追憶のおはなばたけ
ポピーを見ると思い出す。
「お花ばたけにいきたい」と言ったこと。
私の思い描いたお花ばたけは、ふわふわのみどり色の草が生え揃い、青やピンクやオレンジや、一面に小花が咲き乱れるところ。おひさまのぬくもりを体いっぱいに浴びて、眠くなっちゃうような、ところ。
それなのに、連れていってくれたのはポピーがぽつぽつと咲く、畑。土の地肌がまるみえだった。雨の降った次の日だったせいで、歩くとベタベタとしていて、私は悲しくなった。こんなの、夢のぶち壊しだって思った。
きっと、父と母は、覚えていないと思っているだろうな。小さい頃の記憶なんて、すぐに忘れてしまうって。
そういえば、実家のオレンジ色のポピーはいつからあるんだろう。もしかすると、あのおはな畑に行った時からかもしれない。
きっと私は、実家に帰ってポピーを見るたび、あの時のことを思い出すだろう。それと同時に、小さい頃の夢を鮮明に思い出すだろう。
小さい頃の私から、今の私にたくされた夢。
いつか、ほんとうのお花ばたけにいきたいな。そう考えたら、幼い私が喜ぶ声が聞こえた気がした。
叶えたい夢、なんて、実はそんな大きなものじゃなくって、もっと身近にあるのかもしれない。
読んでいただき、ありがとうございました。
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