【嘘】弾め。天より高く
大人になって初めてわかることがある。
大人になるとスーパーボールで遊ぶなんて事は許されないんだ。
本当は、全ての大人たちがスーパーボールを全力で地面へ叩きつけたいと思っているのに。
空高く飛び上がるゴム玉を見上げたいと、心底願っているのに。
その欲求をひた隠し、すまし顔で仕事なんてしてる。パソコンに向かいながら、心はいつもスーパーボールに夢中だ。
油断をすると視界いっぱいカラフルなボールの幻覚で埋め尽くされる。スーパーボールを我慢し続ける大人たちは、いつだって辛いんだ。
夏祭りは本当に罪深い。
子供を連れた家族の風景、当たり前のように存在するスーパーボール掬い。子供は無邪気にはしゃいでいる。大人たちは皆、歯を食いしばって耐えている。見て見ぬ振りして耐えている。
「お父さん、あれやりたい!」
指差す先に子供用プール。
お父さんは引きつった笑顔で返事をするのが精一杯だ。
「一回だけな・・・」
七夕の短冊には子供は知らない、大人用のものがある。
そこにはどれもこれも、同じ願いが書かれている。当然だ。
いつの日かまた、思いっ切りスーパーボールを叩きつけられますように。
ありがとう