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受け取らなかったクリスマスプレゼント

大学生の時、秋になって銀杏並木が真っ黄色になる頃に、その時付き合っていた人から別れを告げられた。3年くらい付き合っていたから、別れは 簡単には受け入れられなかった。
私は4年生で、就職が内定していて、クリスマスや卒業のパーティー、社会人になる前の時間を彼と過ごすつもりが、ひとり放り出されたのだった。

さよならすると決まった後、自由が丘のおしゃれなレストランでふたりで食事をした。お別れのディナー。何を食べても味なんてわからなかったけど、必死に笑顔をつくって食事を喉に流し込んだ。大好きな彼に、せめて笑顔を見せたかった。少しでもよく見られたかった。

デザートの時になって、彼がプレゼントを差し出した。
・・・・香水。
なんで別れるのにプレゼント?それが顔に書いてあったのだろう。彼は言った。

「この時期にプレゼントがないのはかわいそうだから。似合う香りだと思うよ」

「でもこの香水つけるたびに思い出しちゃうよ」

「だって俺のことずっと覚えててほしいから」

勝手だよ。私から去るくせに忘れられなくするなんて。私はプレゼントは受け取らなかった。それが、最後のデートだった。

たくさん泣いた・・・でも、ほんの少しだけ、受け取らなかった自分を誇らしく思った。


子供の頃の、たくさんプレゼントが欲しくて、靴下の代わりにタイツを吊るしたクリスマス。夫と過ごしたクリスマス。子供たちと過ごしたクリスマス。いくつもの楽しいクリスマスがあった。12月は好きな季節だ。

それでも、プレゼントを受け取らなかったあのクリスマスは、もう忘れたいのに今年も私の胸をチクリと突き刺す。

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