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【北海道大学2020年度前期入試数学(理系)第4問】数列?関数?

年末ともなると大学入試センター試験…ではなくて、大学入学共通テスト(以下、共通テスト)の対策で忙しいかと思います。

しかしながら、理系であれば数学と理科(私の場合は物理&化学)は個別入試対策の延長上に共通テスト対策がある感覚でいるのではないでしょうか?

そんなわけで共通テストは無視して、個別入試を取り上げたいと思います。今回は北大の数列の問題です。

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北海道大学農学部
2008年11月28日、T DMY撮影、Wikipediaより

[問題] α を 0 < α < 1 を満たす実数とし,f(x) = sin(πx/2) とする.数列 { a(n) } が
     a(1) = α,      a(n+1) = f(a(n))      (n=1, 2, …)
で定義されるとき,次の問に答えよ.
(1) すべての自然数 n に対して,0 < a(n) < 1 かつ a(n+1) > a(n) が成り立つことを示せ.
(2) b(n) = {1 - a(n+1)} / {1 - a(n)} とおくとき,すべての自然数 n に対して,b(n+1) < b(n) が成り立つことを示せ.
(3) lim_{n→∞} a(n) および (2) で定めた { b(n) } に対して lim_{n→∞} b(n) を求めよ.
(注) いつものように,a(n) と b(n) は a と b に添え字で n です.

最初に私がこの問題で何を感じたかを書きたいと思います。

最初に (1) を証明する前に正弦関数 y = f(x) と直線 y = x が頭に思い浮かびました。要するに、0 < x < 1 の区間で y = f(x) が y = x より上にあればいい。

グラフを描けば両方とも (0, 0) と (1, 1) を通り、正弦関数は上に凸となるので、(1) は明らかだなとなりました。

さて (2) ですが、b(n) が (a(n), f(a(n))) と (1, 1) を結ぶ直線の傾きと気が付いた方はどのくらいいらっしゃるでしょうか?

すると、y = f(x) が上に凸であること、a(n) < a(n+1) < 1 であることから、b(n+1) < b(n) であることは視覚的に明らかです。

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そうすると、(3) は (a(n), a(n+1)) が (1, 1) に近づくことから,a(n) → 1 かつ b(n) → f'(1) = 0 であることは想像がつくと思います。

以上のことが分かれば方針は立ったも同然です。

(1) n に関する数学的帰納法より、すべての自然数 n に対して 0 < a(n) < 1 であることを示す。

仮定より 0 < a(1) = α < 1 であり、n = 1 のときに成立する。

n = k (k ≧ 1) のときに 0 < a(k) < 1 が成立していると仮定する。このとき、0 < πa(k) / 2 < π/2 であるので、0 < a(k+1) = sin(πa(k)/2) < 1 であり、n = k + 1 のときにも成立する。

以上のことから、すべての自然数 n に対して 0 < a(n) < 1 である。

次に、すべての自然数 n に対して a(n+1) > a(n) であることを示す。

g(x) = f(x) - x = sin(πx/2) - x とおく。このとき、g'(x) = (π/2) cos(πx/2) -1 であり、g'(x) は単調減少関数で g'(0) = (π/2) - 1 > 0 かつ g'(1) = -1 < 0 であり、g'(β) = 0 となる 0 < β < 1 は一意に存在する。

以上のことから増減表を書くと以下のようになり、

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g(0) = g(1) = 0 であるので、0 < x < 1 であるとき g(x) = f(x) - x > 0 すなわち f(x) > x である。すべての自然数 n に対して 0 < a(n) < 1 であるので、a(n+1) = f(a(n)) > a(n) が成り立つ。

(2) 2点 (a(n), f(a(n))), (1,1) を結ぶ直線の方程式は y = b(n) * (x-1) + 1 である(*はかけ算です)。また、f''(x) = - (π/2)^2 sin(πx/2) であることから、y = f(x) は上に凸の曲線であり、2点 (a(n), f(a(n))), (1,1) を通るので、a(n+2) = f(a(n+1)) > b(n) (a(n+1) - 1) + 1 が成り立つ。

a(n+1) < 1 であることに注意してこの式を変形すると、

1 - a(n+2) > b(n) (1 - a(n+1))
b(n+1) = {1 - a(n+2)} / {1 - a(n+1)} < b(n) 

が言える。

(3) (2) より、

0 < b(1) b(2) … b(n-1) = {1 - a(n)} / {1 - a(1)} = {1 - a(n)} / (1 - α) < b(1)^{n-1}

が成り立ち、0 < a(1) < a(2) < 1 より b(1) = {1 - a(2)} / {1 - a(1)} < 1 であるので、lim_{n→∞} b(1)^{n-1} = 0 であることから、はさみうちの定理より lim_{n→∞} (1 - a(n)) = 0 すなわち lim_{n→∞} a(n) = 1 である。

また、n→∞であるとき b(n) = {1 - a(n+1)} / {1 - a(n)} = {f(1) - f(a(n))} / {1 - a(n)} = f'(1) = 0 である。

この問題は (2) から (3) にかけてが難しいところですが、仮に (2) が解けなくても、(2) を仮定して (3) を解いていいと思います。受験ではそういう狡さが必要です。

また、(2) については、上記の考察があれば簡単に証明できますが、視覚的に捉えることができないならば F(x) = {1 - f(x)} / (1 - x) が単調減少することを示すことになると思います。

多少力業になると思いますが、できないことはないはずなので、トライしてみてください。私は力業をやる気がないので(笑)、皆さんにお任せしたいと思います。

12月26日追記

b(n) が直線の傾きであることが気が付かなかった場合に (2) は力業で解けると言いましたが、(3) も次のように力業で解けます。

x(n) = 1 - a(n) とおくと、

b(n) = {1 - sin(πa(n)/2)} / {1 - a(n)} = {1 - sin((π/2) - (πx(n)/2)} / x(n) = {1 - cos(πx(n)/2)} / x(n) = { sin^{2}(πx(n)/2) / x(n) } × [1/{1 + cos(πx(n)/2)}] = (π/2) × sin(πx(n)/2) × { sin(πx(n)/2) / x(n) } × [1/{1 + cos(πx(n)/2)}]

となり、n → ∞ のとき a(n) → 1 であることから x(n) → 0 であるので、b(n) → (π/2) × 0 × 1 × (1/2) = 0 が得られる。

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