ブッククラブ〈Language Beyond〉 #31—ヘルマン・ヘッセ『クヌルプ』

○開催日時 2023年11月19日(日)17:30〜18:30(jitsi meetでオンライン開催)
○課題本 ヘルマン・ヘッセ「クヌルプ」
◯参加者 6名

開催メモ(担当:吉川祐作)

今回の読書会では、ヘッセの「クヌルプ」を取り上げました。子供時代の失恋から、旅職人として一生を送ったクヌルプ。その漂泊の生涯を、主に彼が通りすぎる人びとの目線からとらえた一冊です。

読み手の僕たちもまた、クヌルプというのがどんな人だったのかというところから話を始めました。意外とヤなやつだという指摘や、他人と深い関係性を簡単に結ばない部分に共感するという意見、ちょっと寅さんに似ているという感想など……。

クヌルプは、だれもが心の底に持っている、ただ生きるだけでは満たされない部分を満たしてくれているのではというコメントもありました。たしかに彼は、ふらりと町へやって来て、人びとの生活に新鮮な風を吹かせる存在として描かれています。

一方で面白かったのは、そうした旅人としてのクヌルプには物足りなさを感じるという意見もあったことでした。クヌルプは、理由をつけて女の子を口説いたり、自身も子供がいたりする。なんだか自分の生き方にも満足してはいないように見えるのです。

後半は、クヌルプというキャラクターを越えて、彼のような生き方が現代でリアリティをもって感じられるのか、ということが語られました。

現代では、どこにいてもSNSがあったりして、自由ないきざまを追い求めるのが難しくなっているという指摘がありました。ふらふらと生きることが難しい現代は、たしかに、クヌルプのような流浪者にとっては過ごしにくい時代といえるでしょう。

クヌルプが生きていた時代は、ひととの「出会い」が今よりもずっと事件だったのではないかと言った参加者の方がいました。簡単には知り合えないし、次またいつ会えるかも分からない。そんな時代だったからこそ、人々は旅人を歓待したのでしょうか。

そうであれば、現代において「クヌルプ」をみんなで読むことには大きな意味があると思います。ひととの出会いを事件として見つめ直すことは、再会が気軽な(ようにも思える)現代で、出会うことの重みを改めて考えることだと感じるのです。

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