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なぜ私はあの事を忘れられないのか

今から記す話は約20年前のリアル「君の名は」である。

忘れたいと思った事はないが、何度思い出しても、何度話しても必ず鳥肌が立つ。

これは私が2002年に上京...といっても綱島(横浜市)なのだが、上京でいいじゃん上京みたいなモンじゃん。したばかりの夏の話。

(なので以下は上京と記しますから!)

今考えたら、若い私は恐ろしい程に怖いもの知らずで、何のあてもなく「音楽」を「お仕事」にする為に大都会へ夢膨らませやってきた。

まぁ正確にはそんなたいそうな想いや意気込みなどなく、

夜中に地元のバーミアンで広げた横浜の地図の上で目を瞑り、「グルグルグルぅぅ〜」とふざけて指を差した場所に今から車で向かって物件を決める。

みたいな、とんでもない人生ゲームで指先にあった綱島に引っ越す事を決めた。
なので綱島を「あみしま」と読んでいたくらいだ。

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上京したところがゴールみたいな感じで、むしろ上京後の虚無感はすごかった。

土地勘もなければ友人もいない。ここで楽しめる気もしない。音楽やりにきたはいいがやる場所も知らないし、どこにアピールすればいいのかも分からない。

どんな手立てで夢に近づいて行けばいいのかさえ分からない。

日課は、同居人である地元の友人のキャバ嬢(以下、ミナミ)と綱島駅ドトールで毎日同じ話をし、気がすんだら横浜に出かけ、さらに気がすんだら綱島に帰り、さらに気が済むのか済まないのか分からないほど、ビッグエコーでフリータイムで歌う。

いや今考えたらあれだな。あれだ。もうあれだな。過去の自分どうやって生きてたんだよ...。

そんなニートマックスのある日、いつものようにドトールで空虚な時間をミナミと過ごしていると携帯のメール音(Nokia使ってたからあのティンティンッって音)が鳴った。

受信ボックスを開いてみたら、登録されてないアドレス。

メールを開封してみる。

「るみ。めっちゃ久しぶり!元気しとるん?私今度渋谷に遊びに行く事になったから遊んでな~☆ともか」

ともか

というのは私がつけた仮名である。
なぜ仮名にするのかというと…
それは読み進めていただければ分かる。

私は空かさず

「うわっめっちゃうれしいわ!めっちゃ久しぶり。元気かい?」

と送られてきたアドレスに返信した。

目の前で携帯を弄りながら今日の同伴相手を探すミナミに、

私『あれっ?ミナミってともか友達やっけ?』

ミナミ『…?何校のともか?』

私『…あれ?ともか何校だっけ?ぢゃミナミと違うグループの友達だわ』

田舎あるあるで友達は全て繋がるという感覚があったので、ミナミがともかを知らない事に、この時少し違和感を覚えたがさほど気には留めなかった。

その日からというもの、ともかと私は毎日の様にメールをやり取りし、携帯番号を教え合い、まだ関東に馴染む事が出来ず、音楽もやる場所がなく、今では考えられないほどの時間をもて余していた私の拠り所はともかになりつつあった。

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時には現実逃避のように想い出話。

ともか『ねー覚えとる?スタアイ(スターアイランドという商業施設の略)のビレバンの前のベンチでよく制服でたまったりしてたよな~』

私『懐かしいなぁ。まだ私は関東に友達おらんからあぁやってたまったりすることももうなくなってしもたわ。』

ともか『るみ元気ないやん…大丈夫か?』

……

繰り返し行われて来た連絡は、約1ヶ月で終わりの日を迎える。

ともかが東京に一人で観光に来るというので、渋谷で会う約束をしていた。

当日

「東京駅着いたで!」

ともかからのメール。

その頃はまだ品川に新幹線が停車しない時代。

「山の手線ってやつやんなぁ~」

寝坊した私は、そのメールの着信音で飛び起きた。

やばい!

東京駅から渋谷まで26分。綱島から渋谷まで22分。

しかし!!!私が目を瞑って指した場所に住むというフザけた物件選びをしたせいで自宅から綱島駅まで歩いて25分。

完全にともかが先に渋谷に着いてしまう。

ミナミはまだ寝ている。

私は玄関の鍵も閉めずにマンションを飛び出した。

真夏の綱島駅までの真っ直ぐな道のりを汗だくで急いだ。

やはりともかが先に渋谷に着いた。

「ヤバい!祭りみたい!ギャルばっかやん!センター街ってとこぶらぶらしとるよ~」

メールが来た。

これ私も上京した時言ったなぁ。なんなら全員が同じ顔に見えてたから、渋谷が賑わってる演出をする為に政府がお金を出して同じ人たちをずっとグルグル歩かせてるんじゃないか。と疑ったほどだ。

基、

これが最後、いや正確に言えば最後の前のメールになるとは、

汗だくで鬼の形相をし駅を目指す私には知るよしもなかった。

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続く(思ったより長かった)


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