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『スカイウォーカーズ:ある愛の物語』

Netflixで数多あるドキュメンタリー作品の中で、今この作品が一番パッと観れて、パッと驚けるドキュメンタリー映画なのは間違いないと思います。

ルーフトッパーと呼ばれる高い建物の頂上部まで行き、そこで撮影やらパフォーマンスをする男女のお話です。
まずルーフトッパーのやっていることが根本的に建物への不法侵入を前提としていて「コイツらは悪いことをしている」と感じてしまう人には受け入れられないかもしれません。キーピングをして侵入したり、錠前を破壊して侵入したり。まあ犯罪なわけです。倫理観の部分で、彼らは人に迷惑をかけていると判断する人も多かれ少なかれいると思います。まずこの映画はそうした倫理観については「一旦置いといて」が大前提となります。

そんなとこでチューしなくてもええやん
危ないよな映像が沢山

「一旦置いといて」が何故映画として通用するかというと、撮れ高が異常だからです。
高いところに登ってそれを見下ろしている映像の数々。危険と隣り合わせ「落ちたら死ぬ」が目前にある映像が目の前に繰り広げられます。マンションの屋上だとか、高層ビルの窓からの景色だとかではなく、下を見れば足場があまりに不安定で命綱も何もないという危険が高低差がこれでもかと映像で提示されるのですね。

その撮影を可能にしているのがGoProなどのアクションカムであり、ドローンの映像です。
彼らは自ら演者でありながら自ら撮影者でもある。そのアクションカムの持ち主であり、その撮れ高と自分のパフォーマンスを一致させられる人たちなのです。

彼らは主にSNSでその映像を発信して、スポンサーを集めたりしています。この映画もその様子は描かれていますが、映画として数々の映像を集めて構成・編集している本作は圧巻です。VFXでは伝えられないナマの凄みがあります。

「ある愛の物語」とある通り、この映画はラブストーリーで、ルーフトッパーの男女がその危険を二人で乗り越えていくというものですが、何故そんな喧嘩をそんな危険な場所でするんだ!とか、そんな高い所で喧嘩しないで、まず安全な場所に降りようよ!とかツッコミどころが満載ではあります。

男女の小競り合いのスケールの小ささに対して、あまりにも二人が挑戦していることが異常すぎてその差異が面白いことになってしまっています。

この映画を恋愛映画のくくりで見なくても、シンプルに撮れ高が凄いので「一応形式上恋愛映画の方が収まりがいいべ?」くらいにしか感じないかもしれません。蛇足っちゃ蛇足ですが、可愛げがあるので、なんだかよくわからないけど撮れ高凄いからお前らはそれで良し!とバカ負けしてしまうのですね。

とにかくアクションカムとドローンという撮影方法がこの10年で一般化したことによって作られた作品なのは間違い無いですし、犯罪行為<アート活動 という姿勢なのでしょうか、Netflixが今作品を配信していることがまず革命的だと思います。

やれ、あれは出しちゃダメだとか、あのフッテージは使えないだとかのお達しだらけの素材が溜まる一方で、こんなにも出しちゃいけない映像たちを駆使して、感銘を受ける作品を作るんだからやっぱりやり方次第だし、作品の提供の仕方次第、受け取り方次第だと思うのだ。

映像の撮り方とか、方法論が限定的にしすぎていないかとか、ルールに雁字搦めになっていないかとか。
そんな自分にはこの作品を見て、気持ちを改めろと喝を入れたくなります。

それくらいスレスレの映像たちにエネルギーがありました。
カラダを張っている映像は率直のカッコいいですし、身体と映像がリンクしたものを見たときに、とても興奮させられる性分の私はとっても感化されました。

見て損はない作品だと思います

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