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夢歌〜夢の話〜

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私が眠っているあいだに見た夢の話だけをまとめています。
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夢歌9ある日、言葉の意味が変わったら

夢歌9ある日、言葉の意味が変わったら

「fever」

教室の後ろにある書類の引き出しの前で私が言うと、その女性は不愉快そうに顔をしかめた。教室は講義の最中で、私たち以外は静かに講師の声に耳を傾けている。

「それ、どういうつもりで言ってるの?」

思いがけない反応に私は戸惑った。

「…え、ね、熱」

すると女性は苛立ちを隠しもせずに言った。

「どこにそんなことが書いてあるのよ」

私は急に不安になり動悸がしてきた。

「あの、マ

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夢歌8 ちりゆくひとの

夢歌8 ちりゆくひとの

じじじと音がして目の前がほの明るくなる。

スクリーンに茶色い革の表紙の本が映し出される。誰もいないのに表紙とページがめくられる。

手書きだ。

私には文字が読めない。何語だろう。日記だろうか。

黄味がかったページが遠ざかり、空が映し出される。地上から見上げる空ではない。飛んでいる。

やがて空の向こうから点のような小さな物が近づいてきて、その姿を見せる。プロペラ機だ。古い。

私は飛行機には

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夢歌7 またおまえかよ!

夢歌7 またおまえかよ!

「これ、なんだと思います?」

私は白い戸棚の扉をあけて、中に陳列されている箱をあごでさした。

廊下から部屋のドアをあけると、正面に床から天井まであるその収納庫がある。中には白く塗られたブリキのふた付きの箱がぎっしりと詰まっている。

「触らない方がいい気もするけど、気になりますねえ。」

私は試しに目線の高さにある箱を引きずって引っ張った。意外に重い。

「どこにあるんすかね、アレ。」

キタ

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夢歌6 銀の粉

夢歌6 銀の粉

 読みかけの文庫本を手に、廊下を歩いている。

 壁の色はアイボリー。廊下も同じ色で、右端にこげ茶のラインが二本走っている。

 両側の大きな窓からは、昼過ぎの日が差し込んでいた。

 明るく清潔な建物だ。

 窓には樹々のてっぺんの濃い緑が見える。その下には小さな中庭。あの樹の下には、草枯れの芝生と小さなベンチがある。木陰のベンチで読みかけの本を読んでしまおう。

 そんなことを考えながら、突き

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夢歌5

夢歌5

 非常階段を上っている。

 最上階に着くと、スチールの扉があった。

 その扉を開けてはいけない。

 頭の中で声がする。

 ジャンジャンと鐘を打つように頭が響く。

 私は自分の声が止めるにもかかわらず、別の声に誘われるように扉のノブに手をかける。左に回して扉を押した。

 薄暗い部屋の中は倉庫のようで、沢山のダンボール箱が積み上げられ、窓をほとんどふさいでしまっている。

 そのすきまに人

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夢歌4

夢歌4

 なーちゃんとサシでのんだ。

 

 そこは小さな芝居小屋を改装した飲み屋で、ステージはそのまま残してあった。

 舞台の床にはリノリウムがはってあって、丸テーブルには白いテーブルクロス、黒く細長い背もたれにワインレッドの張地の椅子が二脚、上手の客席側と下手の舞台奥側にそれぞれ配置されている。

 そこにも客が座るのか、なにかイベントがあって演者が出るのかはわからない。

 客席の床はフラットで

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夢歌3

夢歌3

 今朝はいつもより早く出勤した。天気はいいし、清々しい気分だ。一番乗りを期待してオフィスのドアを開けた。

 部屋の風景がいつもと違っている。

 デスクやパソコン、コピー機など見慣れたものが一切なく、会議で使う長机が角に積まれているだけでガランとしている。

 部屋を間違えたか?

 そこには知らない男女が一人ずつ。女の方は会社にいてもおかしくないアイボリーのスーツを着ている。男の方は黒いスーツ

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夢歌2 ペンギンたちの秘密

夢歌2 ペンギンたちの秘密

 私たちは年に一度船に乗る。

 大草原を離れ大海原を旅するのだ。

 陸で親しくしていた人たちには誰にも告げてはならない。私たちが海へ行くことを。

 ある日ひっそりと姿を消す。

 私は寂しかった。必ず戻ってくるから待っていてほしいと伝えたかった。忘れられたくない。私は泣いていた。

 毎年夏になると海に出る。いつからなのか覚えていない。だけど、海にいて知らないはずの夏の草いきれの匂いを覚えて

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夢歌1

夢歌1

9月、正午前だった。

日射しがつよく、地面は真っ白に乾いている。

周りに高い建物は一つもなく、向かい合う長屋の間には白い畝が並び、何本か立てられた支柱には干からびた蔓が巻きついている。

玄関の敷居を跨ぎ、薄暗い土間から表に踏み出した私はその眩しさに手をかざし、思わず下を向いた。

今日、1人の少女がこの土地を去る。もう会えない。

私は昨夜一睡もせず、彼女のために記憶の中の音楽をひたすら五線

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はじめまして。ゆめうたです。

はじめまして。ゆめうたです。

あなたはどんな夢を見ることが多いですか?

眠っているときに見る方の夢です。

因みに私は悪夢が多いです。

ときどきは物語のような夢を見ます。

ファンタジー、おとぎ話、歴史もの、少女の恋からの戦争もの、スリラー、サスペンス、ホラー、そしてスプラッタなど、アーティスティックな悪夢まで。

その様はまるで映画を見ているかのようです。または五感付きでとんでもなくリアルです。

私はそんな夢の話に「夢

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