N子さん、ネット進出を果たす
話し相手が欲しい!
人は死ぬ間際までコミュニケーションを求める生き物だ、と以前叔父を看取る手伝いをした時実感したし、父も死ぬ前日まで「看護師が隣のベッドの人にばかり話しかける…」とヤキモチを焼いていた(ほぼ毎日家族の誰かが見舞いに行っていたというのに…!)。
N子さんは家族と暮らしていた頃は「一人になりたい」とよく言っていたが、いざサ高住での一人暮らしが始まると誰かとコミュニケーションを取りたい欲求が出てきた。
もちろんサ高住のスタッフたちは安否確認を兼ねて朝晩声をかけてくれるし、彼女の行動をさり気なく見守ってくれている。私も他の人だと難しい書類や金銭面の用事を兼ねて定期的に様子を見がてら訪問し、彼女の話し相手をしている。
しかし、新型コロナの影響もあって入居者向けのイベントは減り、地域の集まりなども中止や延期が相次いでいるため、N子さんが地元の知り合いを作ろうにもチャンス自体ない状態に陥っていた。
実家にいた頃は読書会で議論を交わすことを楽しみにしていたような人だけに、「世間話だけじゃつまらない」「こっちでも読書会とかに参加したい」と欲求不満を訴えるようになってきた。
まずは情報収集から
さて、困った。日常生活の情報は何とか対応できるが、何しろ母の転居で初めて地元の地域包括支援センターの場所を知ったくらいだ。おまけに母の要望に合う集まりを探すのは地元ではなかなか難しいかもしれない。
そこでネットや自治体の広報誌などで情報を収集し、感染症対策をしながら地元の中央図書館や地域活動支援センターなどへN子さんを連れて行った。
担当のケアマネさんにも事情を話し、地域の高齢者向けの情報を集めてもらった。
幸いN子さんも歩いていける場所にあるコミュニティカフェのオーナーさんとは話が合った。ところがそこはちょうど翌週から夏休みに入り、しばらくお休みとなってしまった。
他の集まりも時間や場所などの条件が合わず、何より新型コロナの流行拡大という大きな壁が新たな出会いを妨げた。
オフラインがダメならオンラインでしょ!
「新型コロナめ!」と本人も悔しがるが、81歳という年齢もあり感染リスクは無視できない。
「私機械音痴だから無理よ!」とずっとネットを避けていたN子さんだが、背に腹は代えられないと観念したのか、「文章を書いたらネットに投稿してくれない?」と言い出した。
かねてから「絶対N子さんの経験を知りたい人はいるから、ブログとか書いたら?」「発達障害の子どもを育てている親御さん、結構Twitterのフォロワーさんにいるよ!」と声をかけてもなびかなかったのは、同居していた家族への気兼ねもだが、とにかく食わず嫌いというのが一番の理由だったようだ。
運良く父の形見のらくらくスマホでテザリングすればノートPCもネットに繋げられる。早速格安simを挿して彼女の部屋からもネット利用できる環境を整備した。
幸い以前PCで文章を打ったり友人たちとメールでやり取りする経験はあるため、N子さんがメールソフトに文章を入力→私が確認・投稿→最終稿をメールで送信→私が文書として保存という方式で文章を保存することにした(彼女に文書保存の方法を教えるのは難しいと判断)。
ブログサイトやTwitter画面を見せながら設定、投稿すると本人も「誰か見てくれないかなぁ」「感想聞きたいなぁ」ワクワクしてきた様子。
あまり私の母だということを知られたくないようだが、あまり反応がないとそれはそれで「こんな事書いても意味ないんじゃない?」となるので、こちらでも時折彼女の投稿などのリンクを貼ることにした。
オンライン講座も興味を示したので、著名な心理療法の本を読む講座を紹介したら「申し込んで欲しい」と頼まれた。
コロナ禍と昨今の暑さで外出もままならないので、ネットの世界にも慣れて欲しいところである。
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