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【京都大学2021年度前期入試数学(理系)第6問】全く趣の異なる2問組

東大の入試を取り上げている最中ですが、京大の第6問が面白かったのでアップしました。問題が2つありますが、全く関連がありません。何故このような組み合わせになったのか不思議です。

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京都大学 百周年時計台記念館
2015年5月5日、Soraie8288撮影、Wikipediaより

問題

第1問 n を 2 以上の整数とする.(3^n) - (2^n) が素数ならば n も素数であることを示せ.

第2問 a を 1 より大きい定数とする.部分可能な関数 f(x) が f(a) = a f(1) を満たすとき,曲線 y = f(x) の接線で原点 (0, 0) を通るものが存在することを示せ.

解答解説

第1問は背理法で簡単に導けます。

n が素数でないと仮定すると、2 以上の整数 p, q を用いて n = pq と表すことが出来る。

このとき、(3^n) - (2^n) = {(3^p) - (2^p)}{ (3^{p(q-1)}) + (3^{p(q-2)})(2^q) + (3^{p(q-3)})(2^{2q}) + … + (2^{p(q-1)}) } と因数分解でき、p, q が 2 以上の整数であることから (3^p) - (2^p) は5以上の整数、(3^{p(q-1)}) + (3^{p(q-2)})(2^q) + (3^{p(q-3)})(2^{2q}) + … + (2^{p(q-1)})も13以上の整数であるので、(3^n) - (2^n) は素数ではない。

よって、(3^n) - (2^n) が素数ならば n も素数である。

第2問は問題を解く前にいろいろと図を描いて情報を集めるとわかりやすいと思います。

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条件から 2点(1, f(1)) と (a, f(a)) を通る直線の方程式は y = f(1) x となるため、原点を通ります。したがって、f'(1) = f(1) もしくは f'(a) = f(1) となる場合には条件を満たします。

ということで、問題はf'(1) ≠ f(1) かつ f'(a) ≠ f(1) のときにどうなるかです。

仮に x = c における y = f(x) の接線が原点を通るとすると、(x, y) = (0, 0) が接線の方程式 y = f'(c) × (x - c) + f(c) を満たすので、f(c) = c f'(c) が成立することになります。逆に、f(c) = c f'(c) を満たす c が存在すれば、x = c における y = f(x) の接線が原点を通ります。

このことを踏まえて、g(x) = f(x) - x f'(x) とおきます。上記の通り、g(c) = 0 である c が存在すれば証明終了です。

さらに、h(x) = f(x) - x f(1) とおきます。これがなぜ出てきたかはのちほど分かると思います。

一般性を失うことなく f'(1) > f(1) と仮定します。このとき、非常に小さい ε > 0 に対して { f(1+ε) - f(1) }/ε > f(1) となり、f(1+ε) > f(1) + ε f(1) = (1+ε)f(1) であるので、h(1+ε) > 0 となります。

f'(a) > f(1) と仮定します。このとき、非常に小さい ε > 0 に対して { f(a-ε) - f(a) }/(-ε) > f(1) となり、f(a-ε) < f(a) - ε f(1) = a f(1) - ε f(1) = (a-ε) f(1) であるので、h(a-ε) < 0 となります。

よって、中間値の定理より、h(a') = f(a') - a' f(1) = 0 すなわち f(a') = a' f(1) となる 1 < a' < a が存在します。(ちょうど上のグラフの状況です。)

以上のことから、f'(a) < f(1) と仮定して一般性を失いません。このとき、g(1) = f(1) - f'(1) < 0 かつ g(a) = f(a) - a f'(a) > a f(1) - a f(1) = 0 であるので、中間値の定理より g(c) = 0 である 1 ≦ c ≦ a が存在します。

f'(1) < f(1) のときも同様に g(c) = 0 である 1 ≦ c ≦ a が存在します。

よって、x = c における y = f(x) の接線が原点を通ります。

感想

第1問はしょうもないですが、第2問は面白いです。おそらく、どのように手を出していいかが悩ましかったのではないでしょうか?

いきなり関数 g を導入すると訳が分からないと思い、g の意図を述べてから証明を書きましたが、実際に答案を書くときには必要ないでしょう。

まず g(x) を導入して、g(c) = 0 を満たす c に対して x = c における y = f(x) の接線が原点を通ることを示し、実際に g(c) = 0 を満たす c が存在することを証明して終わります。

ここで巧妙なのは a のとり方です。関数 h のとり方、と言ってもいいです。この部分は実際にグラフを描いてみないとわかりにくいと思います。

f'(1) > f(1) のとき、f'(a) < f(1) であれば、x = 1 での接線の y 切片は負、x = a での接線の y 切片は 正になるので、途中に原点を通る接線があることが分かるのですが、f'(a) > f(1) の場合に x = a での接線の y 切片も負になるため、困ったことが起こってしまいます。

このとき、x = 1 の直後に y = f(x) が y = f(1) x より上にあり、x = a の直前では y = f(x) が y = f(1) x より下にあるので、x = 1 と x = a の間で y = f(x) と y = f(1) x が交わることを意味します。

この、y = f(1) x より上か下かを表しているのが h という関数です。

もう少し突っ込んだ話をすると、f(a) = a f(1) となる最小の a > 1 が存在すればよかったのですが、最小の a が存在する保証がないため、代わりに関数 h を導入しています。

(注) 今回の条件では該当しませんが、仮に任意の x に対して f(x) = x f(1) だとすると、全ての a で f(a) = a f(1) となるので、単に a > 1 を満たす a の最小値を取ることになります。しかし、仮に最小値を b (≠ 1) とおくと、1 < a’ < b となる a' が存在してしまい、b が最小値であることに反します。よって、最小値は存在しないことになります。
このように、最小値の存在は自明なことではありません。

もし最小の a が存在したとすると、
・任意の x, 1 < x < a, に対して f(x) > x f(1)
・任意の x, 1 < x < a, に対して f(x) < x f(1)
のどちらかが明らかに成立するので、
・f'(1) > f(1) かつ f'(a) < f(1)
・f'(1) < f(1) かつ f'(a) > f(1)
のどちらかが成立することが導かれます。

例えば、任意の x, 1 < x < a, に対して f(x) > x f(1) であるならば、非常に小さい ε > 0 に対して { f(1+ε) - f(1) }/ε > { (1+ε) f(1) - f(1) }/ε = f(1) かつ f'(1) ≠ f(1) であることから f'(1) > f(1) が成立し、{ f(a-ε) - f(a) }/(-ε) < { (a-ε)f(1) - a f(1) }/(-ε) = f(1) かつ f'(a) ≠ f(1) であることから f'(a) < f(1) が成り立ちます。

しかし、この証明方法では減点は免れないかもしれません。減点覚悟で書く分には悪くないと思いますが。

追記 (2021/3/5)

代ゼミの解答では g(x) = f(x) / x として、g'(x) = {x f'(x) - f(x)}/(x^2) であるので、平均値の定理から 0 = {g(a) - g(1)}/(a-1) = g'(c) = {c f'(c) - f(c)}/(c^2) となる 1 ≦ c ≦ a が存在するとして、f(c) = c f'(c) を満たす c の存在を証明していました。(代ゼミの解答内では c の代わりに T を用いています。)

この証明は見事というほかないですが、試験時間内に g(x) = f(x) / x を果たして見つけられるかは疑問です。

この関数の意味・狙いが分かる方がいらっしゃいましたら、解説していただけるとありがたいです。意味付けが出来なければ実践的ではないので。(何となくありそうなんですが、私には説明できませんでした。)

追記 (2021/3/13)

前回の追記になる g(x) = f(x)/x とおく理由ですが、次の記事が分かりやすいです。

第5問のところで「基本的な問題ばかりで入試になるのか?」と書いたのですが、これを読んでもやはり基本的な問題が多かったようです。

冗談抜きで、私の頃の受験生なら完答する学生が多かっただろうと思います。

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