見出し画像

教師魂 仕事をやる意味を父から教わった話

父が帰ってきた。僕たち兄弟3人は、手を伸ばしてお土産を期待した。父は、一人旅で兵庫県に行っていた。父は、ニコニコしながらビニール袋を渡してきた。重すぎる。2kgぐらいあるだろうか。指一本では持てなかった。どんなすごいものが入っているのだろうか、胸が膨らんだ。袋を開けると、雑誌が大量に入っていた。正体は、姫路城のパンフレット150冊だった。父は、ご機嫌だった。

この人は何を考えているんだ。僕たち兄弟はいつものように顔を見合わせた。教師である父は、たまに変なものを持って帰ってくる。どれもこれも、子供たちのためだ。今回は、国語の授業で教材として使うみたいだ。パンフレットの見方や、どんな工夫がしてあるのかを教えることもできるし、歴史の勉強もできる。「一石二鳥だろ」。父はいつものように笑顔だった。

教師。僕の憧れの職業だ。小さい時から、楽しそうに仕事をする父を見てきた。それは教師に憧れを持つに決まっている。僕は、大学も当たり前に教育学部に進学し、全力で勉強した。大学卒業後、オリンピックを目指すために、まずは病院に就職した。そこには、教師とは真逆の世界が広がっていた。職場の院長は、すご腕の経営者である。僕も院長と一緒に会食によく参加する。毎日のように経営者と会っていると、これまで知らなかった世の中の仕組みや歴史がわかってくる。教員の世界の事実や、教師でなくても子供たちに貢献できることを知り、教員への憧れが少しずつ減ってきているのを感じている。

しかし、今日の父を見ていると、やっぱりかっこいい。地位や名誉、お金にとらわれず、魂からやりたいと思う仕事に全力を注ぐ。子供たちのために、全力を注ぐ。やっぱり憧れる。

まだまだ僕は未熟だ。これからも、多くの出会いがあるだろう。様々なことを学び、経験し、人生をかける価値ある仕事を見つけたい。そして、父のような人生を送りたい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?