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Web編集者の読書癖

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本がないと生きていけない。
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#推薦図書

2021年マイベスト本【エッセイ・対談・小説・歌集】

エッセイが好きだ。対談が好きだ。小説と歌集は、文章の仕事でありながら、文章の仕事から離れさせてくれる文章として好きだ。 2021年は特に多くのエッセイを読んだ年だった。コロナ禍で自粛ばかりで、自分の心に向き合いたかったから。他者の雑談に触れないと、自分について気付く機会がとても減るのだと知ったから。 ということで、2021年読んだ中でも特に面白かった本をまとめて書き記そうと思う。今回はエッセイ、対談・往復書簡、小説、歌集。 ↓ビジネス・自己啓発はこちら。 2022年も

愛は技術であり、人を愛する能力は磨ける

「子育てはスキルだ」と断言する友人がいる。 彼女は私が知る中でもとびきり仕事が好きで、できる。 だから子を産むと聞いたときは正直「母親になる姿が全然想像できない!」と思った。なんたってSNSのプロフィールに「特技は仕事。趣味も仕事」と書くような女だ。正直、子育てによって仕事時間が削られることに病んでしまうのでは、と思っていた。 ところがどっこい、全然そんな心配はいらなかった。むしろ逆。障壁が増えると燃えるのか、出産後はさらにパワーアップしたのだ。 今や冒頭のセリフを口

妊娠ハウツーから胎児の不思議まで。出産に向けて読んだ本まとめ

ついに臨月が迫ってきました。10ヶ月って本当にあっという間! 地獄の妊娠初期を終え、体も心も安定した妊娠中期。食べすぎて太りすぎて主治医に注意されたり、引っ越しをしたり、夫婦喧嘩をしたり、夫とのデートを満喫したり、胎動に感動したり。思い返すと10か月でたくさんの変化があって、このままもう少し妊婦続けてもいいかな?なんて思う余裕も生まれはじめた今日このごろ。(平和だぁ) とはいえ、妊娠初期はほんとに地獄だった。「これ食べてもいいかな?」と思ってググると、やれ「流産の危険」だ

多様性を学ぶことは、目の前のひとりを知ろうとすること

先日、編集の仕事である失敗をした。 添削し終えたライターさんの原稿を最終チェックに回したところ、編集長より添削漏れの指摘をいただいたのだ。 記事はお酒のおつまみにぴったりな商品の紹介。下記の文章にコメントが入った。 添削漏れ、というより私はこの誤りに気付けなかった。我が家では夫より私の方がお酒が大好きでよく飲むし、新婚時代に飲んでいた私に「既婚者はさっさと帰れ」と言った男友達への不満をブログに長々と綴ったこともある。なのにだ。 この添削ができなかった私は、「既婚者はさっ

#2022年の問い②「なんのために本を読むのか」

本の内容って、みんなどれくらい覚えているのだろう。 私は基本、すぐに忘れる。忘れない読書をするために、ここ数年で開拓(?)した自分なりの読書法があって、その方法を実践するようになってからは少しは覚えられるようになったのだけれど (↓読書法については過去記事に書いているので気になる方はぜひ) が、この方法を取り入れる前に読んだ本についてはほとんど記憶しておらず、最近夫に10年前に流行った本に書かれていた定義について言われて「そんな前に読んだ本の内容をよく覚えてるね」と感心

旅はいつまで不要不急か。オードリー若林「表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬」を読んで

オミクロン株が大爆発している沖縄から「旅」について書くのは少し不謹慎な気がするけれど、それでも今、旅が与えてくれるものをもう一度再確認したい気持ちになった。 オードリー若林さん紀行書「表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬」を読んだからだ。 この本を購入するのは少しばかり勇気がいった。なぜならきっと旅をしたくなるから。そして今はコロナ禍で、沖縄はまん延防止重点措置の対象県なのである。旅なんてとてもできない。 だけど購入に至ったのは、キューバという国を若林さんがどう見た

2021年マイベスト本【ビジネス・自己啓発】

今年は私の人生の中でもよく本を読んだ1年だった。気付けば雑誌を含め、113冊読了していた。(読むのが早い人は普通かもしれないけど、私としては偉業!) 2021年の終わりが近づいてきたので、改めて今年の読書リストを眺めていたのだけれど、今年は数をこなしただけあって、多くの良書に出会えているなと思ったし、それぞれの出会いによって確実に私は変わっていた。 少なくとも2021年を迎えるときの私よりも、2022年を迎えようとしている私の方が少しだけ謙虚だし、少しだけ好きだ。 とい

考える時間について考える

自分の本心って、こんなにも時間をかけないと見えてこないものなのか。 考える時間をこんなにたくさんつくらないと、見えてこないものがあるのか。 ここ最近、というか先月「エッセンシャル思考」という本を読み始めてから、自分の心と向き合う時間を週に1度、6時間くらい設けるようになった。 時間をつくるのは大変だった。今も大変だ。(年末なのよ...)だけどそれよりも、本が教えてくれたことを絶対に無駄にしたくない、という気持ちが強すぎて頑張ることにした。34歳というタイミングを考えても

ココロを添えた仕事がしたい

先日、数年ぶりに取材に訪れたお店で、思いがけないプレゼントをいただいた。 大きな茶封筒に、取材のお礼と「またご縁があってうれしいです。ぜひ今後ともよろしくお願いします」という文章が綴られており、その中にはお店で取り扱っているポストカードや栞、シールなどが、まるで宝箱のように詰め込まれていた。 これがもうめちゃくちゃにうれしくて、相当感動してその場で何度もお礼を言ったし、帰りの運転中ニヤニヤ&ひとり言(うれしいことがあると、素敵だなーとか、かなわない!とかひとりで喋る癖があ

オードリー若林が引き出す小説家のおもしろさ。「ご本、出しときますね?」

インタビューの勉強として観ている番組がある。「あちこちオードリー」だ。 というのも台本や方針がある中で人に質問するって、実はめちゃくちゃに難しい。私はインタビューが大の苦手で、ほぼ毎回インタビュー後は録音テープを聞きながら「なんでここ深堀りしなかったの」「聞き方....!」などとひとり反省会状態になっている。 テンポよく聞くべきことを聞き、聞かないべきことを排除し、随時適切な相槌と反復をし、時間内におさめる。このなんと難しいことか。 そんな「聞く力」というジャンルにおい

2021年いちばん「凄かった」本

まだ今年は終わっていないけれど、2021年に読んだ中で、いちばん「凄かった」本はどれかと聞かれたら、迷わずこの本だと答える。 『往復書簡 限界から始まる』 本は、フェミニズムの第一人者である上野千鶴子さんと、慶応大学→AV女優→記者→作家という異色なキャリアを積んできた鈴木涼美さんが「エロス資本/母と娘/恋愛とセックス/結婚/承認欲求/能力/仕事/自立/連帯/フェミニズム/自由/男」をテーマに言葉を綴り合う「本気の」往復書簡だ。 この本、実は9月に読了していて、あまりに

フリーランス40歳の壁に立ち向かうには

周囲のフリーランスの間で、まことしやかに囁かれている怖い噂がある。 「フリーランスは40歳を境に仕事が減っていく」 という言い伝えだ。聞くところによると、そこにはいくつかの真っ当な理由があるらしい。 ・付き合いのあった担当者が出世して、現場に関与しなくなる ・若い人や新人さんが現場を回すことになるため、年上のフリーランスは使いづらく声がかからなくなる ・ハードな依頼は体力に気遣われて声がかからなくなる すべて40歳になっていない方から聞いた声なので、実際のところは

自分の船の舵を人に握らせるな

昔、兄のように慕っていた人と手紙のやりとりをしていた時期があった。 遠いところに行ってしまった兄(のような人)に向けて、当時10代だった私が書く内容ときたら、恋愛や友達、仕事のこと。ぜーんぶ自分のことだ。彼のほうがよっぽど過酷な状況にいたのだけれど、当時の私は自分のことで頭がいっぱいで、まいど自分のことを何枚も書いては返事を心待ちにしていた。 そんな小娘の悩みに答えるのも悪くなかったのか、返事はわりといつも早くに届いた。そして何十通とやりとりをした中で、一通だけ、未だに捨

私たちはどう死ぬのか。「ネコは言っている、ここで死ぬ定めではないと」を読んで

どうしてもブログで紹介したいのに、どう魅力を説明すればいいのか悩ましい本があった。 こちらだ。 とある個人書店で出会い、なにやら無性に惹かれ、ペラペラと立ち読みをしたらやっぱり無性に惹かれて買った本だった。 この本を購入した時にふと思ったのが「Amazonでこの本に出合うことはなかっただろうし、出合ったとしても買わなかっただろう」という感想。だけど書店で出合えたことに感謝するほどに面白い本だった。 そして読了後「めちゃくちゃ面白かったんだけど、この面白さをどう伝えたら