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【東京大学2015年度前期入試数学(理系)第5問】実験→観察→方針

今回は東京大学2015年度前期入試の数学(理系)第5問を取り上げたいと思います。問題文はシンプルですが、どう解いていいか頭を悩ますかもしれません。

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東京大学安田講堂
2016年12月24日、 Kakidai撮影、Wikipediaより

[問題] m を 2015 以下の正の整数とする.2015Cm が偶数となる最小の m を求めよ.

多分、この問題を読んだとき、まずは m = 1, 2, 3,... と代入していくかと思います。私もそうします。

しかしながら、m = 4 あたりからやる気が失せるのではないでしょうか?というのも、分子が大きくなりすぎるからです。2000 より大きい数を 4 回かければ 16,000,000,000,000 より大きくなります。一方、分子は 4! = 24 です。

この時点でもまだ計算し続けようと思うのはセンスのないことです。さすがに方針を変えるべきです。

この時点で何を感じているか?

その差でこの問題が解けるか解けないかが分かれます。

まず、2015Cm はどんな m であっても整数であることはいいでしょう。

議論の対象はそこにはなくて、分子分母の 因数2 の個数が問題の焦点となります。

m = 1, 2, 3,... と調べていくわけですが、m = k - 1 から m = k に変わるとき、分子と分母はそれぞれ 2016 - k と k がそれぞれ因数として加わります。

ということは、m = k - 1 まで因数2 の個数が分子と分母で同じであるならば、2016 - k と k の 因数2 の個数を比較すればいいことが分かります。

それを念頭において解答を書くと次のようになります。

解答

答えが 32 となることを証明する。

2015C1 = 2015 / 1 = (2016 - 1) / 1、かつ、2以上の整数 k に対して 2015Ck = 2015C(k-1) × (2016 - k) / k であることから、次の2点を証明すれば十分である。
(1) 1 ≦ k ≦ 31 に対して 2016 - k と k に含まれる因数 2 の数が等しい;
(2) 2016 - 32 = 1984 に含まれる因数2 の数が 5 より大きい(なぜなら、32 = 2^5 であるので)。
ここで、整数 n に含まれる因数 2 の数とは、n = 2^{p} × q (p は0以上の整数、q は奇数)で表したときの p のことである。 

まず、(1) から証明する。1 ≦ k ≦ 31 であるとき、k = 2^{p} × q で表すことができる。ここで、q は奇数、p は 0以上 4以下の整数である。また、2016 = 2^{5} × 63 であるので、2016 - k = ( 2^{5-p} × 63 - q ) × 2^{p} であるが、5 - p ≧ 1 であるので、2^{5-p} × 63 - q は奇数となる。したがって、2016 - k に含まれる因数2 の数も、k に含まれる因数2 の数も、どちらも p となる。

(2) の証明は簡単である:2016 - 32 = 2^{5} × 63 - 2^{5} = 2^{5} × 62 = 2^{6} × 31 であるので、2016 - 32 に含まれる因数 2 の数は 6 であり、5より大きい。

以上のことから、答えは32である。

感想

今回は西暦に関連した問題でした。この手の問題は忘れた頃にやってきます。

解答を見てわかる通り、それほど難しい問題ではありません。東大でなくても十分に入試問題として成立すると思います。

しかし一方で、手掛かりを見つけにくいために苦戦した東大受験生も多かったかもしれません。

さて今年は2021年。2021に関連した問題を出す大学は出てくるでしょうか?

43×47=2021ということで、2021は2つの素数の積で表現されるわけですが、2つの素数の積といえばRSA暗号。

RSA暗号に使うには43や47は小さすぎるのですが、個人的にはRSA暗号に関連した問題がないかに注目したいと思います。

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