのもの!
お米で作られた日本の醸造酒ですよ〜ワインと同じ、食事と一緒に楽しむお酒です!ワイングラスでテイスティング出来ますよ〜
「じゃあちょっとだけね!」きのうも何度この言葉をいただいたことか‥
もしかしたら、NIHONSHUという言葉に一番助けられているのは、私かもしれないな、だなんて思っています。
それから生産年。

これによって味わいに個性が出るワインと同じように、日本酒にも生産年は関係しているのか、よく聞かれる質問のうちの一つです。
これについては、日本酒を知ったばかりのお客様に向けては、ワインほどではないとだけ簡易的に伝えます。
その代わりに、日本酒には温度による幅広さがあると。
50度まで上げたりしますよ、と目を丸くするフランス人たちに徳利を見せながら説明します。
ワインに生産年で考えるという魅力があるように、日本酒には温度帯の幅広さで、今日用意した食事とのバランスに近付けていけますよ!と。
その飲み物だけにある特徴を、ワインという誰もが絶大に信頼を置いているものと並べて説明する。これは効果的に機能します。

それと、新しいチャレンジとして、
きのうは麹米を持参しました!
これは恐らくきのうのお客様全員が初めて目にしたのではないでしょうか。

「ワインの元となるブドウは甘いですよね。だからすぐにイーストが糖分をアルコールに変えられます。
日本酒の元となるお米は、そのままでは甘くないですよね。
だからこの麹を使ってまずはお米を甘くしてあげてから、イーストにアルコール発酵してもらう。二つの発酵がこの一瓶の中に合わさっているんです。

日本の美食は麹がなければ始まらない。
フランスでは地元のスーパーでも手に入るようになったお醤油も、お味噌も麹が元なんです。
日本の食事を支えているのがこの一粒一粒を覆っている麹なんです。」

日本の食文化をフランス人に紹介するときに、
麹の紹介から始めることはすでに私の武器の一つでしたが、
麹を見せ、触り、香ってもらいながら美食と繋げる方法は初実践でした。
評判はかなり良く、手応えを感じました。
これからは私の良き相方として活躍してくれそうです!
与えて頂く機会を通して、どんな説明がフランス人のハートを惹きつけることが出来るのか、その可能性に挑戦したのがきのうでした。

もちろん、飲んでもらえればこっちのもの!
蔵人さんたちが毎年私たちに届けてくれる美味しい酒が、ハートを惹きつける理由の99.9%を担っていることは重々承知しています。
そこに存在するだろうわずかな隙間にあやかって、
私には何ができるのか、これからも挑戦を続けていきます。

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