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『欠勤連絡』に出る人間性

「休もうと思ってて…」

…ん?
一瞬引っ掛かるような感覚があったものの、そのまま会話を進め、電話を切った。
バイトの子からの欠勤連絡。
受話器を置いてから会話を思い返し、やっぱり、…ん?と思った。

「休ませていただきたいと思いまして…」
うん、事前に連絡してくれてありがとう。
「休みたいと思って…」
うん、連絡ありがとう。
「休もうと思ってて…」
…ん?やっぱり違うな。

「休もうと思ってて…」
この言葉から察するに、彼の中では休むことが既に確定しているのだと分かる。
勿論、欠勤連絡を受けてこちらが駄目と言うわけもない。体調不良のなか無理やり出勤させるようなブラックな会社ではないし、そもそも今の社会でそんなことするさせる会社も無いだろう(と信じたい)
そう考えれば、連絡をした時点で休むことはほぼ確定の事実ではある。

しかし、だ。
受話器を取った時点では、こちら側は彼が普通に出勤すると思っているし、その上で一日のスケジュールを立てている。
特に私の職場は、誰かが休んだらその分を他の人の働きですぐにカバーできるような形態ではないし、顧客に直接影響が出てしまうようなところ。

そこへの欠勤連絡が、これか。
引っ掛かりの正体が分かった。
苛つきと、呆れと、落胆だ。

きっと彼の世界は彼自身を中心に回っていて、己の行動がどう周りに影響を与えるのか、視界に入らぬその部分には気付かないのだろうと思った。そしてそれを気にしない。そういう人間なのだろう。

連絡ひとつ。
少し言葉を変えれば「ちゃんと事前に連絡してくれて有り難いなぁ」と思えたのに。真逆の印象を受けてしまったことが残念でならない。

それと同時に。
少しの言葉の違いで、そんなふうに感じてしまう自分はおかしいのかとも考えた。
休みたい時に気軽に休めることを推奨している社会で、彼の言い方は、考え方は、もしかしたらスタンダードなのかもしれないと。
周りに迷惑をかけてしまうことを申し訳ないと思いながら欠勤連絡をする、自分の中で休みたいという気持ちが100%であっても表面上は許可をうかがう体で話をする。その考え方が古いのか?

分からない。
己がおかしいのかもしれない、悪いのかもしれない。
考えれば考えるほど分からない。

ただただ、嫌なしこりが残っている。

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