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自分に何ができるのか

仕事を失うことになり、今後の不安と家族たちに対する申し訳なさが強まった。

私は生活しているだけで人よりお金がかかる。
福祉用具も補助があっても元値が高いし、ヘルパーや訪問看護、訪問リハビリなどのサービスも必要だ。

それを考えると、私が仕事をせず生きるのは家族の負担でしかないのではないか。
仕事を失って、自尊心が傷ついた私の思考ではそういう風にしか思えなかった。

自分にできることは何か。
それまでやってきた仕事は専門職でもなんでもなく、一般の事務。
さらに米軍基地という特殊な環境下での仕事だったので、米軍基地以外の場所で活かせるスキルは私にはなかった。

ただ唯一、ずっと関わり続けていたのは英語だ。
英語をネイティブ並みに話せるかと言ったら、まったくそのレベルからはかけ離れているが、読み書きはそれなりに経験してきたので少しは出来ると思っていた。

仕事をするとしても、ヘルパーを利用しての就労は制度的に認められていないし(これは非常におかしな制度だと思うが)、通勤で毎日出かけるのも体力的に厳しくなっていたので、在宅でできる英語を使う仕事に絞ってみることにした。

そこで辿りついたのが翻訳という仕事。
調べてみると、翻訳のお仕事は会社に出社して社内での翻訳業務を担うこともあれば、フリーランスで翻訳会社に登録し、翻訳会社から仕事を受けて翻訳するというパターンがあった。
後者の場合はもちろん在宅で仕事が出来るので、私も頑張れば出来るかもしれないという可能性が出てきた。

でも私にプロとして翻訳できるほどのスキルはあるのか?
早速、英字新聞などをネットで探し、一度訳せるか試してみたが、プロのように自然に且つ原文に忠実に訳すことは難しかった。

色々とリサーチしていると、翻訳のオンライン講座をいくつか見つけた。
今でこそコロナの影響でオンラインで学べる講座が爆発的に増えたが、その当時はまだオンライン講座自体が少なかったので、オンラインで学べる翻訳講座があることがとても嬉しかった。

一番勉強になりそうで費用もそこまで高くない講座を選び、主人の同意のもと受ける決心をした。

翻訳は自分が予想していた以上に難しく、1つの課題を終えるのにすごく時間がかかった。
英語ではなんとなく理解できるのだが、それを正確に適切に日本語に変換するのが難しい。
自分の語彙力のなさと英文法の知識不足を痛感した。

それでも一つの課題を仕上げた時の達成感は気持ちよく、いつの間にか失業からの気分の落ち込みも回復し、わりと充実した日々を送れるようになった。

ただあまりにも翻訳に集中し、身体を動かさないまま同じ姿勢で過ごすことが多くなり、足の浮腫みが悪化してしまった。
元々血流が悪く浮腫んでいたのに、益々動かさなくなってしまい、パンパンに腫れあがった足になってしまった。

ある日の朝、足の甲にわずかな痛みを感じた。
お昼に父親が家に来て、足のマッサージをしてくれたのだが、少し押されるだけで痛い。
おかしいなとおもいつつも、その日の午後も翻訳に没頭していた。

すると夕方ごろから寒気を感じ、足の痛みも強くなってきた。
その後、身体がとてもだるくなり、真夏にも関わらず毛布にくるまってもガタガタ震えるほどの寒気になり、熱も出てきてしまった。
またやってしまった・・・。

蜂窩織炎(ほうかしきえん)という菌が体中に入り込み炎症を引き起こす病気に私は何度かかかっており、今回もそれにかかってしまったようだった。
早く処置しなければ、どんどん悪化するのを知っていたので、主人に伝え、すぐに病院に行きたいから早く帰って来てくれと頼んだ。
忙しいのはわかっていたが、今回の悪寒とだるさは尋常ではなかった。
足も激痛で失神しそうなほどだった。

つづく

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