帰りたいばーちゃんと困るじーちゃん、時々おっちゃん
いつもは森の香りだけど、昨日はバラの香りのお風呂に入った。
「はぁ〜〜〜っ」
乳白色の湯船に浸かり、バラの香りに癒される。
『おそ松くん音頭』が頭の中を流れる。
別に声に出して歌っても良かったのだけど、なぜかそうしなかった。
ばーちゃんのショートステイ先に、差し入れの総合栄養ドリンクなどを持って、じーちゃんと行って来た。じーちゃんの運転する車に乗って。
高齢になったが、まだまだ運転は達者なじーちゃん。
先月下旬に近くの病院を退院したものの、介助なしに歩けないし、ご飯を食べないから、自宅に戻る前に一旦施設に入ったばーちゃん。
ショートステイ。
施設に着くと、スタッフさんが車椅子を押して、ばーちゃんを入り口のところまで連れて来てくれた。
「ほいっ!」
手を打ってじーちゃんが挨拶するが、ばーちゃんは眉間に皺を寄せてこちらを睨んでいる。
「帰る!」
ばーちゃんが言う。
「ほな言うても帰れんが…」
困惑するじーちゃん。
「帰る!」
「ばーちゃん!ご飯をちゃんと食べて、足をしっかり動かして、そしたらすぐ帰れるから!」
正論を吐く娘。
私だ。
「帰る!」
「だからぁ、ご飯を食べて、しっかり歩く練習をな、」
身振り手振りで再び正論を吐く。
実につまらん。
つまらん娘だ。
私だ。
「また明日来るから」
そう言って、ばーちゃんが斜め掛けにしているポーチに新しいハンカチを入れてやるじーちゃん。
短い面会を終え、ばーちゃんに手を振ってスタスタと車に向かう私。
じーちゃんはガラス越しにまだ中を見ている。
帰りの車中、
「理屈やないんや…」
いつもはおしゃべりなじーちゃんがぽそっと言う。
そうなんだよな。
帰りたいばーちゃんに
「しっかりご飯を食べてぇ、足をしっかりぃ……」
なんて大きな声で言ったって仕方ないのに。
実につまらん。
つまらん娘だ。
じーちゃんは明日もまた行くだろう。
駄々っ子みたいに「帰る帰る」と言うばーちゃんに困りながらも、親鳥が雛にエサを運ぶように、せっせと毎日通うんだ。
おっちゃん(兄•初登場)からLINEがあったのは数日前だったかな。ばーちゃんの進展しない様子に、
一応そう返したが、心の中で叫んだ。
ま、すぐに「過去を振り返っても仕方ない。前向くわ」という内容の返事が来たから、ま、今日はこれくらいにしといたろという気になった。
図らずも、介護関係の仕事をするようになったおっちゃん。
別の日のLINEでは、「ばーちゃんに頑張れとか大丈夫?とかは言わんと、小さなことでも、いけたなぁ、とか褒めてあげて」とあった。
その通りなんよね。
「そやな、帰りたいな。帰ろうな」って、ただただそう言ってあげれば良かった。
バラの香りにしたの正解だったなぁ。
お風呂からあがったら、次持って行くばーちゃんの服やら下着の準備、しようかな。
※参考までに
(1番だけでもどうぞ♪)
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?