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やっぱり凄かった兄貴「105914にしたらええ」

「お母さん、これのパスワードは?」
「914105やで」
「……。おーなるほど」

感心したかの様に反応した"914105"の数字。
私の家族ならすぐに分かる数字の羅列である。

9月14日生まれの長男と、1月5日生まれの次男の誕生日だからだ。


ただ、私は外されていた。


私の兄妹は、兄+兄+私の三人兄妹である。

「私以外の誕生日やねんな」
お兄らの誕生日だね、とは言わずに"以外の"と強調した。

「ほんまは入かれたげたかったけど、仕方ないやん。パスワード6桁やし」

そうだよね。
分かってはいたが、やっぱり私はこの家とはそこまで馴染めてないのか、とリアルに突きつけられた感じだった。


私の兄、次男は最高のハイスぺ人間だと思う。
こいつには一生敵わない、と5歳の頃には自覚していた。文武両道、才色兼備、高身長、高学歴、人から好かれ、人を操ることが上手い。妹から見てもジャニーズに居そうな顔立ちをしていた(今は違う)


そんな次男とは大きくなってからは話す機会が減った。


「妹だと思っていないって言ってたよ」と母から言われたことがあるが、それくらい次男からしたら私は要らない妹なんだろうな、と実感した時があった。
そこからは、本気で話さない日々が続いた。といっても、お互い家を出ていたから年に1回顔を交わせるか否か、くらいの距離間だったから助かった。

母も母で、何故そんなことをわざわざ言ってきたのか。それが付き纏う事があった。正直、今も付き纏う。話すのが億劫である。



そんなある日、たまたま次男と私と母が同じタイミングでリビングに居た。
私はテレビを見て、彼らの世間話を聞いていないフリを続けた。
そして、家族のipadのパスワードの話になるのを見届けた。


「お母さん、これのパスワードは?」
「914105やで」
「914105?え、そのパスワード、あいつおらんやん。
生まれた順番はたしかにお兄ちゃんの次に俺やけど。けど、逆にしたらいいやん。105914にしたらええんちゃう?そうしたら、あいつも居るやん」

あいつとは私の事である。


105914

私は5月9日生まれだ。







チョコレートに牛乳



次男が私の誕生日を覚えていた事にも驚いたし、
なにより、数字を聞いただけですぐに兄妹の誕生日であることと、
羅列を逆にするだけで3人の誕生日になるなんて、そんなコンマ何秒の世界で考えられた兄貴は改めてすごい奴だと認識しました。



私はというと嬉しすぎて、すぐに自部屋に引っ込みました。
今でもそこまで話さないけれど、感謝をしています。

やっぱり兄貴はすごい奴でした。


ちなみに。

パスワードはでたらめで、本当のパスワードではありません。

ただ、私は5月9日生まれですが。




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