オリジナルキャラクターのコンセプトと制作意図
こんにちは、キャラクターデザイナーの「ゆめ」と申します。
今回はシャチとオオカミをモチーフに作成した
オリジナルキャラクター「シャーロくん」について
コンセプトや意図を説明したいと思います。
モチーフは「シャチとオオカミ」
シャーロくんのモチーフはシャチとオオカミです。
共通点といえば動物の中の哺乳類であり、捕食者…
というところでしょうか。
体全体はシャチで、体もツルツルした質感ですが
下顎あたりからはオオカミのように獣毛が生えて、前足も付いています。
一見、走れるのか泳げるのかわからないデザインですよね。
どっちが得意だと思いますか?
正解は「走るのも泳ぐのも下手。」
走ろうにも前足しかないし、
泳ごうにも前足と獣毛が邪魔をして上手く泳げません。
つまり、動物として「生き抜く力」が著しく欠落している
デザインになります。
どうしてそんなキャラデザになったのか。
実は「裏コンセプト」が関わってくるのですが
まずはシャーロくんの物語からお話させてください。
シャーロくんの物語
「シャチの凶暴性」と「オオカミの従順性と俊敏性」を掛け合わせたら
扱いやすく、効率よく成果を出せる
「最強の生物兵器」になるのではないか!
そんな実験でシャーロくんは生まれます。
…しかし、科学者達の思惑とは裏腹に
短く、前足しかない脚。陸上生活に不向きな大きなヒレでは、
俊敏性どころか動くのも遅い。
おまけに従順すぎる性格のせいで、凶暴性のかけらもない…
あまりの出来損ないぶりに、早々に廃棄処分が決まってしまいます。
処分当日、出来損ないだと舐めきった研究者の一人は
なんの防護服も着ずに近づいてしまい…噛み○されてしまいます。
本来シャチもオオカミも捕食者、研究者を餌だと思ったんでしょう。
人間を一人食べたシャーロくんの体には
それが目印かの様に「大きな赤い目」のような模様が現れました。
その模様は、食べた人間の数に応じて増えていき
いつの間にかシャーロくんの体は、
赤い目と鮮血で真っ赤に染まっていました。
人間の味を覚えたシャーロくんは、次々に研究者に襲いかかります。
だんだん凶暴化していくシャーロくんになすすべもなく、研究施設は崩壊
自由になったシャーロくんは、いち生物として自然の中でのんびり暮らしていくのでした。
…しかし、人間を襲うシャーロくんをいつまでも野放しにしているのは危険
人間たちは軍隊を組み、シャーロくん討伐に向かいます。
それから長い年月、人間とシャーロくんとの交戦は続いていきます。
そんな抗争が続く中、シャーロくん一族にはある掟が生まれていました。
「大人になるまでに、赤い目が3つなければ、仲間に食べられる。」
裏のコンセプト「平和を願望する姿」
物語を読んで、何か感じませんか…
うーん、なんだかどこかで聞いたことがあるような設定
結構ありふれた物語って感じ、しませんか?
「人間が欲望のために生み出した怪物に、逆に復讐される」
物語のベースとして、よく使われる構造です。
有名どころだとゴ○ラとか、ミュ○ツーとか…
この構造の、一番の芯(発想の元)になっているものが
「争いを繰り返してきた歴史」にあると思っています。
人間は太古の昔から、争いを繰り返し生きてきました。
異族、同族関係なし、現代でも変わる事なく
「自分が正しいと証明するには戦争しかない」と
言わんばかりに繰り返される争い。
ただ心の中では、本当は「平和」を願っている
たとえ勝ったとしても、争いは新たな争いの引き金になり
自分達に返ってくる事も知っている。
だけど現状、争う以外の解決方法を知らない。
そんな矛盾する感情がさらに歪んで
「人間が欲望のために生み出した怪物に、逆に復讐される」ストーリーが
世間一般的に「面白く感じてしまう」んじゃないかと思っています。
つまり、「面白く感じてしまう」人が多い=それだけ問題提起の強い物語だという事
それだけ共感され、解決したいと望まれながら
どこかで聞いた事があるくらい、普遍的で使われ続けてきた問題提議。
いつかシャーロくんの物語、デザインが受け入れられない世の中が
来てくれたら良いな…なんて思って作成したキャラクターになります。
形は随分違うけど
僕にとっての「白い鳩」がシャーロくんです。
白い鳩の様に「動物として「生き抜く力」が著しく欠落」していても
(白い鳩の場合、白すぎる体は敵に見つかりやすい)
多種多様な生物が、平和に暮らせる世界。
…ま、自然界は無理でも、人間界くらいは平和になってくれたら
なんてコンセプトで生まれた
「いつか受け入れられなくなる事を望む」キャラクターです。
キャラクターの定義としては、随分矛盾した要素で生まれた子ですが
強い願いを込めれたかなと思っています。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?