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コンビニの君

コンビニの君

短歌 コンビニの君のピンクの爪色が俺を透過し街を染めゆく

 目覚めればいつもと同じ目覚ましの音。いつもと同じくすんだ天井。ブルーの毛布。10分早めに目覚ましの時間を設定してあるからまだ少しだけ余裕のある、いつもと同じ朝。枕元の目覚ましを止めて、時間を確認する。5時50分。目覚ましを止めた手を毛布の中に戻そうとして、いつもと違う指先の色が目に入った。私は身体を起こし、自分のものじゃないような爪を見

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柱のキズ

柱のキズ

 柱を傷つけたとき、すごく叱られた。
「あんた何してんの!」
 自分の背の高さの所で傷をつけて成長を確かめたいと思ったのだ。
「この部屋は借り家なんだから、傷を付けたら弁償しなくちゃいけないんだからね」
 書道の時間、誤って墨汁を服に垂らしてしまい、叱られた。
「もう、何でもっと注意しないの。汚れたらなかなかとれないんだから」
 ベッドの上でアイスを食べて叱られた。
「ベッドの上で食べちゃ駄目でし

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しにたい夜もふけて

 しにたいとSNSアプリ『ハートル』で呟いたすぐあとアプリを閉じ、飲みかけのハイボールを飲む。ハイボールもこれで三杯目だ。前までは缶のものを買っていたが、ウイスキーをソーダで割って飲んだ方が安上がりだし美味しいと気付いてからは自分で作って飲むようになった。難点があるとすれば飲み過ぎてしまうこと。
 グラスを何度か傾けてからスマホを手に取り、再びハートルを開く。いいね一件。いいねした相手は髭面のアイ

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すん

 その日はひどく疲れていた。嫌いな上司の嫌味な一言が身体の奥の方まで沈んでいた。どうしてあんな言い方しかできないのだろう。言い方を少し変えてくれるだけでこちらもやる気を削がれず仕事ができるというのに。

  社会人1年目。就職活動を頑張ったお陰で念願だった会社に就職できたのはいいけれど、思い描いたような毎日ではなかった。人間関係が良好な職場とは言えなかったし、それ以上に自分の能力不足に悩まされる毎

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最後のデート

 今日が最後のデート。「かわいいね」とあなたが言ってくれた、紫色の生地に星屑の散りばめられたワンピースに腕を通す。鏡の前に座り、化粧をする。薄い桃色のルージュはあなたのお気に入り。大人ぶって赤い口紅をつけたらその日一日あなたが無口だったのも今ではいい思い出。最後にあなたが誕生日のお祝いに買ってくれた香水をふりかけて、あなた好みの私が完成。

 渋谷駅のホームに降り、ハチ公改札へ。生ぬるさの中に寂し

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