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『かもめ食堂』と真面目にコツコツの話
去年、prime videoで映画を観てから、私はすっかり『かもめ食堂』のファンになりました。映画は二度観たし、小説を読むのは今回で三度目。
最近、フィンランド関連の本を読んだり、フィンランドの街や自然の動画を観たりと、何かとフィンランドに関心を持つようになりましたが、それは『かもめ食堂』の影響を大きく受けているからでしょう。
『かもめ食堂』のあらすじはこちら。
ヘルシンキの街角にある「かもめ食堂」。日本人女性のサチエが店主をつとめるその食堂の看板メニューは、彼女が心をこめて握る「おにぎり」。けれどもお客といえば、日本おたくの青年トンミひとり。ある日そこへ、訳あり気な日本人女性、ミドリとマサコがやってきて、店を手伝うことになり……。普通だけどおかしな人々が織り成す、幸福な物語。
この小説を読むたびにズドンと胸に刺さる言葉があります。
どこにいても、その人次第なんですよ。その人がどうするかが問題なんです。しゃんとした人は、どんなところでもしゃんとしていて、だめな人はどこに行ってもだめなんですよ。
『かもめ食堂』の主人公、サチエの言葉です。
若い頃「ここではないどこかに私がもっと輝ける場所がある!」と、ふわふわ職を変えていた自分にとても刺さります……。ここではないどこかではなく、まずここで輝ける努力をしなさい、と過去の私に言いたい……。
サチエはこのセリフ通り、しゃんとしているのです。フィンランドのヘルシンキで一人始めた食堂にお客さんがまったく入らなくても、サチエは宣伝したりアピールしたりしません。看板メニューのおにぎりが不人気でも、フィンランド人の口に合うようなアレンジはせず、鮭、おかか、昆布のメニューを貫きます(一応試作はしますが)。
サチエには自分の決めたスタイルがあるからです。焦らず腐らず、今やるべきことを淡々とこなすのです。
「人生すべて修行」
というお父様の教えが身についているのもあるのでしょう。
そのサチエの姿勢があるからこそ、のちのかもめ食堂の繁盛につながっていくのだろうなぁと思います。
私は趣味でほそぼそと小説や詩を書き、ネットにぽつぽつ公開していますが、もっと読まれるためにはスタイルを変えるべきなのではないかと悩んでいた時期がありました。
タイトルを長文にしようか。
人気ジャンル(異世界もの、ラブコメ等)を書こうか。
詩はもっとわかりやすくストレートな表現で書こうか。
でもそれらは私の書きたいものからは遠く離れていました。もっと読まれたいと思うのは決して悪いことではありません。書いてネットに投稿しているのなら、誰しもが思うことでしょう。
しかし、そのために自分の書きたいものを無視してしまっては、創作を楽しめなくなってしまうような気がしました。
「なんとかなりますよ。まじめにやっていれば。どんなお店だって最初っから、どーんと人が入るわけじゃありません。正直にやっていれば、ちゃんとどうにかなるんです」
これもサチエの言葉です。結局はそうだよな、と思いました。読まれるための努力をする前に、より良い作品をつくる努力をした方がいい。だから私もサチエを見習ってまじめにコツコツ書き続けることにしました。
優しく包まれるようなゆったりとした空気感の中にサチエの芯の強さが光る『かもめ食堂』。
迷いそうになったとき、穏やかな気持ちになりたいとき、自然とまたこの本を手に取っている自分が浮かびます。
あぁ、感想文を書いてたらまた映画も見たくなってきました。
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