見出し画像

うららかな春とやさしさ

子を持つようになると


見ず知らずの方の

あたたかいやさしさに
触れたり

救われることがある。



はやいもので

ふたりの子供たちは
9歳と7歳になった。



今日は
いまから6年ほど前の
おはなしを。






当時2人目の出産を気に
仕事を退職した。


同時に、保育園の利用基準を
満たさないために長男は3月で
退園することになった。


そして

当時、夫はいわゆる
"ブラック企業"に
勤めていた。

毎日多忙、
家族で過ごす時間はとても
わずかなものだった。


朝起きてから
夜寝かしつけるまで
ずっと3人。


そのうちに、夫は長期出張となり、
週末土曜日の夜から日曜日だけ
帰ってくるようになり、




体力が有り余る2歳児、
生まれてまもない0歳児と


まいにち3人で
24時間共に過ごすことに
なったのだ。




長男は絶賛イヤイヤ期。

日に日に知恵もついてきた。

食事は見た目で判断し、 
偏食に拍車がかかってきた。


妹をとても可愛がる一方、
言葉で表現できない分
叩いたりもした。




一瞬の隙にゴミ出しに出れば、

むすこに玄関の鍵を
閉められてしまい、

わたしは家の外に
閉め出されて

大騒ぎになったこともある。


あげたらキリがないほど、

消えてしまいたくなるほど
大変な毎日だった。

覚悟はしたものの、
実際に体験したら

人生でいちばん、といっていいほど
追い詰められた時期でもあった。

それでも日にまして
いちばん成長が著しい時期を

ずっとそばで
見守ることができたのは
ありがたく、ふとした瞬間に
しあわせを感じていた。

みんなも頑張って
子育てしている…!と

なんとか自分を
奮い立たせていた。





そんな風に思う反面、
すっかり心は折れて、
育児に対して自信も無くなっていた。




そんな
うららかな日差しがそそぐ
ある春の日のこと。


午前中ずっと
外を散歩しながら遊んで歩いていた。


そのうちに
むすこはくたびれてしまい、

昼時になってもなかなか足が
家に向かわなくなった。


0歳児もぐずり出す頃。

いくら声をかけても


しゃがみ込んでずっと朽ちた木を
枝でつつき、いじっていた。


わたしはお昼寝までの
時間配分を頭で描いていたので


気持ちも焦っていた。


お昼寝してもらわないと、

自分もひと息できない…
夜までわたしの体力も持たない…

リズムが崩れると
癇癪を起こされてしまう

どうしよう…


と、途方にくれていると


しばらくすると

庭の手入れをしていた
近所のおばぁちゃんが、



困っている私を見かねたのか

一緒に声をかけてくれました。
 


「いいお天気だね〜」

「そろそろお昼ごはんのじかんだね」

なんてむすこの気を引いてくれた。




ようやく家に向かって
ちょこちょこと
歩き出したとき

おばぁちゃんが


「これ、お浸しにして
辛子醤油つけて食べると
美味しいのよ〜
良かったら食べてみない⁇」と、



綺麗に摘みとった菜の花を
私に差し出してくれた。


おそらくおばぁちゃんが自宅用に
摘んでいたもの。
  

そして、

「これもよかったらどうぞ♩」


と、もう片方の手に持っていた
綺麗に咲いた水仙の花を

むすこに持たせてくれました。

綺麗に茎も整えてあったので

おばぁちゃんが家に飾ろうと
持っていたものかなぁ。

お礼を行って、なんとか
無事に帰宅できた。


おばぁちゃんが
神さまのようだった。


すぐに水仙を水にさした。


菜の花はスーパーに行っても
買わないうえに、

自分で調理するには
無縁の食材だった。


いただいた手前、
どうしよう…と思った。(スミマセン

それでも
おばぁちゃんのあたたかい
気持ちがうれしくて


思いきって言われた通りにして
食べてみることにした。




すると、クセも無く
食べやすくて
本当に美味しかった。



またおばぁちゃんに会えたら

「おいしかったよ!」って
伝えようと、久しぶりに
心が弾んだ。



きれいに咲いた
水仙の花を眺めながら

またがんばろう〜って

思えた、昼下がりだった。





トップ画は当時そのおばあちゃんから
いただいた水仙。


この写真を眺めるたびに

子育てと向き合い
がんばっていた自分と


心地のいい春の日差しのように
おばぁちゃんのあたたかい
やさしさが蘇ります



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?